A Challenge To Fate

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英國音楽の伝統を継承して40年~マイク・オールドフィールドの幻惑の世界

2012年09月14日 00時21分52秒 | 素晴らしき変態音楽


近年数々のロックの名盤が未発表曲やレア映像を加えてスペシャル・エディションとして再発されているが、あまり大きな話題にならないがブリティッシュ・ロックを代表するギタリスト/作曲家マイク・オールドフィールドの諸作のデラックス盤のリリースが進行中である。2009年にデビュー・アルバム「チューブラー・ベルズ」(1973)、2010年に2nd「ハージェスト・リッジ」(1974)と3rd「オマドーン」(1975)、2011年に4th「呪文」(1978)、そして今年5th「プラチナム」(1979)と6th「Q.E.2」(1980)、さらにマイク自身の選曲によるベスト盤「トゥー・サイド:ベリー・ベスト・オブ・マイク・オールドフィールド」もリリースされ、彼の広大な音楽宇宙が眺望できるようになった。先日ロンドン・オリンピックの開会式で来年還暦のマイクが登場し、ミュージカル風に編曲された「チューブラー・ベルズ」を10分に亘り演奏し、健在ぶりを示すとともに英國を代表する音楽家としての人気と評価の高さを証明したのも記憶に新しい。

中学1年生の頃洋楽に目覚めて、映画音楽、特に西部劇のシングル盤を買い漁るうちに「エクソシストのテーマ」すなわち「チューブラー・ベルズ」に出会った。勿論プログレどころかロックというジャンルも知らなかったが、レコード店で流れていた美麗かつ不穏なメロディが気に入ったのである。そのシングル盤の解説でこの曲がマイク・オールドフィールドというロック・ミュージシャンがひとりですべての楽器を演奏して作り上げた作品であること、彼が姉のサリーとサリアンジーというデュオを組んでいたこと、その二つの事実が脳裏に焼きついた。しかし捻くれた中坊はそのままプログレ道へは進まず、ジョン・デンヴァーやビーチ・ボーイズといった"アメリカ青空系音楽"に憧れ、続いてキッス、エアロスミス等ハードロックに聴き進んだ。一時期冨田勲にはまりシンセ音楽に興味を持ったが、雑誌で見たジョニー・ウィンターに一目惚れしブルース・ロックへ。中3の時にパンクの洗礼を受け卒業アルバムに"パンクロックのみ"と書くほどのめり込んだ。しかし同時期にNHK-FM「サウンド・ストリート」で渋谷陽一さんと今泉ひろしさんによるプログレ特集を聴きジェネシスが好きになった。

という感じで当時はロックが今ほど細分化されておらず、オリヴィア・ニュートン・ジョンとディープ・パープルとドゥービー・ブラザーズとセックス・ピストルズが同じ雑誌/ラジオ番組で取り上げられる程"ロック"の概念が幅広かったのである。その頃ブリティッシュ・トラッドの名門トランスアトランティック・レコードの再発シリーズで名前だけで妄想が膨らんでいたサリアンジーの「チルドレン・オブ・ザ・サン」が発売され狂喜乱舞、サリー・オールドフィールドに心酔する。彼女のソロ・デビュー作「ウォーター・ベアラー」のミニマルで神秘的な世界にどっぷり浸かった。

マイク・オールドフィールドと再会したのは大学で「ユーロロック研究会」というサークルに加入した時である。既に「フールズ・メイト」や「マーキー・ムーン」でマイナーなプログレには親しんでいたがメジャー系に弱かった私に先輩が渋谷公会堂でのマイク・オールドフィールド初来日公演の隠し録りカセットを聴かせてくれたのである。「チューブラー・ベルズ」をはじめとするシフォ二ックな組曲中心の壮大な演奏に痺れた。「プラチナム」のアメリカ盤は2枚組で「チューブラー・ベルズ」全曲のライヴLPが付いておりそれも聴き狂った。しかし80年代のマイクはニューウェイヴ・ブームに便乗してディスコ・ビートを取り入れたりしてポップ化したので余り聴くことはなかった。

マイクが自分の中で過去の人になりつつあった1990年頃川崎クラブチッタに誰かのコンサートを観に行ったら、開演前のSEで凄くミニマルで前衛的な曲が延々流れており気になって会場のスタッフに尋ねたらマイク・オールドフィールドの「アマロック」だった。このアルバムは強烈だった。全1曲60分という掟破りのCD。今のようにiTunesなどなく聴き始めたら途中で止めるわけに行かないのだ。その後自らヴォーカルを取ったポップな作品や「チューブラー・ベルズ」の続編をリリースするが「アマロック」こそデビュー3部作に次ぐマイクの最高傑作だと思う。

マイクの過去の作品や21世紀になって思い出したようにリリースされる新譜を愛聴していたところへ今回のデラックス・エディション攻勢である。各アルバム・リリース時のライヴDVD等がカップリングされた夢のような企画である。彼の音楽の中に色濃く流れる英國伝統のトラッドの響きに全くブレがないことに感動する。

ひとりでコツコツとスタジオ作業を繰り返した"元祖インドア派"の根クラ青年が英國を代表する大音楽家へ。ヲタクの星のような存在がマイク・オールドフィールドなのである。









幻惑の
ギター・プレイは
夢の中

多分1985年以降日本の地を踏んでいない筈。来年あたり来日してくれないだろうか。
コメント (2)
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