A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【再録ディスクレビュー】でんぱ組/アーバンギャルド/きゃりー/Negicco/BiS階段

2014年07月18日 00時15分56秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


これを書いている2014年7月17日はブログ開設から3,456日という記念すべき日。それが父の3回目の命日に重なったのは一体どういう訳だろう。自分の運命が何者かによって仕組まれているのでは?という疑念は何度も抱いたことがある。逆らうのは辞めにして、流されるままに生きてきた。今回のチャンスミーティングもきっと神神の悪戯に違いない。しかもその日にでんぱ組が表紙のミュージック・マガジンを入手したのも男の定め。そんな奇跡が続いた日に書くこともないので、某音楽レビューサイトに書いたCDレビューを転載再録することにした。昨年書いたものだし、ブログで取り上げたCDばかりなので「またか」と思われるかもしれないが、自分の部屋であるブログじゃなく公共の場で発表するものなので、判り易さを心がけた。とは言っても音楽ヲタクの文章だから、妄想力はそのまま。2013年のマイベストとも言えるし、父を偲びつつ3456Daysのお祝いにいんじゃね?

でんぱ組.inc『でんでんぱっしょん』


アイドル・ブームの世の中、露出度過多の衣装の若い娘の集団とバカ騒ぎするオタクをにがにがしい思いで眺める諸兄も多いことだろう。しかし今や日本の音楽産業の売り上げの70%を占めると言われるアイドル界に日本ポップ・シーンの才能が集結していることは事実である。従来の職業作家に加え、ロックバンド、渋谷系、クラブDJ、さらにネット時代の寵児ボカロPが参戦したクオリティの高さはJ-POP史上最高峰と言って間違いない。

「萌えキュンソングで世界に元気を発信♪」を合言葉に秋葉原から登場した6人組でんぱ組.incはその中でも一際輝く個性派。最新シングル”でんでんぱっしょん”は日本一POPでクレイジーなバンドと評判のWiennersの玉屋2060%作曲の超高速デジロック・ナンバー。持ち味のアニメ声とハンパなくキレのあるダンスを最大限に活かした楽曲の凄さはぜひMVで確認されたい。

如何にもアイドル商法っぽい6種類のメンバー盤にはそれぞれ2ステップ/アンビエント/スラッシュコア/トリップホップ/ダブ/ハイパーテクノのリミックスを収録。売り物の歌をずたずたに切り刻まれても「萌え」が漲っていることには感嘆せずにはいられない。(2013.6.10)




アーバンギャルド『恋と革命とアーバンギャルド』


「トラウマテクノポップバンド」を標榜するアーバンギャルドの初のベスト・アルバム。60年代グループサウンズと、70年代歌謡曲と、80年代テクノポップと、90年代オルタナと、00年代デジロックを咀嚼し消化し尽くしたテン世代アヴァン・ポップに、現代人の心の闇をえぐる歌詞とキュートなヴォーカルが相まって、明るい狂気に満ちた世界を描き出す。

5枚のアルバムからの代表曲と未発表曲、佐久間正英プロデュースの新曲を含む全16曲収録。刺激的な単語に溢れた曲名を見るだけで、尋常なロックバンドじゃないことが分かるだろう。JK(女子高生)、童貞・処女、オタク、サブカルチャーといったマイノリティーへの愛と叱咤激励を、病的にポップ、痛いほどガーリーなサウンドで展開する。ナゴムギャルや不思議ちゃんを思わせる、セーラー服と水玉模様を身に着けたアーバンギャル&ギャルソンが血玉フラッグを一斉に振るライヴ・パフォーマンスは唯一無二の個性的な世界。その世界観は彼らのPV=プロパガンダビデオに見事に表現されている。

秋葉原(オタク&アニメ)や原宿(カワイイ)に対するカウンターカルチャーとして、病める日本を象徴する前衛都市。「恋と革命」というアンビバレントなタイトルが彼らの5年間の活動を見事に表している。(2013.6.20)




きゃりーぱみゅぱみゅ『なんだこれくしょん』


デビューして僅か2年で現代日本ポップカルチャーのアイコンとして世界的に注目を浴びるきゃりーぱみゅぱみゅの2ndアルバム『なんだこれくしょん』が登場した。

中田ヤスタカが関わったCapsule、Perfume、MEGなどに比べて、極度に趣味性の高いマニアックな世界はきゃりー本人の派手な衣装とメイク、サメや目玉やスカルなどキモカワ愛好、ブログやツイッターでの変顔露出、「PONPONPON」「うぇいうぇい」「つけまつける」など異常なミニマル言語感覚に起因する。すべてひらがなの曲目リストは正直言って読みにくいことこの上ないが、それは文字を覚えたての幼児の描くシュールな絵画に付された振り仮名(説明文)と同じ愛おしいイノセンスの発露である。外国人が変な仮名文字が書かれたTシャツや帽子を被っていることがあるが、きゃりーが海外で人気を博す理由は、仮名のグラフィック的な可愛さ・ポップさと相通ずる。一見「なんだこれ?」だけど何か意味がある。訳が分からないけど面白い。その興味は万国共通である。

デビュー作『ぱみゅぱみゅレボリューション』以降のシングル5曲に加えタイアップ曲を多数含む全12曲は、前作以上に凝りまくった捻じれポップセンスが満載。随所に和の要素が散りばめられるが、それは異邦(星)人による疑似日本解釈的な感触があり、和風というよりジャポニズムと表現したい。アニメやゲームやボカロにより世界中がヴァーチャルな日本を体験する時代だからこそ、きゃりーぱみゅぱみゅのジャポニズムが強力な非武装兵器足り得るのである。(2013.6.26)




Negicco『Melody Palette』


新潟出身のアイドル・グループ、Negicco(ネギッコ)のデビュー10年目にして初のオリジナル・フル・アルバムが登場。

米どころ新潟のローカル・アイドル、しかもステージからネギを撒く、と聞けば、農家の娘さん風の素朴な田舎娘を連想してしまうが、見ての通りのオシャレな現代っ娘(アタリマエ!)。しかも驚くなかれ、楽曲は現在のアイドル界で最高峰のオシャレ度&ソティスフィケイト度を誇る。米とネギを食べながら、UKソウルと渋谷系で育った三人娘の集大成が「Melody Palette」=音旋律の絵の具。デビュー以来のパートナーconnieをはじめ、小西康陽、西寺郷太(NONA REEVES)、tofubeats、長谷泰宏(ユメトコスメ)、吉田哲人、RAM RIDERなど現代ポップス界の才能が結集していろんな色彩の”ネギ愛”に溢れた作品に仕上がった。特に小西康陽作詞・作曲・プロデュースの「アイドルばかり聴かないで」はピチカート・ファイブ経由モータウン・サウンド&フレンチ・ポップスの最高のポップ・チューン。諧謔性に満ちた歌詞もピチカート以来の小西カラーが爆発。

イエイエなグルーヴが貫くノンストップの構成が、アイドルらしいハッピーな元気の良さと、良質なポップスならではの包み込むソフトネスが共存した、大人のあなたにピッタリのガーリーな世界に誘います。(2013.7.24)




BiS階段『BiS階段』


「アイドル戦国時代」が終わり、「多様化の時代」に突入したアイドル・シーンに強烈なコラボ・ユニットが登場。全裸・血塗れ・釘バットなど、アイドルの価値観をブチ破る、無軌道な活動が話題のオルタナティヴアイドル"BiS"と、30年以上も「キング・オブ・ノイズ」として国内外に悪名を轟かせるノイズバンド"非常階段"が合体、世界初のノイズアイドルグループ"BiS階段"としてデビュー。

非常階段は今までもスターリンとの"スター階段"、原爆オナニーズとの"原爆階段"、S.O.B.との"S.O.B階段"、坂田明・豊住芳三郎との"JAZZ非常階段"、最近ではボカロとの"初音階段"等、様々な異種混合ユニットを実現してきた。その試みの極め付けがアイドルとの合体である。

神聖なアイドルを極悪ノイズで犯す破壊力は爽快だが、異端のアイドルBiSのメロコア・ロック・ナンバーは非常階段の暴力性に負けないパワーを発揮し、新世代ロックのスタイルとして見事に結晶したことに驚愕する。80年代サブカルアイドル戸川純の「好き好き大好き」が、テン世代の激愛賛歌に生まれ変わった。非常階段・ハナタラシ・スターリン・じゃがたらなどロック伝説へのオマージュに溢れたPVも必見。先日開催された結成ライヴは生肉や汚物が飛び交、阿鼻叫喚のカオスを創出した。

たかがアイドルと侮るなかれ。テン世代ポップカルチャーのエクストリームとして、BiS階段は歴史に刻まれることだろう。(2013.8.9)




クリムゾン
ピンクフロイド
イエス『危機』

筆者にとって太陽とは戦慄するのが当然だが、最近はどうなのだろうか?
 
コメント
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