Zooey's Diary

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「あなたの名前を呼べたなら」

2019年08月08日 | 映画

農村の貧しい家の出身のラトナは19歳で夫に先立たれ、メイドとしてムンバイに来る。
建設会社の御曹司アシュヴィンの新婚家庭で働く筈だったのだが
結婚直前に破談になり、傷心のアシュヴィンの身の回りの世話をすることになる。
雇い主とメイドの関係でしかなかった二人だが、少しずつ少しずつ、感情を寄り添わせて行く。
しかしインドの階級社会はそんな甘いものではなかった。



カースト制度はとうに違法になっているといいますが、インドは階級社会です。
ほんの短期間の旅行者の目から見ても、はっきりと分かるほどに。
しかも色々な因習に縛られている。
ラトナは新婚4カ月で未亡人となるが、彼女の郷里では一生、婚家に縛られるらしい。
ブレスレット一つできないし、ムンバイから婚家に仕送りをしている。
アシュヴィンはアメリカで暮らしたこともあり、割と自由な考え方をする優しい青年だが
世間知らずの坊ちゃんから抜け出せないところがある。
ラトナとの恋をすぐに親友に察知され、徹底的に反対されてしまう。
身分違いの恋はどちらにとっても許されない、恥でしかないのです。



映画の中ほどで、ファッション・デザイナーを夢見るラトナが
綺麗なドレスに魅かれて、高級ブティックに入って行くシーンがあります。
が、たちまち店のスタッフに追い出されてしまう。
その時のラトナは見た目には綺麗なサリーを身に着けていて
少なくとも私には、どうして追い出されるのかさっぱり分からないのですが
多分インドの人には分かるのでしょう。


46歳のインド人女性監督ロヘナ・ゲラ監督はスタンフォード大学を出て、パリでも暮らしていたのだそうです。
欧米での自由な雰囲気を経験した彼女は
「母国の現状ではあり得ないが、社会は変わっていくべきだ」との思いを託して
この映画を作ったのだそうです。


原題「Sir」は、ラトナがアシュヴィンを呼ぶ「旦那様」という意味。
メイドである彼女は、どんなに想っても、アシュヴィンのことをそう呼ぶしかない。
この甘ったるい邦題からは想像できない、中々に味わいのある映画でした。
ムンバイの高層ビル群、高級マンションの中の豪華な一室、その中の物置のようなメイド部屋、路上のグチャグチャと喧騒、色鮮やかな布市場、そうしたシーンを眺めるのも楽しいものです。

「あなたの名前を呼べたなら」

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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記憶に残る映画でした (こに)
2023-03-14 08:21:03
お店から追い出されるシーン、ラトナは確かに質素だけれどそこまでしなくても、と思ったのですが、そういうことだったのですね。ヒドイ話です。
日本だってそれに近い雰囲気はありますけどね…。
ラトナが夢を叶えて、いつかアシュヴィンと再会できる日が来るといいな。
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こにさま (zooey)
2023-03-14 21:01:54
あのシーンは驚きでしたよね。
本当に酷い話です。
インドほどではありませんが
イギリスやフランスなど旅しても、階級社会を肌で感じることありましたよ。
その点、日本はいい国だとつくづく思います。
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