コタツ評論

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ちなみに日本初

2018-09-10 23:16:00 | ノンジャンル
「勝ってすみません」と大阪なおみさんは謝ってはいない明らかな誤訳だそうで、セリーナはも口汚く罵っていないそうです。



USオープン ウィリアムズ=大坂 ドラマにみるマイノリティ女性選手の葛藤と連帯
https://mariyoshihara.blogspot.com/2018/09/us.html

TVや新聞の記者やデスクは、それを知っていて日本人らしい控えめな大阪なおみ像を後づけようと日本人向けに「報道」したらしい。あるいは、私たちと同様に記者やデスクもただ英語が読めなかったのかもしれない。いずれも推測に過ぎませんが、いずれか、あるいは両方の可能性がきわめて高いと断言できます。

「日本人初」が連呼されるが、彼女自身が「ハイチも代表しています」と言っているのですから、「勝ってすみません」と幼稚な言い回しをして涙ぐむような「女の子」ではないことは間違いなさそうです。このあたりにも、「可愛い女の子」というマスコミの目下扱いの「目線」がうかがえ、ならばセリーナ・ウィリアムズの「抗議」の意味や背景など、理解の外でしょう。

それでも、「ルールやマナー」を盾にセリーナをクレーマー扱いをしたがる人には、「悪童ジョン・マッケンロー」を思い出してほしいものです。ちなみに、1980年、ウィンブルドン決勝戦で伝説となった試合を描いた『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』という映画が近日公開予定です。審判はおろか、観客まで怒鳴りつけるマッケンローが「炎の男」の「感動の物語」なら、黒人初のテニス女王として君臨してきたセリーナ・ウィリアムズはそれ以上の存在でしょう。

さらに、ちなみに、「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」というテニスの男女それぞれのチャンピオンが戦った実話映画がすでに公開されています。当時の女子テニス世界チャンピオンは、ビリー・ジーン・キング夫人でした。大阪なおみとセリーナ・ウィリアムズが決勝戦を戦った全米オープンの会場であるビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センターに、なぜその名が冠してあるのか知ることができます。ついでに、キング夫人は最近の言葉でいうとLGBTをカミングアウトした人でもあります。

キング夫人(もちろん、「お蝶夫人」のモデルです)は、ツイッターでセリーナをこう擁護しています。
https://twitter.com/BillieJeanKing/status/1038613218296569856

When a woman is emotional, she’s “hysterical” and she’s penalized for it. When a man does the same, he’s “outspoken” & and there are no repercussions.

女性が感情的になると、「ヒステリー」と呼ばれて罰せられます。男性が同じことをすると、「率直」といわれるだけで、なにもされません(コタツ訳)。

世界中で日本人だけが…。


どの音楽雑誌か不明だが、このインタビュアーや編集者は偉いものです。もう数えきれないくらい、インタビューイ(インタビューされる人)から、「なぜ、日本人をどう思うかなんてことを聞くんだい?」と問い返されたり、「日本のファンへのメッセージといわれてもなあ」と困惑顔を向けられても、「ままま、そこはそれ、日本の決まりというか、慣習というか、日本人は聞きたがるんですよ、困ったことに」とうやむやのうちにインタビューを終わらせてきたはずです。

いまなら、多少親切にこうつけ加えるインタビュアーがいるかもしれません。「たとえばですね、最近ではこんな話もあるんですよ。日本政治のナンバー2といわれている麻生財務大臣が、<G7で唯一の有色人種の国だ>と安倍首相の後援会のスピーチの中で自慢したんですよ。驚かれたでしょう。それでね、G7の席で、トランプ大統領やマクロン首相が、「日本はG7で唯一の有色人種の国だ」といったら、褒められたとたぶん大喜びするんですよ。安倍首相も国民も。そういうわけのわからない国なんです」と。

もし、私がインタビュアーや編集者でもそうします。面倒くさいから。「面倒くさい」というのが日本の諸悪の根源ですね。くらべて、「世界中で日本人だけが…」というコメントをそのまま掲載した、この雑誌とインタビュアーと編集者は面倒くさがらなかった。たぶん、「日本初」「日本人初」の快挙でしょう。もうひとつ、ちなみに、「私たちをどう思うか?」と海外からの客に必ず尋ねるのは韓国人もそうらしい。いちだんと親しみが湧きますね。

(敬称略)