A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

セシル・テイラー+田中泯@草月ホール 2013.11.17(sun)

2013年11月19日 02時32分14秒 | 素晴らしき変態音楽


セシル・テイラー京都賞受賞記念公演
セシル・テイラー(ピアノ)+ 田中泯(オドリ) デュオ
論理はいらない、魔術をつかめ! 
Magic Si! Logic No!


世界が人間なしで始まった頃より、水と土と火で捏ねられた太古の<音の記憶>が、逢瀬を重ねたふたりの呪禁師の四肢に沁み入って、いま、プラズマの海・東京に舟を漕ぎ出す。
京都賞を受賞した、生来の「詩人」であり先駆的ピアニスト・セシル・テイラーが、ダンサー・田中泯と企てる<呪言の密議>。

京都賞思想・芸術部門、音楽分野歴代受賞者:
1985年 オリヴィエ・メシアン
1989年 ジョン・ケージ
1993年 ヴィトルト・ルトスワフスキ
1997年 イアニス・クセナキス
2001年 ジェルジ・リゲティ
2005年 ニコラウス・アーノンクール
2009年 ピエール・ブーレーズ
2013年 セシル・テイラー
現代音楽の大家が並ぶ中で、所謂軽音楽・大衆音楽分野で初の受賞者がセシルである。

11月10・11日京都にて大々的に開催された授賞式はUSTで生配信された。他部門の受賞者も相当なお方で、記念講演会講演会での長時間のスピーチは専門用語を多用した深い内容である意味アヴァンギャルド。セシルは田中泯とともに詩の朗読とピアノ演奏を披露。重厚な式典に華を添えた。

  
 

何時間も旅して日本へ来るのに、授賞式だけではもったいない(とらんど)と企画されたのが草月ホールでの田中泯とのデュオ公演。扇情的なタイトルは如何にも武闘派舞踏家らしい。ジャズと舞踏のカリスマの激突は当然大きな話題となりチケットはすぐにソールド・アウト。ロビーに溢れる客の80%は男性で、銀髪の年配者が多い。ピットインやブルーノート東京の客とは何となく雰囲気が違う。舞踏系、それも田中泯のファンがかなり多かった様子。



2部構成で、田中とセシルの無音のオドリセッションにはじまり、断続的に激しい感応プレイに突入する前半と、穏やかなピアノと手を広げ大きな動きのオドリが一定のスピードでコマ送りで連続する後半。田中とセシル、ピアノとオドリ、論理と魔術、静と動、西洋と東洋、黄色と黒、年上と年下、悉く対になって陰陽を描き出す。舞踏の極意は知らないが、重力や空気抵抗に囚われない自由な舞が鮮烈至極。セシルのピアノは、全盛期に比べたら病むを得ず非力だが、侘び寂びを備えて聴き手の心を刺激する正のオーラが小柄な体躯から発散されていた。無音から轟音へトランスフォームするスリルを味わえた第1部が特に気に入った。二幕終えてステージから挨拶するふたりの笑顔がまぶしい。田中の師である土方巽への言及に、客席から大きな拍手。老いたセシルの覚束ない足取りには殺気は皆無。それでもピアノを前にするとキリッと背筋を伸ばし、肘打ちを喰らわす精神力に感服。



老練なふたりの兵士が綾成した深遠な舞台芸術作品には20世紀芸術の粋が集大成された濃厚な美意識が脈打っていた。新世紀の表現者にとって、超えなければならないスタンダードが提示された。老兵は消え行くのみ、という枕言葉に惑わされることなく、自らの標準を超えることを恐れることは無い。これが最期かどうかは別にして、これ(ジャズ)が宿命ならば、それを全うするのも生まれもってのさだめであろう。

即興improvisation
ジャズjazz
音楽music

ジャズjazzと野菜vegitableの切り離せないハーモニーharmony。







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