Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「街とその不確かな壁」

2023年04月16日 | 

今週出た、村上春樹の6年ぶりの新作。
660ページの長編(2970円もした!)、楽しみを長く味わうべくゆっくり読もうと頑張ったのに、二日間で読み終えてしまいました。

これは楽しみにしている人も多いでしょうから、ネタバレしない程度に印象だけ。
春樹の小説にしては珍しく後書きがあり、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の元となった小説を40年振りに書き直したとあります。
内容的にどうしても納得がいかず、しかしこの作品には、自分的にとって重要な要素があると感じ続け、作家として40年の歳月を経て今、完成することができたと。そしてこれを書き始めたのは2020年、コロナが日本で流行り始めた3月であり、それからコロナの3年間で書き上げたのだそうです。
40年間温めていたということにまず、凄まじい作家根性を感じました。

現実の世界と高い壁に隔てられたあちら側の世界を、「私」は行ったり来たり彷徨うことになる。
本体と影、現実と非現実、生と死後の世界、あちらの世界とこちらの世界のどちらが本物なのか?
あちらの私とこちらの私、どちらが本物なのか?
「ここは高い煉瓦の壁の内側なのか、外側なのか」

「あの街は一度中に入ると、そこから出るのはほぼ不可能なところです。高い壁に周りを囲まれ、屈強な門衛が厳しく出入りの管理をしています。そしてその街で暮らしている人々は、満ち足りた生活を送っているとは言えません。冬は寒く長く、多くの獣たちが飢えと寒さの為に死んでいきます。そこは決して楽園ではないのです」
「でもあなたは、そちらの世界に居住することを選ばれた。そして高い壁に囲まれた街の中で、あなたの心が従来求めていたはずの生活を送られることになった。あなたの影に街から出て行こうと誘われても、単身後に残ることを選ばれた」
「そのとおりです。しかし私自身、自分の判断が正しかったかどうか、今でもなお判断に苦しんでいます」(P499)

17歳の「私」が恋した「きみ」には名前がなく、「***」という表記になっている。
後半に登場する、イエローサブマリンの絵が付いたヨットパーカを着た少年の名も「M**」。
とても重要な登場人物なのに、そして他の人には名前がついているのに。
謎です。


コメント (8)
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