A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

携帯CMでブレイク必至!?~ピエール・アンリ「サイケ・ロック」

2007年12月17日 22時57分05秒 | 素晴らしき変態音楽
最近携帯auのINFOBARのTV-CFで使われているグルーヴィーな曲を耳に留めた方も多いだろう。トロッグスの「ワイルドシング」に似たリフにキュルルルルという電子音が絡むあの曲を作ったのがフランスの電子音楽家ピエール・アンリだ。1927年生まれだからもう80歳の好々爺である。40年代後半から"ミュージック・コンクレート(具体音楽)"という電子音響の手法を研究し始めた。これは話し声や自然音、自動車の音、ガラスの割れる音など様々な具体音を録音し、それを細切れに繋ぎ合わせるという、録音技術をフル活用した制作方法だった。当時は厳密には電子音は使っていなかったので、いわゆる電子音楽からは亜流とされる。むしろアヴァンギャルドな音響彫刻と呼べるサウンドである。50年代半ばに先日他界した振付師モーリス・ベジャールと知り合い、彼のバレエのための作品をいくつも制作した。そのひとつが、映画音楽家ミシェル・コロンビエと共作した1967年の「現代のためのミサ」であり、その中の「サイケ・ロック」という曲が、現在TV-CFに使われているわけだ。この曲は当時フランスで流行した"ジャーク"(ツイストのようなもの)というダンス・ミュージックにエレクトロニクスを合体させ、そのキャッチーなサウンドで、現代音楽史上初のポップス・ヒットとなった。
以来アンリは自己の音響研究所を設立し、無数の電子音響作品を発表してきた。最近亡くなったシュトックハウゼンをはじめ、普通の(?)現代音楽の作曲家であれば、通常の楽器を使った作品も作曲しているのだが、アンリは現在まであくまでミュージック・コンクレートを核にした電子音楽のみをコツコツと創り続けてきたマッド・サイエンティストなのである。
10年ほど前、「現代のためのミサ」がテクノ/ハウスのアーティストに注目され、リミックスがリリースされヒットしたこともある。その頃のアンリの演奏風景のビデオを観たことがあるが、70歳にしてDJブースに仁王立ちする姿は神々しいほどのオーラを放っていた。
2000年頃には自らの作品を集大成するボックス・セットが4セット・リリースされ話題になった。内容は凄まじいの一言である。その辺のエレクトロニカやノイズなど裸足で逃げ出すような重厚な音響が渦を巻く。私もボックス・セットを揃えたが、その意志の強靭さと歴史の重さに茫然自失している有様だ。
入門編としては写真に載せたベスト盤「現代のためのミサ」がお勧めである。モンドでカッコいい「現代のためのミサ」の他にも、電子音がのたうち回るビョークのような曲や、ドアの軋む音だけで出来たアンビエント音響も収録されている。

アンリ翁
魑魅魍魎の
ノイズ道

しかしこの手強い音楽をコマーシャルに使ってしまう携帯会社も別の意味ですごいと言える。
コメント
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