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世界的指揮者のエドゥアルト・スポルクは、深刻な対立が続くパレスチナとイスラエルの若者たちでオーケストラを編成し、平和を祈念するコンサートを開くというプロジェクトを引き受ける。
オーディションを経て二十数人の若者たちが選ばれるが、彼らはパレスチナ陣営とイスラエル陣営に分かれて憎悪をぶつけ合い、衝突を繰り返す。
スポルクはそんな彼らを南チロルでの21日間の合宿に連れ出し、若者たちはセッションを重ね、少しずつ歩み寄っていくが…
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音楽家になる夢を持ち、オーディションで選ばれ、家族の反対や軍の検問を乗り越えて集まってきた若者たちだが、彼らは激しくぶつかり合ってしまう。
イスラエル側のリーダー的存在の青年ロンは、スポルクに対しこう言い放つ。
「政治と切り離そうなんて無理ですよ。僕らにとっては日常の問題なんです。そんなのSFだ!」
ある日スポルクは、部屋の中央に1本のロープを置き、その両側に両陣営を向かい合って立たせ、本音を言い合えと言う。
最初はポツポツと、しかし段々に激しく、本当に激しく罵り合う。
「テロリスト!」「この人殺し!」
全員が絶叫し合い、ここまで憎み合って一体どうなってしまうのかとハラハラして見ていると、そのうち両陣営ともに泣きながら倒れ伏してしまうのです。
そしてスポルクも、自分自身のことを語る。
ドイツ人の彼の両親はナチス党員であり、彼は差別を受けてきたというのです。
この憎悪の構図は、こんなにも重層的なものだったのか…
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散々にぶつかりながら、しかし練習を重ね、生活を共にするうちに、若者たちは少しずつ心を開いて行く。
ヨルダン川西岸から来たパレスチナ人青年のオマルとイスラエル人女性のシーラは、恋に落ちる。
幸福感に酔いしれたシーラは、あまりにも軽率なことをしてしまう。
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「音楽の力で問題を乗り越える感動映画」として、最後に仕上がった見事なコンサートを期待していた私は、想定外の悲しい展開に言葉を失くしました。
しかし銃声が飛び交い、テロや紛争が日常的に起きている彼らの世界では、これは特に驚くことではなく、普通の出来事であるのかもしれません。
パレスチナ人とイスラエル人との合同オーケストラなんてあり得ない、と思ってしまいますが、実際1999年に和平オーケストラ「ウェスト・イースタン・ディヴァン管弦楽団」というものが設立されて、この映画はそこからインスパイアされて作られたというから驚きます。
ミニシアター系の映画ですが、多くの人に見て頂きたい感動作です。
「クレッシェンド(crescendo)」とは、「だんだん強く」を意味する音楽用語だが、もともとの原義は「成長」なのだそうです。
監督・脚本のドロール・ザハヴィは、テルアビブ南部の貧しい地域で育ち、奨学金でドイツ留学して演出を学んだといいます。
「クレッシェンド音楽の架け橋」 https://movies.shochiku.co.jp/crescendo/
素晴らしい作品でした。
こんな今の世界情勢だからこそ、観るべき作品だと思いました。
連綿と続く憎しみ…からは、何も生まれない。
これは素晴らしかったですよね。
小さな映画館で、上映回数も少ないのがとても残念です。
今この時期だからこそ、多くの人に観て欲しいですよね。
しかし、映画のような戦争が本当に起きちゃうとはねえ…