【ねじり平鋼杭状補強材 地盤補強工法】
これまで建築物や工作物を設置するには地盤を掘削し、コンクリートで基礎を作るのが一般的だ。この
コンクリート基礎を使わず、より環境に配慮しながらかつコストを抑えられる工法が話題となっている。
その名称は「NSスパイクエ法」という。土木工事で使われていたらせん状の杭を建築工事に利用する。逆
回転すると抜き取れる特徴を活かし太陽光発電の架台などの建築物や、工事現場における仮設工作物の
設置に効果を発揮する。地盤強度により数値は変わるが、軟弱地盤の場合コンクリート基礎と較べ工事
費、養生費、撤去費など数10%逓減できる。11年10月、NSスパイクエ法推進連携体として試験施工を行
い日本建築総合試験所の性能証明を取得。NSスパイクは螺旋形状のため鉛直方向から力が加わっても上
下両方向に支持力が増す。一度しめた木ネジを引き抜いたり、押し込んだりできないのと太陽光パネル
の架台として、コンクリートで基礒工事をするよりもトータルでコストを抑えることができる。
施工は専用のアタッチメントを取り付け、打撃または回転圧入により地盤に挿入する。使用する機材は
小型杭打機やバックホーでもよく小径なら人力でも可能。これまで道路標識を設置するには周囲を広く
深く掘削し、そこに基礎となるコンクリートを打設して標識の柱を取り付けていた。発生する残土は産
廃として処分しなければならず、コンクリートがNSスパイクとコンクリート基礎の比較図太陽光発電架
台(θ=30°)NSスパイク及びコンクリート基礎比較図、風力発電、太陽光発電などの設置に適してい
る。遊休地を借りて太陽光発電などを設置する場合はコンクリートで基礎工事をするよりもトータルで
コストを抑えることができる。太陽光発電の架台だけでなく、パネルゲートや仮設ハウスの基礎などに
も有効利用できる。これまで仮設の構造物も一様にコンクリートを打設して基礎をつくっていたが、さ
まざまな分野で適用できそうだ。測量から設置まで2週間 同工法で農地に隣接する遊休地にソーラー
パネルの架台を設置した場合、従来のコンクリート基礎による工事は田んぼに石灰が流れる恐れがあり、
施工も1~2ヵ月かかる。しかしNSスパイクだと土壌汚染の心配がない。
残土も発生せず、撤去するとき杭を逆回転させて抜き取れる。杭のリユース・リサイクルが可能で、地
盤軟弱だとより効果を増す。従来は基礎を安定させるためにコンクリートを多く使用したが、コンクリ
ートの自重でさらに不等沈下を引き起こすこともある。NSスパイクは軽量であり、押し込み・引き抜き
に対し同等の効果を発揮する。またガス管や水道管など地下に埋設物があるときは偏心させて打ち込む
こともでき施工場所をほとんど選ばない。太陽電池パネルの架台設置はボーリング調査で杭の長さを決
め地盤が強固なら60cm、軟弱なら1.5m程度だが、約990の広さの土地に太陽光パネルの架台を設置した
場合、費用は10万円程度に抑えられる。
特開2012-132146
杭の回転打ち抜き方法及び杭回転打ち抜き装置
施工をフゴーチャートでみると、油圧オーガを利用する場合は準備のための土工事をしたあとに台座プ
レートまたはズレ止め防止金具を設置し、NSスパイクを打設、NSスパイクと台座プレートまたは上部構
造物に接合して完了する。杭経100㎜以下、長さ1.5m以下なら小型杭打ち機や人力での打設可能だという
。このような形状の杭は元来存在していたが強度などの安全性を疑問視する声もあり、建築分野では普
及していなかった。しかし、性能証明取得で、公的に性能が認められたことで工法として採用しやくなり
様々な分野で応用展開できそうだ。
【害虫の腸内共生細菌の謎】
様々な農薬が開発され、農業現場を中心に広く使われてきた。世界的な食糧難が問題にされ、残留農薬
のリスクがあるものの害虫防除のニーズは減ることはない。農薬はマラリアを媒介するハマダラカなど
吸血性害虫の防除はその好例だろう。一方で、単一の農薬を連続使用すると農薬抵抗性の害虫が出現す
ることが問題になっており、500種類の農業害虫、衛生害虫、家屋害虫用農薬への抵抗性発達が世界的
な問題となっている。そして、抵抗性のメカニズムとして、クチクラ層の肥大による農薬浸透性の低下
農薬の解毒・排出能力の向上、受容体等の農薬標的タンパク質の構造変化など様々な事例が知られてい
る。しかし、最近、産業技術総合研究所の菊池義智らは、体内に共生する細菌が宿主害虫の農薬抵抗性
に大きく寄与する事例を発見。作物害虫や衛生害虫の多くはその体内に共生細菌をもち、昆虫体内で消
化管に発達した特殊な器官や細胞内に局在し、餌に不足する栄養素を供給するなど宿主昆虫の栄養代謝
に重要な役割を果たしている。ダイズの害虫として知られるホソヘリカメムシは消化管に盲嚢(もうのう
)と呼ばれる袋状の組織を多数発達させ、Burkholderia共生細菌をぎっしりと共生させている。環境土壌
中に生息するこの細菌を口から取り込む。
ホソヘリカメムシの共生細菌は土壌細菌の一種で、農耕地にも普通に見られる。農耕地土壌中の細菌の
遺伝的多様性を調査したところ、単離された共生細菌系統の中に有機リン系殺虫剤であるフェニトロチ
オンを分解するものがいくつか含まれていたという。分離培養したフェニトロチオン分解性Burkholderia
sp(フェニトロチオン分解菌)とフェニトロチオンを分館できない非分解菌をそれぞれホソヘリカメム
シに感染させ、カメムシヘの影響を比較。その結果、フェニトロチオン分解菌に感染したホソヘリカメ
ムシと非分解菌に感染したホソヘリカメムシの間で、共生細菌の定着率や、宿主の生存率、成長速度、
体のサイズなどに有意差は見られず、フェニトロチオン分解菌に感染したホソヘリカメムシでは、非分
解菌に感染したホソヘリカメムシに比べてフェニトロチオンヘの抵抗性が大幅増した。この結果は、農
薬分解菌の感染により害虫が農薬抵抗性を獲得していることを示している。分解菌によりフェニトロチ
オンは昆虫にとり、ほぼ無毒の3-メチルー4-ニトロフェノールに分解され、その後、複数のステップを
経て炭素源として利用され、分解菌はフェニトロチオンをエサとして食べて増殖する。これにより農耕
地におけるフェニトロチオンの散布が土壌中のフェニトロチオン分解菌の増殖を促し、これにより共生
細菌を介したカメムシ類の農薬抵抗性が促進される可能性を強い。
つまり、共生細菌によるカメムシ類の農薬抵抗性獲得は次のような過程を経て成立するものと考えられ
る(上図)。一般的に、農薬抵抗性は昆虫自身の遺伝子に生じた突然変異に起因するものであり昆虫集団
中に現れた抵抗性個体が農薬の使用により選択を受け、次第に集団中の個体数を増加させて顕在化する
と考えられ、共生細菌による農薬抵抗性獲得機構の発見は、これまで知られていなかった新しい農薬抵
抗性の発達機構を提示する。害虫が土壌中の農薬分解菌を取り込んで農薬抵抗性になるという現象は現
行の害虫防除法においてまったく考慮されていない盲点とも言え、今後その現状把握と対応策の検討が
必要になると指摘している。
昆虫食については『トップランナーを狙う』でも掲載したことがあるが、本格的に養殖魚の食餌として
普及しつつあるという。これについては改めて考察してみたい。スパイク工法も面白い問題提起をして
いる。それにしても疲れた。