A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

HARDY SOUL/湯浅湾@六本木SuperDeluxe 2014.7.20(sun)

2014年07月22日 00時15分15秒 | 灰野敬二さんのこと


HARDY SOUL + 湯浅湾
Rock, Rhythm & Blues パーティ!!!!!


HARDY SOUL:灰野敬二(vo), 川口雅巳(g), 山崎怠雅(g), 宮崎理絵(b), 藤掛正隆(ds)
湯浅湾:湯浅学(vo/g), 牧野琢磨(g), 松村正人(b), 山口元輝(ds)
DJ: 37A



灰野のR&B/ゴスペル・バンドの3回目のライヴ。前2回を観て筆者が感じた通り、オールスタンディングの会場設定になった。コンクリートの床で、テーブルひとつないスーパーデラックスは些か殺風景だったが、ミラーボールが回る下のステージの両脇に豪華な生花が飾ってあり、ナイトクラブ風の雰囲気を醸し出している。

●湯浅湾

(写真の撮影・掲載については出演者・会場の許可を得ています。以下同)

幻の名盤解放同盟で知られる文筆家兼(音楽)評論家・湯浅学を中心とする4人組ロック・バンド。既に結成10年を超えるベテランだが、気まぐれな活動と少ないリリースで、存在自体「幻」と言えるかもしれない。何度か観たライヴでは、牧野の卓越したギタープレイと、フォークとサイケとアメリカンロックを融合した音楽性に感銘を受けると共に、何だか不思議な戸惑いを覚えたのも確か。見通しのいいスーパーデラックスのステージで観て、その理由が分かった気がした。



湯浅湾の歌は、突然段ボールを想わせる一見ナンセンスなものだが、ミミズとか豚とかケツの穴とか漁業王子とか露悪的で耳障りな語彙が飛び出す歌詞は、殆ど韻を踏んでいないのだ。普段歌を聴くとき意識することのない、いわば暗黙のルールである「韻・ライム」を敢えて破壊した言語感覚は、文学的というには直截的で、口語というより文語調で、親しげなようで他人行儀。流麗なギターと緩急あるグルーヴを奏でるバンド演奏と、ガクガクした棘のある歌詞が同時に左右の耳から震動として伝わり、音楽脳(右脳)と言語脳(左脳)の間に齟齬と陥穽が生じ、どっちつかずの空白に困惑するのではないか?そしてそれこそ湯浅湾が卓越した表現テロリストであるが故の魅力であろう。本人がどう思っているかは別にして、筆者にとっての湯浅湾は感受性の攪乱者なのである。




●HARDY SOUL


今回のライヴに関して灰野は「驚くようなステージになる」と語っていた。まあ、灰野のライヴはいつも蓋を開けるまで何が起るか判らないし、英語で歌い、R&B/ソウルのカヴァーをして、楽器を弾かずヴォーカルに専念するHARDY SOULの存在自体、未だに信じ難い気持ちがしない訳ではない。勿論灰野は真剣そのものだし、HARDY SOULに相当の熱意と自信をもっていることは、これまで2回のライヴで火を見るよりも明らか。なので、何かが起ることは確かだろう。今回山崎が愛用のSGではなく、ストラト型ギターを使用したことが、演奏の印象を大きく変化させた。SGの粘り気のあるファットな音では無く、シャープで線の細いシングルコイルの音は、川口のテレキャスターと音質的な区別がつきにくく、両者の隙間の多いプレイが、まるでキャプテン・ビーフハートのマジックバンド風の不定形なカオスを産み出した。スーデラのPAの音の抜けがいいこともあり、ブルース進行の曲が解体・分離され、姿の違うモノに作り替えられるような異化作用を及ぼした。



灰野は前回よりも格段にバンドを自家薬籠中の物にしており、メンバーの方を向いて身ぶりで指示を出したり、腕を広げて舞ったりする。灰野の動きがバンドに伝わり、表情豊かな演奏が引き出される。これ以上無理な程に高まった演奏をもっともっとというように両腕を上に挙げて煽り、際限なく燃え上がらせるスタイルは不失者でも見られる。ユニットが違っても灰野の信念は変わらない。しかし、HARDY SOULの演奏に濃厚なのは、これが間違いなく5人組のバンドである、ということである。灰野がフロントマンでありリーダーであるのは間違いないが、個々のプレイヤーは迷うこと無く自分自身の演奏をしている。相当量のスタジオ練習を通してバンドとしての信頼関係が築かれていることが伺える。



オーティス・レディング、リトル・リチャード、ジェームス・ブラウン、スモール・フェイセズなどのカヴァーを含む90分強のステージは、ウィルソン・ピケット「ミッドナイト・アワー」の見事な演奏で終了。聴き覚えのない曲もあったが、特に驚くような選曲はなかったと思っていたら、終演直後に読み上げられた演奏曲目を聞いて、我が耳を疑った。一曲目は何と「君が代」。君が代の元になった和歌が収められている古今和歌集が編纂された10世紀頃、その当時使われていたとされる英語での歌唱だという。つまり君が代の発祥と同時代の古い英語で歌った訳だ。日本国歌を敢て古い英語で歌った真意は?いつか本人の口から語られるのだろうか。

1.君が代
2.黒い花びら
3.アウト・オブ・フォーカス
4.昭和ブルース
5.ルシール
6.イン・マイ・ルーム
7.トライ・ア・リトル・テンダネス
8.ブーン・ブーン
9.ティン・ソルジャー
10.骨まで愛して
11.メンズ・メンズ・ワールド
12.ルイ・ルイ
13.シー・ザット・マイ・グレイヴ・イズ・ケプト・クリーン
アンコール:ミッドナイト・アワー

[7/22 13:20追記]
ドラびでお公式ブログ「灰野敬二 Hardy Soul」

真実の
ロックとR&Bは
ゴスペルだ

灰野によれば、ステージに飾ったふたつの花は、ジョニー・ウィンターと副島輝人に捧げたものだという。
コメント (1)
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