【温室効果ガス観測技術衛星】
二酸化炭素吸収排出量(正味収支)の推定の精度が向上するするという。
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測データを用い
た全球の月別・地域別の二酸化炭素吸収排出量の推定が正確になると期待
されている。それによると、「いぶき」による二酸化炭素の観測濃度デー
タと、地上測定ネットワークデータの平成21年観測分の公表値とを併せて
利用し、平成21年6月から平成22年5月までの12カ月分の全球の月別・64地
域別の二酸化炭素吸収排出量(正味収支)を算出。この結果、月別・地域
別の二酸化炭素吸収排出量(正味収支)の推定値に関する不確実性が、地
上観測データに「いぶき」観測データを加えることで、従来よりも大幅に
(地域によっては年平均値で最大で50%程度)低減されることがわかった。
1.地上観測データに「いぶき」観測データを加えることで、月別・地域
別の二酸化炭素吸収排出量(正味収支)の推定値に関する不確実性が、従
来よりも大幅に低減される。
2.地上観測点の空白域である南米・アフリカ・中近東・アジアなどの二
酸化炭素収支推定値の不確実性が「いぶき」観測データを加えることで年
平均値で最大50%程度減少した。
3.北半球の夏季に北半球高緯度地帯(ロシア・シベリア)で大きな吸収
冬季に排出となる傾向が見られ、従来の知見とほぼ同様の結果が見られた。
「いぶき」による継続的観測と今後のデータ処理プロセスのさらなる向上
で気候変動による陸域生態系の吸収排出量の変化の早期検出が期待される。
4.解析を行った1年間の二酸化炭素全球収支は、同期間の地上観測デー
タが示す二酸化炭素濃度増加率から求めた値とほぼ同様の4[ギガトン炭素
量/年]程度。この収支の値の妥当性や化石燃料消費による人為起源や自然
起源の寄与については今後更に確認を行う。
5.「いぶき」観測データを加えることで地上観測データのみの推定より
月・地域によっては異なる推定結果が得られており、今後「いぶき」観測
データの利用研究を進めることにより現象の理解が深まるものと期待され
る。
今後の予定
1)海外の研究機関、研究者による評価・確認
今回求めた月別の全球64地域における正味収支の推定結果は「海外他機
関による同様の解析結果との比較などを通して評価・確認を行う。その結
果をもとに、必要に応じてデータ処理プロセスの改良をはかり、これらの
二酸化炭吸収排出量(正味収支)プロダクトおよびそれに基づく全球の二
酸化炭素濃度3次元分布プロダクトの一般提供を予定。
2)「いぶき」後継機の開発
今回、観測データの有用性を世界で初めて示したが「いぶき」の宇宙から
の全球の多数点での観測を今後も継続し、炭素循環解明、地球環境監視、
世界の気候政策への貢献をさらに充実。最短で平成28年ごろの打ち上げを
目指して、さらに性能を向上させた後継機開発について、環境省、NIES、
JAXAで共同して検討を進める。
【Intermission】
やっと、観測データに確度が増す。恐ろしさと面白さが混在するニュース。これも「縁の下
の技術」というわけだ。