昨夜に続き、今夜もBSで辻井伸行特番を放映している。たしかに、昨年、大注目大活躍したピアニストだが、自作曲を演奏するのを誰も止めないのはおかしかないか。
ショパンやリストを聴いた後に、あんなセンチメンタルで通俗的で単純な、ヤマハ音楽教室の優等生がつくったような曲を聴くのは堪えがたいだろうに、「あたたかい拍手」が鳴りやまないのはどうしたわけか。
せめて、お義理の拍手にとどめなければ、ヤマハ音楽教室のおさらい会と選ぶところがない。まだ評価の定まらぬ自作曲を、たとえ一曲でも、著名な演奏家がクラシックのコンサートやリサイタルで演奏した例を寡聞にして知らない。
演奏家はブラボーかブーイングで迎えられるべきで、「あたたかい拍手」など、おくられるべきではない。もしかしたら辻井伸行を見に来た観客は集めても、演奏を味わおうとする聴衆は少なかったとすれば、辻井伸行の前途は洋々とはいえない。
(敬称略)