今日の朝日新聞に、可愛い猫のイラストがついた広告が載っていました。
藍色の画面の中に、白いパジャマを着た猫がパッチリと目を開けている。
「眠れない。でも薬なんて…って思っていませんか?」
エスエス製薬の睡眠改善薬の広告。
それを見て、中学生の頃好きだった詩を思い出しました。
「不眠症の猫」という名前で、詩集というか随筆集というか、
詩やエッセイや印象的な絵が詰まった本に入っていました。
万里の長城に不眠症の猫が棲んでいた。
気の遠くなるような孤独の中にずっと眠らないで生きていた…
多感な時期、そのイメージが妙に鮮烈で
私は何度も何度も読み返したのでした。
でもその後、そんな少女趣味が妙に気恥かしくなって
その本は捨ててしまった。
あれは一体どういう本だったのだろう?と
「不眠症の猫 万里の長城」で検索してみたら
こんなページがヒットしました。
「万里の長城に猫が一匹棲んでいました。
高い空で月はしんとあたりを静まりかえらせています。
とても眠たいのに眠れない猫は大きな眼をみひらき、
石に爪をこすりつけてみたりしたのです。
一匹ぽっちの猫のぐるりには葉鶏頭が咲いています。
その鮮明な赤は猫の眠れない脳細胞に血が滲むようにして拡がり、
今まで収集してきた記憶と重なって不眠を一層深くするのです。
脳裡にある灰色円形スクリーンに投影される記憶の財産目録を
不眠症の猫は一つ一つ数えあげてみました。
すでに沈下した記憶を掘って行くのは
きのうの日記を読むようなものでした。」
http://antiageneko.seesaa.net/article/106208922.html
ああ、これだ…
詩集『恋するアリス』の中の故・岸田理生さんの短編なのだそうです。
これ以上の情報がないのは残念ですが
昔の恋人に逢えたような嬉しさがあります。