格差階級社会をなくそう

平和な人権が尊重される社会を目指し、マスゴミに替わって不正、腐敗した社会を追求したい。

参院消費増税特別委中央公聴会で意見を述べます

2012-08-06 13:11:50 | 植草一秀氏の『知られざる真実』


参院消費増税特別委中央公聴会で意見を述べます




本日2012年8月6日と8月7日に、参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会において中央公聴会が開催される。



6日に消費増税、7日に社会保障改革が議題となる。



私は「国民の生活が第一」の推薦により、本日8月6日の公聴会に公述人として出席する。



私は消費増税提案に反対する立場から意見を述べる。




私が、民主、自民、公明三党が共同提案する消費増税法案に反対する理由は以下の五点である。



第一は、今回の消費増税提案が、2009年8月総選挙に際して、民主党が主権者である国民に約束した政策方針、公約に反していることである。



選挙に際しての公約は絶対の存在ではない。政策を取り巻く環境は常に変化するから、各時点で最善の政策運営を行うために、公約とは異なる対応を取ることが迫られることはあり得るからだ。



公約に示した政策方針を絶対に変えてはならないということではない。



しかし、主権者である国民と交わした約束に反する政策を実行する場合には、①政策変更に正当性があること、②主権者国民に政策変更を十分説明すること、③主権者国民が政策変更を了承すること、のプロセスを経ることが必要不可欠である。



ところが、野田内閣がこのたび提案している消費増税提案に関してこの点を検討してみると、①政策変更に正当性はなく、②主権者国民に対する説明はまったく行われておらず、③主権者国民の了解を得たという形跡もない。



事実、各種世論調査でも消費増税提案に反対する意見が多数を占め、とりわけ、今国会中の消費増税法案の成立に反対する意見はさらに多数を占めている。



2009年8月総選挙の際に現在の野田政権首脳が行った三つの演説がある。民主党の政権公約を代表する三大演説とも言うべきものだ。



第一は野田佳彦氏による2009年7月14日の衆議院本会議演説



第二は、岡田克也氏による2009年8月11日の千葉県柏市駅前での街頭演説


第三は、野田佳彦氏による2009年8月15日の大阪での街頭演説



である。



野田氏は大阪での演説で、次のように発言した。



「鳩山さんが四年間消費税を引き上げないと言ったのは、そこなんです。シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。
そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。」



この街頭演説動画は、私が本年1月15日にブログで紹介したところ、一気に情報拡散したもので、国会でも何度も取り上げられている、いわゆる「シロアリ演説」と呼ばれるものである。



野田氏は、官僚の天下りやわたりの根絶、すなわちシロアリ退治をせずに消費税を引き上げることはおかしいことを主権者国民に訴え、主権者国民はこの発言をも踏まえて、民主党に政権を委ねた。



また、岡田克也氏は無駄な政府支出を排除することで、年間9兆円の財源を調達することについて、



「与党はそんなことできっこないと言うが、私たちはそれをやる。


一から制度を見直せばできる」



と明言していた。



主権者国民に対するこれらの発言と正反対の政策が推進されていることに対して、民主党に投票した主権者国民の多くが、民意を踏みにじられたと感じていることを真摯に受け止めることが不可欠である。



書生っぽい議論であるかも知れないが、日本の議会制民主主義を正しく機能させてゆくことを重視するときに、この問題を無視することはできない。



第二の問題として、政府が、現行の社会保障制度は若年層に損失を与える制度であることを強調し、言わば、世代間不公平の感情を煽る形で、消費増税を推進していると感じられる点についての意見である。



その一例を示す。



2004年に厚生労働省が発表した世代別の年金収支試算は、すべての世代で、受け取る年金金額が、支払う年金保険料の2倍以上になることを示していた。



公的年金は国民に利益を与える制度であり、年金保険料を納付することが促進された。



ところが、本年1月に内閣府から発表されたディスカッションペーパーは、1960年生まれを含む、これより若い世代の国民は、支払う保険料よりも受け取る年金金額が少なくなるとの結果を示した。




二つの試算結果が正反対の結論を導いている背景として、二つの恣意的な手法が用いられたことを指摘できる。ひとつは、支払い保険料において、2004年試算が会社負担を算入していないのに対し、2012年試算はこれを算入していること。単純計算して、2012年試算の支払い保険料は2004年試算の2倍になる。



いまひとつは、受取年金金額を一定時点での金額に換算するための割引率に用いる指標が異なることだ。2004年試算では、年金収支が有利になるように、低水準の物価上昇率が使用され、2012年試算では年金収支が悪く見えるように、高水準の運用利回りが用いられている。



2004年試算では年金保険料を納付させるために、年金が得になるとの数値を示し、2012年試算では現役世代の不平を引きだすために、年金が損になる数値が示されたものと解釈できる。



本年発表された内閣府のペーパーは政府の公式見解を示すものではなく、個人名によるペーパーではあるが、政府はこうした試算結果をも利用して、若年層の損失を緩和するために消費税率引上げが必要との説明を展開しているように見える。



これは消費増税を正当化する論拠としては、あまりにも品格に欠けるものと言わざるを得ない。



現行年金制度の世代間不公平が深刻であるなら、その問題は年金制度そのものの改革によって解消するべきであり、年金で発生する損失を消費税で調整するとの論理の組み立てはあまりにも陳腐である。





第三は日本財政の現状、第四は循環赤字と構造赤字、第五は日本の租税構造との関連についての意見だが、詳細はメルマガに記述する。





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『(原子力規制委)人事案撤回』 一色、岩上安身レポート

2012-08-06 10:44:07 | 植草事件の真相掲示板

『(原子力規制委)人事案撤回』 一色、岩上安身レポート@ 8.3 国会正門前ステージ 投稿者:真実一路 投稿日:2012年 8月 4日(土)05時11分44秒
  
今回、私は仕事の都合で参加できなくなり、IWJでの擬似参加だったが、
今更ながらメディアが余すところなく、全てを伝えることの重要性を再認識させられた。


CH1 岩上安身レポート@国会正門前ステージ その1

【0:13:30~】:開始前の岩上氏と『反原連』中心メンバーとの会話

・ 『反原連』側は野田に会うつもりはない!
  大手メディアは、『野田首相、官邸前の反原発抗議団体代表と面会へ』というような報道をしているが、
  『反原連』側は野田首相に会うつもりはないようだ。

【1:04:30~】:森ゆうこ議員をはじめ、数人の議員がスピーチ、終わると相変わらず、さっさと帰って行く。
          姫井由美子は何しに来たんだろう?
【1:14:30~】:作曲家の坂本龍一氏、語り口は穏やかだが政治家には手厳しいスピーチだ

CH1 岩上安身レポート@国会正門前ステージ その2 ~ 環境省前と経産省前

【1:23:45~】:終了後の岩上氏と『反原連』中心メンバーとの会話も面白い
【2:09:40~】:環境省前抗議行動 ~

首相官邸前、国会正門前の抗議行動が終了した後も、
環境省と経産省前では、大勢の市民が集まり、『人事案撤回!田中はやめろ!中村やめろ!』の大合唱。
この日は、この他文科省前でも抗議行動が行われた。
    
岩上氏のレポートによれば、今後これらの抗議行動は首相官邸前抗議行動とは独立して行われる方向とのことだ。
市民の抗議行動は、霞ヶ関一帯に広がりつつある。









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「2012年と1960年 国民の怒りが政権を打倒する日」対談

2012-08-06 08:22:09 | 阿修羅

「2012年と1960年 国民の怒りが政権を打倒する日」対談・孫崎享氏×高橋洋一氏×長谷川幸洋氏  週刊ポスト 
http://www.asyura2.com/12/senkyo134/msg/104.html
投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 8 月 06 日 05:16:51: igsppGRN/E9PQ


「2012年と1960年 国民の怒りが政権を打倒する日」対談・孫崎享氏×高橋洋一氏×長谷川幸洋氏
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11321286650.html
週刊ポスト2012/08/17・24号 :平和ボケの産物の大友涼介です。


(※参考)はブログ主が勝手にリンクしました。(※①~③)は雑誌に元々あったものです。


デモが国会議事堂前を占拠する光景は、52年前と同じだった。

7月29日、20万人ともいわれる人々が国会を取り囲み、原発再稼働反対のキャンドルを灯した。1960年、国会前には日米安保条約に反対する数十万人の学生デモ隊が押し寄せ、時の岸信介内閣は退陣に追い込まれた。

鉢巻き姿の活動家はいなくなったが、ベビーカーを押す母親や麦藁帽子の老人は、確かに声を上げている。この熱は、あの時と同じく政権打倒へ結びつくのか。

外交、霞が関、メディアを知り尽くす3氏が、”革命前夜”にある「1960年と2012年の日本」をテーマに論じ合った。

■間接民主主義への不信感

週間ポスト:今回のデモと60年安保闘争をどう比較するか。

孫崎:60年安保は組織化されていた。学生は用意されたバスや電車でデモに行き、労働者は組合活動として参加し、新聞などのメディアも支援していた。ある意味では反体制という体制に乗せられていたんです。一方、今のデモは、原発再稼働反対から始まって、何かおかしい、日本を動かしているものが何か違うぞ、と個人が判断している。だから1人1人が地下鉄でふらっと来て、デモに参加してふらっと帰っていく。かつてのように熱に浮かされたという感じではない。

参加者はどちらかというとクールで、誰かに動かされることを最も嫌う人たちが個人の判断で加わり、発言していく。デモという形式は同じでも、何者かに操作されているのではなく、動かしている力が個人個人の判断なので、この流れはどこかで打ち切りになることはないと思います。

高橋:アラブ諸国で起きたジャスミン革命と似ているところはある。ネットで繋がるので、誰でもアクセスできて情報発信もできる。国民にすれば、選挙で選ばれた議員が政治を行うという間接民主主義が民意を吸い上げなくなって、期待できない。加えて国民はマスコミから間接的な情報を与えられているが、その情報も信用できない。国民の代理人である政治家も官僚もメディアも、みんな嘘つきだってバレちゃった。だからやむを得ず直接的な行動に出るしかなくなったのではないか。

ただ、目的達成のためには、最終的には選挙しなければいかんともし難いわけです。果たして彼らは選挙に行くのか。そこが僕にはまだわからない。

長谷川:僕はデモを毎週取材していますが、目立つのは若者より60歳以上の高齢者です。60年安保や70年安保を知っている世代ですね。年配男性の中には、昔こんなことがあったよな、ということを知っている人たちもいる。

それから女性が多い。お母さんたちは子どもの安全をどうしてくれるのかって、本当に怒っている。おそらく安保のときはデモに参加しなかった年配女性もいるが、「ここで私が原発に何か言わなければ若いお母さんたちに申し訳ない」という思いを持っている。

高橋:長谷川さんは学生運動やっていたから血が騒いでいるんじゃない?

長谷川:もっと原理的に考えてますよ(笑)。政治とは議員バッジをつけた人がやることだとみんな思っていた。新聞の政治面も政党と国会議員の話が主でしょう。だけど本来、政治は「普通の人々」がするものですよ。

今回のデモを契機に、「オレたちの声を聞け、主役は国民であり、政党や議員は代理人に過ぎない」と、国民が政党や議員から政治を取り戻す認識のパラダイム変化が起きるかもしれない。鳩山由紀夫元首相がデモに来たとき、「どうせ人気取りだ」「CO2削減をいって原発を増やそうとした張本人じゃないか」というステレオタイプの批判が出たけれども、私から見ると、国民が街頭に元総理を呼び出して、「官邸に行って国民の声を野田総理に伝えろ」と代理人として使いに出すという現象が起きたともいえる。それが非常に面白いところで、これからの政治の形を示しているんじゃないかと思う。

■反体制の意思表示はデモ以外にも

長谷川:ただひとつ気になるのは、7月29日の国会包囲からデモの様子が変わる懸念もある。全共闘とか、全学連とかの旗が出てきて、「車道を空けろ」と議事堂前の車道を占拠した。人々はデモを乗っ取ろうという組織的な動きに触発されたかもしれない(※参考)。私も学生運動やっていたからよくわかる(笑)。彼らは挑発行為を徐々にエスカレートするはずです。そうなると当局がデモを潰す口実にされかねない。

※参考 長谷川幸洋氏(8/3深夜~)「8月3日の再稼働反対抗議行動に参加してあらためて気づいたことがあった」 http://togetter.com/li/350061

高橋:当局が出てくる前に、一般の人が参加しなくなる。一般の人がいなくなれば、グループ(反原発団体)の運動になってしまう。

孫崎:私はそれでも国民の行動は消えないと思いますよ。官邸デモというのはほんのひとつの表現であって、すべてではない。60年安保は、ピークの時に新聞7紙が「暴力革命を排し議会主義を守れ」という異例の共同宣言(※①)を出した結果、騒動が収まり、国会前から一般人が消えて潰れてしまいました。

※① 1960年6月17日、新聞7紙が「その理由の如何を問わず、暴力を用いて事を運ばんとすることは、断じて許されるべきではない」との7社共同宣言を発表。宣言を書いたのは、対米終戦工作に関わった経験を持つ笠信太郎・朝日新聞論説主幹だった。

だけど今回は、官邸デモがなくなっても、国民は別の方法で意思を表明すると思う。デモだけが表現する手段ではない。

長谷川:60年や70年安保と決定的に違うのは、福島原発事故で国土の3%が事実上失われ、放射能で故郷に住めなくなった10数万人の”さまよえる人々”が厳然と存在していること。この人たちがいる以上、運動の火は絶対消えない。メディアも見捨てない。

週刊ポスト:60年安保は岸内閣を倒した。ならば、今回の行動も政権を倒すところにつながっていくのか。

高橋:どこまで運動が広がるかにもよるが、民意の受け皿はなくはない。民主、自民以外の政党や政治家でしょう。それは橋下徹(大阪市長)かもしれない。橋下さんたちがエネルギーをどうやって吸収していくか次第でしょうね。

孫崎:60年は打倒岸内閣という政治目的があって動いていたけれども、今は個人が再稼働反対を言わなければならないという自己表現でやっているから、最終的に政権を倒すとか、ある種の政治目的を達成しなければならないとまでは考えていないと思う。しかし、一般の国民が参加することによって、これまで黙っていた人々に影響を与えていくわけです。私たちもそうでしたが、反体制の意思表示をすることには恐さがある。それが今回のデモで、恐くない、意思表示していいんだ、というきっかけになった。

■安保闘争は従米派に利用された

週間ポスト:孫崎氏は新刊『戦後史の正体』(創元社刊)の中で、60年安保の裏面史について興味深い指摘をしている。新安保条約を結んだ当時の岸首相は親米派と見られているが、実は在日米軍の縮小と日米行政協定(※②)見直しを目指した対米自立派で、米国と対米従属派の日本政財界が、安保闘争を利用して退陣に追い込んだというものだ。

※② 52年に結ばれ、60年に日米地位協定へ改定された。米軍による基地使用を認める協定。「日本国に返還すべきことを合意することができる」という条文により、今日まで、返還に関する日米双方の「合意」がない限りは基地使用を認め続ける取り決めとなっている。

孫崎:岸信介は、部分的にせよ米軍基地撤退を図ろうとしていた。米軍基地の縮小には行政協定の見直しが必要で、これは政府間協定だから両国の合意が要る。岸さんは60年の安保条約の改定の際、「10年後以降も自動継続されるが、一方が1年前に通告すれば条約を破棄できる」という条項を盛り込んだ。簡単に言えば、10年後に改めて行政協定を交渉できる仕組みをつくっておいたわけです。それが不都合な米国は岸内閣を潰さなくてはならないと動いたんですね。安保闘争で岸打倒を叫んでいた人たちは、条約の中身や狙いを知らずに利用されただけです。

長谷川:安保闘争の資金も親米派の財界が出していたんでしょう?

孫崎:そうです。岸退陣の後には対米追従派の池田勇人首相が就任した。私の著書を読んだ方から、「自分たちのやった安保闘争が結果として対米追従になったことは非常に寂しい」と言われました。

週刊ポスト:その50年後の2009年に鳩山内閣が普天間基地の県外・国外移転を掲げたが、やはり潰された。

孫崎:ええ。米国は明らかに日本の政治家、官僚、マスコミに県外移設を潰すように工作していました。それが鳩山内閣が倒れた原因です。菅(直人)さんも野田首相もそのことを知っているから安全保障は米国の言いなり。野田首相はオスプレイ配備について、「配備そのものは米国政府の方針で、日本がどうしろこうしろという話ではない」と発言したが、これは米国の発想そのものですよ。

長谷川:普天間基地の移転先である辺野古にV字滑走路をつくるというのも、最初からオスプレイ配備のためだったんだから。昨日今日の話ではない。

高橋:その普天間移転が進まないから、日本は何も言えなくなったのではないか。

孫崎:いや、日本側の言い様はいっぱいあるんです。沖縄へのオスプレイ配備は県民が反対する、それは日米同盟にマイナスだから止めてくれと言えばいい。それが当たり前の外交というものでしょう。

それなのに岩国に搬入させた上に、国内にいくつかの訓練飛行ルートを作ることを容認してしまった。米国は、この政権なら何を要求しても反論してこないと考えているのでしょう。

■「米国の意向」を捏造する官僚

週間ポスト:孫崎、高橋両氏は官僚出身だが、60年安保以降、官僚は変質したのか。

孫崎:岸内閣の安保改定もそうですが、60年当時、脱米国の自主路線の中心は外務省でした。官僚は米国の様々な圧力があっても、自分たちでベストの政策を考えるというスタンスだった。柳谷謙介・元外務省事務次官は、辞表をいつもポケットに入れて仕事をしていた、と自著で述懐しています。国益を中心に物事を考えたとき、官僚が正しいと思うロジックと政治家の意見が合わないことがある。そのときは辞表を叩きつけるという気持ちで仕事をしていたというのです。

それが湾岸戦争(91年)の頃には、対米自立派が消えてしまった。私はイラン大使を経験してイラクに大量破壊兵器はないとわかっていたから、03年のイラク戦争の際、自衛隊を派遣すべきでないと考えていた。財界の官僚OBにそう説くと、「あなたの論理はわかるが、米国と一緒に行動することが日本の国益に適う」と言われた。外務省内でも、ロジックの小異はあっても大筋は米国と一体というスタンスですべてが動くようになった。

高橋:私も財務省から官邸(内閣官房)に出向したときは辞表を用意しましたよ。官邸への出向者は政権に殉じる覚悟を示すためにそうする慣例なんです。安倍晋三総理には「骨を埋める」と言いました。安倍さんはそれを出向者全員に聞いた後で、「高橋君は”骨を埋める”だったけど、他は”骨を埋めるつもり”って言うんだよな」と笑っていた(一同爆笑)。

鳩山さんは以前、政権を取ったら局長以上に辞表を出させると言った。私は鳩山さんに、「本当に辞表を預かりなさい。机の中にしまっておくだけでいい」と言ったけど、取らなかった。それをやっておけば、官僚の態度はガラリと変わっていたかもしれない。

長谷川:鳩山さんにできるはずがない。”辞表を出させる”発言は09年の2月だったが、その年の6月30日の会見で撤回した。その会見で何が起きたか。死亡していた故人名義の献金問題(※③)を釈明させられたわけです。

※③ 09年6月、鳩山元首相の資金管理団体の政治資金収支報告書に、すでに亡くなっている人や実際に寄付していない人からの個人献金が記載されていたことが発覚した。

高橋:財務省に(弱みを)握られちゃったわけだよ。

長谷川:官房副長官は法務・検察と財務・国税と週一回定例会議を開いて、政治家トップの弱みを情報交換している。鳩山さんはそこで弱みを握られたから政権を取っても政治主導なんてできるはずがなかった。

週刊ポスト:辞表を胸に国益を担う気概を持っていた官僚が、裏で政治家の弱みを握って政治を動かすようになったのはいつからか?

高橋:孫崎さんと同じ見解だけど、私も90年頃じゃないかと思う。その頃から経済政策でも対米追従が強まった印象がある。

それは為替レートの影響が大きい。日本の高度経済成長は官僚が支えたといわれるけれども、実は当時の政策はすごく単純だった。円安だったから何もしないで輸出が増え、経済は成長したんです。70年以降、本来なら1ドル=150円くらいが均衡レートだったのに、米国は日本の円安を容認し、1ドル=250~300円ぐらいにしてくれていた。

それが85年のプラザ合意で円高が進み、90年以降は円高が定着した。官僚は為替が市場で動くとあたふたして何もできない。

孫崎:92年頃の米国の脅威は日本経済だった。情報分野でも今後は経済工作が重要だと予算の4割くらいが対日工作に充てられた。

長谷川:CIAが軍事から経済の情報収集に人員と予算をスイッチし、当時の通産省を盗聴していたわけですから。

高橋:その頃から米国にやられっぱなしになった。為替レートは金融政策で操作することができるから、対処法はあったはずだが、財務官僚は為替のメカニズムなど知らなかったし、日銀は今も知らない。唯一、円安にする政策をとったのは、小泉政権の一時期だけでした。

長谷川:アジア太平洋全体の経済を考えた時に、あるいは対中国で考えても、日本経済が沈んでいくのを放置することが米国の利益になるとは思えないんだけど・・・。

高橋:それは甘い。日本経済をテコ入れして日米経済同盟みたいな発想は米国にはない。

孫崎:日本への期待は全くないと思う。そもそも、日本にがんばって欲しいという気持ちがあれば日本研究をやるものですが、今や米国にそれをやっている機関はありません。

週間ポスト:IMF(国際通貨基金)は日本に増税を求めている。

高橋:あれはIMFにいる日本の財務官僚が、新聞に「IMFが言っている」と書かせているだけ。米国は日本が増税してもしなくてもどっちでもいい。米国内の政治家の立場によって考えはバラバラですよ。

政治家の対米追従路線の中で、霞が関では米国の言うことをきく官僚グループが出世していく。彼らは自分たちの立場、利益を守るために、米国は何も言っていないのに「米国の意向」を持ち出す。特に財政や金融に限っていうと、そうしたケースが非常に多い。

霞が関では財務省のポチができるとそれが増殖する。メディアもポチになって、ポチ体制が確立すればその中から出世する確率は高くなる。そうするとさらにポチ集団が膨らんでいくという構図です。

■60年安保体制からの「脱」

週刊ポスト:60年安保では新聞7社の共同宣言がデモを潰した。メディアが国民を向いていないのは今も同じで、「決められる政治」といって野田首相の原発再稼働や消費増税を後押ししている。

高橋:そもそも国民の困ることを何のチェックもないまま決めているのに、「決められる政治」と持ち上げるのはおかしい。選挙で問うてから決めるべきでしょう。原発再稼働も野田政権は当初、事故調査をやって、原子力規制庁をつくってから判断すると言っていたのに、何もしないうちに素人である4閣僚で決めた。

長谷川:新聞がいっせいに社説で「決められる政治」と書いたのには裏があるんです。「決められない政治からの脱却」というキャッチフレーズが最初に出たのは、今年1月の施政方針演説。各紙の足並みが揃ったのは、財務省が論説懇(論説委員との懇談会)で完璧にレクチャーしたからだと思います。

高橋:論説委員は財務省のポチの典型ですね。私も課長のときに、各紙の論説委員を回ってレクしていたが、同じ情報を流しても記事に濃淡が出る。そうすると上から「レクが不十分だったんじゃないか」と怒られるわけ。それで論説に、「ここが違っている」と注意する。結果的に濃淡さえも全く同じ「財務省のリリース」が紙面に載る。

長谷川:メディアは公正、客観的な報道だとか、真実の追求なんていうけど、役所にすれば情報操作の対象でしかない。

高橋:当たり前じゃない。こっちが流した情報をそのまま書くんだから。

長谷川:私は財政制度等審議会臨時委員という「特上のポチ」だったから(笑)、財務省の幹部から何度もブリーフを受けた。色々話を聞かされて、「どうお考えになるかは自由です。ただ、私たちはこう考えているので、是非、社説として書いていただけると有り難い」と。その通りに書くと、例えば課長級が持っている財務省の政策を網羅した冊子も貰えるようになる。それがあれば取材しなくても記事が書けるし、定年後の再就職だって相談できるような間柄になる。

また、財政審議会の委員には各紙の論説委員クラスが数人選ばれるが、その枠に入ると海外視察もある。公務だからパスポートは審議官用の公用旅券で出張手当も付く。私が米国とカナダに行ったときには財務省から主計局の若手が2人同行して、報告書も彼らが書いてくれた。

高橋:私も海外視察の引率をやったことがあるが、10日間くらい一緒にいるから相手のいろんな情報がわかる。そこで弱みを握ってしっかり上司に報告した。論説は大体、そうやって落とされていく。

長谷川:はっきり言って、新聞の経済記者が主計局とケンカして財政の記事を書けるかというと、普通は書けない。逆に、役所のポチになって情報を貰えば、どんどん餌を貰って太っていき、社内で出世もできる。それを断ち切ると記者は生きて行く場所を失う気持ちになる。

高橋:だけど長谷川さんは脱ポチでしょう?私は脱官僚で、孫崎さんは脱米国。そうした「脱」の動きが様々な場所で起こっている。この流れを吸い上げる中間的な存在が出てくれば、変革の可能性はある。

孫崎:そうした仕組みが固まったのはまさに60年安保の後でした。国民が今回のデモによってその仕組みからの脱却を目指しているとすれば、実に興味深い歴史の巡り合わせですね。

長谷川:問題は政治家が決める決めないではなく、国民に選択肢が示されないこと。かつての官僚は、そもそも日本の外交は対米追従か、自主路線で行くのかといった選択肢を考えていたでしょうが、今や政治家もそれを操る官僚さえもそれを考えようとはしない。本来、選択肢の提示はメディアの役割でもあるけど、役所のポチだからもっと考えていない。日本全体で選択肢がない状態です。だから国民のデモになっている。これまでは政党や議員がアジェンダ(政策課題)を設定して国民に示したが、今は逆に政治に携わっていない一般の人々が脱原発というアジェンダを政治に突きつけている。これは非常に大きな転換です。







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