A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ポール・ニルセン・ラヴ & ケン・ヴァンダーマーク・セッション@新宿ピットイン 2012.9.11 (tue)

2012年09月13日 00時55分11秒 | 素晴らしき変態音楽


ポール・ニルセン・ラヴ(Ds)ケン・ヴァンダーマーク(Ts,Bs,Cl)
ゲスト:坂田 明(As,Cl)八木美知依(エレクトリック21絃箏、17絃ベース箏)本田珠也(Ds)

ポール・ニルセン・ラヴからのメッセージ:
今年もまた日本に行ってピットインで演奏するのを心から楽しみにしています。今回は10年以上も共演を続けているケン・ヴァンダーマークが同行します。このデュオは私の多岐に渡る音楽活動の中でもとりわけ重要なものです。ケンと私はスタイルやジャンルなどに足を引っ張られることなく、自由に互いを挑発しながら、常に極限的な演奏を心掛けています。今回のピットイン公演には親愛なるゲストたちを招きました。坂田明、佐藤允彦、八木美知依、本田珠也、そしてジム・オルークは何れもケンと私が敬愛するアーティストであり、私達にとって家族の様な存在です。きっとエキサイティングになるであろうピットインでの2日間、どうぞご期待下さい。
(新宿ピットインHPより)

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シカゴのリード奏者ケン・ヴァンダーマークとノルウェーのドラマー、ポール・ニルセン・ラヴデュオ来日ツアー。2000年代半ばに若手北欧フリー・ジャズ・グループ、アトミックのメンバーとして来日して以来毎年何度も来日し、実は日本に住んでいるんじゃないか、なんて冗談も囁かれるポールだが、ケンとは10年来の付き合いでデュオ・アルバムも6作リリースしている。ペーター・ブロッツマンのグループで一緒に来たことはあるが、デュオとしては初来日。

2000年以降北欧ジャズが大きな注目を集めている。ブッゲ・ヴェッセルトフトやニルス・ペッター・モルヴェルを中心とするフューチャー・ジャズ(懐かしい響き)がクラブ・シーンで注目され若いファンを開拓し、そのまま以前から脈々と流れていた知られざる北欧フリー・ジャズの鉱脈を掘り起こすこととなった。1970年代のヨーロピアン・フリー・インプロヴィゼーションの伝統を引き継ぐ新世代のアーティストが次々登場し、ジャズに限らず世界中の様々なミュージシャンとも盛んに交流し、今や北欧カルチャーの最前線として注目されている。北欧各国の大使館が自国の文化紹介の為にこうした前衛アーティストの招聘に協賛しているほどだ。ヲタク文化の輸出にしか興味のない我が国とはエライ違いだ。

それはさておき、ケン&ポール・デュオの来日ツアーは9/5千葉から始まり九州~関西と周りラスト2 Daysが"Pit Inn Sessions 2012"として日本のミュージシャンとのセッション。初日は坂田明さん、八木美知依嬢、本田珠也氏がゲスト。坂田さんは2008年ケンの初来日時にスーパーデラックスでペーター・ブロッツマンと一緒に3管で凄まじい演奏を繰り広げたし、ポールとは来日時は毎回、海外のフェスでも共演する旧知の仲。八木嬢も何度か共演しているハズ。本田氏は初顔合わせらしい。

椅子席が丁度埋まるくらいのまずまずの動員。年季の入った往年のフリー・ジャズ・ファンから如何にも楽器をやってそうな若者まで幅広い年齢層。意外にも女性ファンが多い。

1stセットはケンと本田氏の初共演。ケンはバリトン・サックスで探り合いのように厳かに始まるがすぐに呼吸を掴んで激しいバトルに突入する。大口純一郎トリオ、菊地雅章トリオ、ケイ赤城トリオ、菊地成孔Dubsextetなどに参加するとともに数多くの即興音楽家とセッションしている本田氏だからダイナミックなケンのブロウに負けない迫力のドラミングで対抗する。喧噪に満ちた轟音セッションのあとはケンがクラリネットで大人しめの演奏。それをしっかり受け止める表情豊かなドラムがよかった。20分強のセッション。



2ndセットはポール、坂田さん、八木嬢のトリオ。いきなりフルスロットルで吹きまくる坂田さんに鋭いポールのドラム、電気増幅された八木嬢の箏が絡み合い一気に駆け抜ける演奏。2曲目は坂田さんがクラリネットで起伏のあるドラマティックな演奏。最後は再びアルトで静から動へと徐々に盛り上がる怒涛の展開。坂田さんを観るのは4月のJAZZ非常階段以来5ヶ月振りだが、いつ聴いても艶のある美しいサックスの音色に酔ってしまう。40分の演奏。



最後に全員でのセッション。ケンのバリトンと坂田さんのアルト、そしてツイン・ドラムの見るからに豪快なクインテットだ。突っ走るだけではなくクラリネットのデュエットや音の谷間に震えるような緊張感のある演奏は現代即興音楽の頂点を観るような気がする。それにしてもツイン・ドラムの迫力は凄い。八木嬢の箏が実に効果的に響き坂田さんの歌も披露され、大いに楽しんだ30分だった。



鳴り止まぬ拍手に応えてアンコールはケン&ポールのデュオ。流石の阿吽の呼吸で展開される息もつかせぬインプロヴィゼーションにヨーロッパ音楽の中世以来の伝統を垣間見た気がした。



終演後楽屋で坂田さんに挨拶。ツイン・ドラムが2週間後のJAZZ非常階段の予行演習になりましたね、と言うと嬉しそうに微笑んでいた。横でポールがタバコをふかしていたが、嫌煙家の坂田さんは平気だったのだろうか。

北欧と
日本の出会い
純結晶

翌日は佐藤允彦さんとジム・オルークがゲスト。そちらも観たかったな~。
コメント
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