映画『くれなずめ』
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Netflix で視聴してから検索してみて、舞台劇の映画化であることを知った。ヘラヘラした高校生6人組と、その後もダラダラとした5年の日常の時間の流れを、映画ならたえず6人をフレームに収めたり、ワンショットワンシーンを駆使して表現できるが、舞台ならどう表現したんだろう。
いや、俳優たちの唾と汗と体臭が伝わってくるような小劇場なら、俳優の緊張感がせめぎ合うヘラヘラダラダラは返って観客を飽きさせないのかもしれない。この映画化でも俳優に演じさせることにはじゅうぶん成功している。いかにもセリフ的な言葉を極力排した「日常会話劇」は俳優たちにとっても挑戦のし甲斐があるものだったろう。
静止的な画角と立ち止まらない意識のような動画を「映画的」とするなら、一人一人の回想シーンでは、妻や警官との会話以上にもっと一人芝居をさせるべきだったようにも思えるが、そうした映像としての独白を避けるのもこの映画のテーマの一つだったかもしれない。
つまり、どこまでも群像劇で押し通したわけだ。高良健吾が出ているせいか、『横道世之介』と似た趣がある「普通青年映画」に思えた。傑作や秀作とは呼ばれないが、観た人々の記憶に登場人物名が残る「名作」かもしれない。
高校の帰宅部映画として、『桐島、部活やめるってよ』の背景となったゾンビ映画製作が、小劇場演劇に代わっているとも思えた。回想の映画だから、あんな風にのめりこんで描かれてはいないが。
普通の人々の「やおい」的な日常を描くという日本しかみられない作品だ。
成田凌、高良健吾はもとより若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹の6人組はいずれも好演、ミキエの前田敦子の快演にびっくり。
客演の滝藤健一の外国人訛りにも感心した。滝藤健一と光石研は何に出ても無敵だな。
(止め)