トランプはいかにしてクリントンに勝ったのか? あるいはどうして全米マスコミ挙げての必敗予測を覆すことができたのか? もしくは大統領選を通じてメディアによる数多の世論調査がクリントン勝利と間違ったのはなぜなのか? または、「隠れトランプ派」とはいったい何だったのか?
それらの疑問の背後にいて、米大統領選を操った黒幕と黒衣を名指した注目記事です。英フィナンシャルタイムズ紙やガーディアン紙では既報のようですが、フィナンシャルタイムズ紙を買収して傘下に収めた日経には載っていないようです。
トランプ「人心操縦」の黒幕
米大統領選と英国民投票の二大仰天劇は同じ黒衣の仕業だった。恐るべし、最先端マイクロターゲティング。
https://facta.co.jp/article/201703002.html
FACTAという日経を辞めた記者が起こした電子メディアの有料記事なので、以下は要約です。
ヒラリー・クリントンと全米メディアは、ビッグデータ分析の最先端企業、ケンブリッジ・アナリティカ(CA)に敗れたのだ。
それまでの選挙戦が人口動態学を土台としていたのを、CAは「ビッグデータと心理統計学」に一変させた。
CAは英国の欧州連合離脱(Brexit)を問う国民投票で、反EU派の急先鋒、英国独立党(UKIP)のキャンペーンを請け負い、トランプ顔負けの無責任な放言と毒舌パフォーマンスで、みごとに想定外の勝利をもたらした。
16年の二大サプライズを演出したこの黒衣CAの実体は、数学者や統計学者、宇宙物理学者ら博士号の肩書を持つ分析オタクのチームだった。
従来の選挙予測、つまり人々がどのような投票行動をとるのかという予測では、人口動態学を基盤に既存の世論調査の加重を調整し精度を高めるものだった。
これに対し、CAは新しい心理統計学(またはサイコグラフィクス)モデルを採用している。米国内に4千~5千カ所のデータポイントを持ち、全米2億2千万人の成人の属性――ネットでどんな検索をし、どの番組を視聴し、どの車を運転し、何を食べているかを逐一プロファイリングしている。
ポイントが重複する人は似た人格なので、32のタイプに分類した。「行動は人格に導かれる」から投票行動もこれで予想できる。それを可能にしたのは、米国ではフェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)が普及し、ユーザーの同意なし(オプト・アウト)で簡単にビッグデータを購入できるからだ。
既存の世論調査に比べ、ビッグデータではサンプル数の裾野がケタ違いだし、粒度(凝集度)では世論調査はまるで歯が立たない。
分析するだけではなく、選挙キャンペーンに利用するために、CAは錯覚学ともいうべき認知心理学の知見を巧みに援用して、トランプを好イメージで飾るだけでなく、ヒラリー・クリントンに嫌悪感を催すようなサブリミナル効果を上げるターゲットマーケティングの武器にしている。
ガセでもデマでも構わない。不確定の状況下だと、「知りたいことしか頭に入らない」という確証バイアスが働く。メッセージが矛盾していても、直感は物事を単純化し、好き嫌いや近づきやすさ、慣れ親しんだものを選択する。プライム(先行刺激)を与えれば、たやすく判断を誘導できる認知バイアスの弱みを突き、人を非合理的な行動に誘導するのだ。
CAはスポンサーを明かさないが、英フィナンシャルタイムズ紙やガーディアン紙などは、世界有数のヘッジファンド「ルネッサンス・テクノロジーズ」(RT)の共同CEO、ロバート・マーサー(70)と名指しする。この共和党最大の献金者は、元コンピューター・サイエンティストで、93年にIBMからRTに移った。
RTは運用資産720億ドルといわれ、その旗艦ファンド「メダリオン」は過去28年で550億ドルも稼ぐ驚異的な高収益を上げていながら、厚い秘密のベールに包まれている。RTの投資手法は、あらゆる投資対象の値動きパターンをプログラム化して短期売買で稼ぐクオンツ運用で、CAと親和性が高く、すでに東京市場に上陸している。
トランプは「聴衆の反応に合わせた完全便乗型アルゴリズム」を装備した自動人形にも見える。70歳の本人はスマホが不得手で、ツイートも口述か代作だから、なおさらである。
アルゴリズムの世界に黒幕や黒衣という比喩はいかにも古腐れ、トランプが「黒衣の花嫁」なら、スティーブ・バノンが「花婿」という気色わるいコスプレを思い浮かべてしまいます。
(敬称略)
それらの疑問の背後にいて、米大統領選を操った黒幕と黒衣を名指した注目記事です。英フィナンシャルタイムズ紙やガーディアン紙では既報のようですが、フィナンシャルタイムズ紙を買収して傘下に収めた日経には載っていないようです。
トランプ「人心操縦」の黒幕
米大統領選と英国民投票の二大仰天劇は同じ黒衣の仕業だった。恐るべし、最先端マイクロターゲティング。
https://facta.co.jp/article/201703002.html
FACTAという日経を辞めた記者が起こした電子メディアの有料記事なので、以下は要約です。
ヒラリー・クリントンと全米メディアは、ビッグデータ分析の最先端企業、ケンブリッジ・アナリティカ(CA)に敗れたのだ。
それまでの選挙戦が人口動態学を土台としていたのを、CAは「ビッグデータと心理統計学」に一変させた。
CAは英国の欧州連合離脱(Brexit)を問う国民投票で、反EU派の急先鋒、英国独立党(UKIP)のキャンペーンを請け負い、トランプ顔負けの無責任な放言と毒舌パフォーマンスで、みごとに想定外の勝利をもたらした。
16年の二大サプライズを演出したこの黒衣CAの実体は、数学者や統計学者、宇宙物理学者ら博士号の肩書を持つ分析オタクのチームだった。
従来の選挙予測、つまり人々がどのような投票行動をとるのかという予測では、人口動態学を基盤に既存の世論調査の加重を調整し精度を高めるものだった。
これに対し、CAは新しい心理統計学(またはサイコグラフィクス)モデルを採用している。米国内に4千~5千カ所のデータポイントを持ち、全米2億2千万人の成人の属性――ネットでどんな検索をし、どの番組を視聴し、どの車を運転し、何を食べているかを逐一プロファイリングしている。
ポイントが重複する人は似た人格なので、32のタイプに分類した。「行動は人格に導かれる」から投票行動もこれで予想できる。それを可能にしたのは、米国ではフェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)が普及し、ユーザーの同意なし(オプト・アウト)で簡単にビッグデータを購入できるからだ。
既存の世論調査に比べ、ビッグデータではサンプル数の裾野がケタ違いだし、粒度(凝集度)では世論調査はまるで歯が立たない。
分析するだけではなく、選挙キャンペーンに利用するために、CAは錯覚学ともいうべき認知心理学の知見を巧みに援用して、トランプを好イメージで飾るだけでなく、ヒラリー・クリントンに嫌悪感を催すようなサブリミナル効果を上げるターゲットマーケティングの武器にしている。
ガセでもデマでも構わない。不確定の状況下だと、「知りたいことしか頭に入らない」という確証バイアスが働く。メッセージが矛盾していても、直感は物事を単純化し、好き嫌いや近づきやすさ、慣れ親しんだものを選択する。プライム(先行刺激)を与えれば、たやすく判断を誘導できる認知バイアスの弱みを突き、人を非合理的な行動に誘導するのだ。
CAはスポンサーを明かさないが、英フィナンシャルタイムズ紙やガーディアン紙などは、世界有数のヘッジファンド「ルネッサンス・テクノロジーズ」(RT)の共同CEO、ロバート・マーサー(70)と名指しする。この共和党最大の献金者は、元コンピューター・サイエンティストで、93年にIBMからRTに移った。
RTは運用資産720億ドルといわれ、その旗艦ファンド「メダリオン」は過去28年で550億ドルも稼ぐ驚異的な高収益を上げていながら、厚い秘密のベールに包まれている。RTの投資手法は、あらゆる投資対象の値動きパターンをプログラム化して短期売買で稼ぐクオンツ運用で、CAと親和性が高く、すでに東京市場に上陸している。
トランプは「聴衆の反応に合わせた完全便乗型アルゴリズム」を装備した自動人形にも見える。70歳の本人はスマホが不得手で、ツイートも口述か代作だから、なおさらである。
アルゴリズムの世界に黒幕や黒衣という比喩はいかにも古腐れ、トランプが「黒衣の花嫁」なら、スティーブ・バノンが「花婿」という気色わるいコスプレを思い浮かべてしまいます。
(敬称略)