参院消費増税特別委中央公聴会で意見を述べます
本日2012年8月6日と8月7日に、参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会において中央公聴会が開催される。
6日に消費増税、7日に社会保障改革が議題となる。
私は「国民の生活が第一」の推薦により、本日8月6日の公聴会に公述人として出席する。
私は消費増税提案に反対する立場から意見を述べる。
私が、民主、自民、公明三党が共同提案する消費増税法案に反対する理由は以下の五点である。
第一は、今回の消費増税提案が、2009年8月総選挙に際して、民主党が主権者である国民に約束した政策方針、公約に反していることである。
選挙に際しての公約は絶対の存在ではない。政策を取り巻く環境は常に変化するから、各時点で最善の政策運営を行うために、公約とは異なる対応を取ることが迫られることはあり得るからだ。
公約に示した政策方針を絶対に変えてはならないということではない。
しかし、主権者である国民と交わした約束に反する政策を実行する場合には、①政策変更に正当性があること、②主権者国民に政策変更を十分説明すること、③主権者国民が政策変更を了承すること、のプロセスを経ることが必要不可欠である。
ところが、野田内閣がこのたび提案している消費増税提案に関してこの点を検討してみると、①政策変更に正当性はなく、②主権者国民に対する説明はまったく行われておらず、③主権者国民の了解を得たという形跡もない。
事実、各種世論調査でも消費増税提案に反対する意見が多数を占め、とりわけ、今国会中の消費増税法案の成立に反対する意見はさらに多数を占めている。
2009年8月総選挙の際に現在の野田政権首脳が行った三つの演説がある。民主党の政権公約を代表する三大演説とも言うべきものだ。
第一は野田佳彦氏による2009年7月14日の衆議院本会議演説
第二は、岡田克也氏による2009年8月11日の千葉県柏市駅前での街頭演説
第三は、野田佳彦氏による2009年8月15日の大阪での街頭演説
である。
野田氏は大阪での演説で、次のように発言した。
「鳩山さんが四年間消費税を引き上げないと言ったのは、そこなんです。シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。
そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。」
この街頭演説動画は、私が本年1月15日にブログで紹介したところ、一気に情報拡散したもので、国会でも何度も取り上げられている、いわゆる「シロアリ演説」と呼ばれるものである。
野田氏は、官僚の天下りやわたりの根絶、すなわちシロアリ退治をせずに消費税を引き上げることはおかしいことを主権者国民に訴え、主権者国民はこの発言をも踏まえて、民主党に政権を委ねた。
また、岡田克也氏は無駄な政府支出を排除することで、年間9兆円の財源を調達することについて、
「与党はそんなことできっこないと言うが、私たちはそれをやる。
一から制度を見直せばできる」
と明言していた。
主権者国民に対するこれらの発言と正反対の政策が推進されていることに対して、民主党に投票した主権者国民の多くが、民意を踏みにじられたと感じていることを真摯に受け止めることが不可欠である。
書生っぽい議論であるかも知れないが、日本の議会制民主主義を正しく機能させてゆくことを重視するときに、この問題を無視することはできない。
第二の問題として、政府が、現行の社会保障制度は若年層に損失を与える制度であることを強調し、言わば、世代間不公平の感情を煽る形で、消費増税を推進していると感じられる点についての意見である。
その一例を示す。
2004年に厚生労働省が発表した世代別の年金収支試算は、すべての世代で、受け取る年金金額が、支払う年金保険料の2倍以上になることを示していた。
公的年金は国民に利益を与える制度であり、年金保険料を納付することが促進された。
ところが、本年1月に内閣府から発表されたディスカッションペーパーは、1960年生まれを含む、これより若い世代の国民は、支払う保険料よりも受け取る年金金額が少なくなるとの結果を示した。
二つの試算結果が正反対の結論を導いている背景として、二つの恣意的な手法が用いられたことを指摘できる。ひとつは、支払い保険料において、2004年試算が会社負担を算入していないのに対し、2012年試算はこれを算入していること。単純計算して、2012年試算の支払い保険料は2004年試算の2倍になる。
いまひとつは、受取年金金額を一定時点での金額に換算するための割引率に用いる指標が異なることだ。2004年試算では、年金収支が有利になるように、低水準の物価上昇率が使用され、2012年試算では年金収支が悪く見えるように、高水準の運用利回りが用いられている。
2004年試算では年金保険料を納付させるために、年金が得になるとの数値を示し、2012年試算では現役世代の不平を引きだすために、年金が損になる数値が示されたものと解釈できる。
本年発表された内閣府のペーパーは政府の公式見解を示すものではなく、個人名によるペーパーではあるが、政府はこうした試算結果をも利用して、若年層の損失を緩和するために消費税率引上げが必要との説明を展開しているように見える。
これは消費増税を正当化する論拠としては、あまりにも品格に欠けるものと言わざるを得ない。
現行年金制度の世代間不公平が深刻であるなら、その問題は年金制度そのものの改革によって解消するべきであり、年金で発生する損失を消費税で調整するとの論理の組み立てはあまりにも陳腐である。
第三は日本財政の現状、第四は循環赤字と構造赤字、第五は日本の租税構造との関連についての意見だが、詳細はメルマガに記述する。