きゃりーぱみゅぱみゅのマジカルワンダーキャッスル
スーパーきゃりーぱみゅぱみゅへの進化宣言をしたきゃりーちゃんの初アリーナ公演2DAYS。ハマスタ(横浜スタジアム)と勘違いしていたが、途中で気づき無事横アリに辿り着く。昨年クリスマスの東京ドームのような大混雑を覚悟していたが、キャパの違い・導線の分かり易さにより、混乱なく入場できた。毎度の大行列の物販はスルー。出遅れてチケット手配が後手に回ったので座席に期待していなかったら、ラッキーなことにステージを下手横から見上げる最前ブロック。目の前にTVカメラのクレーンが設置されているので、撮影用スペースを開放したのかもしれない。
クールなオルゴールのBGM、動物人間の大道芸、立体感のある大がかりなステージセット、ワイアーで天井から登場するきゃりーや忍者トリオ、人数倍増のキッズダンサー、幼稚園仕込みの一輪車、葉加瀬太郎風のバイオリン奏者、派手さではKISSに負けるが熱波に顔が火照る火の柱、真に迫った殺人遊戯、着脱可能金屏風電飾ワンピなど、ガジェット感溢れる演出はいつにも増して多い幼児客を飽きさせない。大人も一緒になって時の経つのを忘れて没入した。
記憶の扉を開き、忘れかけていた夢や憧れを蘇生させるマジカルなパワーは、誰しも一度は経験する一家団らんや家族旅行の思い出にも似た、セピア色のメモリーを大脳皮質に刻み込むに違いない。きゃりーぱみゅぱみゅは仏の悟りの境地を描いた「曼荼羅」であると同時に、現世の煩悩を捨てきれない俗世の住人を仏の教えに導く「菩薩」でもあることは明らかである。
いわば我々は釈迦の手のひらの孫悟空と同じように、きゃりーが手にしたゲームボーイのポケモン育成ゲームに登場するキャラクターに過ぎないのかもしれない。普通ならばアイドルを育成することで無限の歓びを手に入れるファンが、立場が入れ替わりアイドルを悦ばす独楽(コマ)となる。きゃりー本人は「あたしアイドルじゃねぇし!!」と否定するが、これは間違いなくアイドルの役割だと断言できる。
昨年に続く二回目となるワールドツアー「KPP NANDA COLLECTION WORLD TOUR 2014」は合計11か国・地域16公演で、約3万5千人を動員する。新曲「ゆめのはじまりんりん(意訳:BeBeBeBeginning of The Dream)」でティーチャーとマイフレンドにグッバイを告げる進化の巨人=きゃりーぱみゅぱみゅの動向から目を離すことは出来ない。
【セットリスト】
1. ファッションモンスター
2. さいごのアイスクリーム
3. キミに100パーセント
4. くらくら
5. ふりそでーしょん
6. み
7. みんなのうた
8. Super Scooter Happy
9. CANDY CANDY
10. きゃりーANAN
11. インベーダーインベーダー
12. のりことのりお
13. すんごいオーラ
14. Point of view
15. おやすみ
16. ぎりぎりセーフ
17. つけまつける
18. にんじゃりばんばん
19. おとななこども
20. PONPONPON
21. もったいないとらんど
<アンコール>
22. ゆめのはじまりんりん
23. ちゃんちゃかちゃんちゃん
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【傾向と対策】きゃりーぱみゅぱみゅが越えなければならない「不死身の壁」
コンサートのハイライトは悪魔に狙撃され紫の血を流して倒れたきゃりーが何事もなかったように立ち上がり歌い続ける演出だった。きゃりーが特にこだわって不死身のきゃりーぱみゅぱみゅを表現したかったという。不死身を目指すきゃりーの今後を占うために為に、音楽界の「不死身の壁(Walls of Immortality)」を調査・分析し、KPPに捧げたいと思う。
●スピッツ 「不死身のビーナス」
まず越えなければならないのは永遠少年犬バンドの不死身ソング。初めてチャート入りした1994年の5thアルバム『空の飛び方』収録曲。作った当初は「無敵のビーナス」というタイトルだった。当時、ライヴの盛り上げ曲として演奏され、「ネズミの街」という歌詞の「ネズミ」の部分を開催場所名に変えて歌っていた。不死身といっても風まかせの風来坊なので、実力は口ほどにもないだろう。
●↑THE HIGH-LOWS↓ 「不死身のエレキマン」「不死身の花」
続いてスピッツ草野マサムネの憧れの存在のザ・ブルーハーツのヒロト&マーシーが1995年に結成したザ・ハイロウズの不死身曲が2曲。「不死身のエレキマン」は1998年の3rdアルバム『ロブスター』に収録。ライヴではヒロトがフライングVを弾く人気ナンバー。大人になれない子供を歌った青春ロケンロー。間もなく21歳を迎えるきゃりーの子供の心で対抗可能。
「不死身の花」は2000年の5thアルバム『Relaxin' WITH THE HIGH-LOWS』に収録。テレビ朝日系「いきなり!黄金伝説。」エンディング・テーマ。不死身で永遠に変わらないがゆえに誰からも愛されない戦場の花の悲哀を歌ったリリックは泣ける。しかしジョーシキに囚われず常に変わり続けるきゃりーなら負けはしないだろう。
●タイマーズ 「不死身のタイマーズ」
80年代末に突如出演した覆面バンド。RCサクセションの忌野清志郎に"よく似ている"ゼリーが率いる。バンド名はタイガースのパロディと言うがあからさまに大麻を賛美し、生番組で放送禁止用語を交えラジオ局を罵倒、お騒がせの極み兄貴バンド。1995年にリリースされたライヴ・アルバム&ビデオが『不死身のタイマーズ』。曲のタイトル・内容が過激なことからインディーズから発表されたが、現在では入手困難となっている。真っ向から対抗するにはきゃりー本人がドラッグや過激発言をするしかないが、ゼリーが他界しているので、卑怯なオトナに倣って裏から手を回して遺族の許可を得ればスルー出来るはず。
●パール・ジャム 「Immortality(不死)」
海外に飛び出すきゃりーは当然異国の不死身ソングも打破しなければならない。ニルヴァーナ亡き後のオルタナロックの首領パール・ジャムの1994年の3rdアルバム『バイタロジー』に収録。不死への疑問を投げかける歌詞は、2か月前のカート・コバーンの死を歌ったのではないかと話題になったが、作者のエディ・ヴェダーは否定している。きゃりーが対抗するにはアメリカ公演のゲストにパール・ジャムを迎える懐柔策がベスト。
●遠藤賢司 「不滅の男」
残る2つの壁の最初は67歳を迎えますます血気盛んなカレーライスとネコ好き、「遠からん者は音にも聞け 近くばよって目にも見よ 我こそは千代に八千代に 我が代の男 姓は遠藤 名は賢司 人呼んで天下御免の純音楽家 エンケンなるぞ!」。「夜汽車のブルース」「満足できるかな」「カレーライス」「東京ワッショイ」「夢よ叫べ」と並ぶ代表曲が「不滅の男」。筋金入りの不死身さんなので相手にとって不足なし。映画『不滅の男 エンケン対日本武道館』に対抗して「あたしアリーナクラスだし!!」と主張すれば不戦勝間違いなし。
●美空ひばり 『不死鳥』
最後の壁が難易度高し。日本芸能界に燦々と輝く御嬢(おじょう)身長147cm。40年に亘る芸能生活は紆余曲折でひとえに幸せだったとは言い切れない。1988年4月11日重度の病を押して決行した東京ドームでの「不死鳥コンサート」のエンディングで、約100mもの花道をゆっくりと歩を進めたひばりの顔は、まるで苦痛で歪んでいるかのようであった。とても歩ける状態では無いにも拘らず、沢山のひばりファンに手を振り続けながら全快をアピール。そのゴール地点には息子・和也が控え、ひばりは倒れこむように和也の元へ辿り着いたという。当時マスコミ陣営はひばりの「完全復活」を報道したが、ひばり自身にとっては命を削って臨んだ、伝説のステージとなった。この伝説的存在には金屏風を背負うだけでは対抗不可能。やはり東京ドームのステージに立つしかない。川の流れのように、慌てずじっくり構えて作戦を練るべし。
欲しいもの
死なないからだ
強い気持ち・強い愛
【予言】きゃりーぱみゅぱみゅと最上もが@でんぱ組.inc
同じ雑誌の表紙を飾ったこの二者の2014年の大躍進は間違いない。