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アニメ、ファッション、ポップ・ミュージック…、クールジャパンカルチャーマガジン『81JAPAN』の夏号はでんぱ組.inc特集。創刊号がきゃりーぱみゅぱみゅ特集だったので、原宿&秋葉原という現代日本文化の陽の顔が出揃ったことになる。マイナスからのスタートが現在の快進撃に至ったでんぱ組の思想は、従来の日本的な下剋上とは次元の違う「恋と革命とデイアステージ運動理論」の有効性を証明している。宇宙を救うまでは志を捨てることのないこの6人組+もふくちゃんに学ぶべきことは限りなく大きい。
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⇒でんぱ組が雑誌でYOSHIKIと競演
⇒人気急上昇のでんぱ組.inc ふところ事情の変化にニンマリ
もし筆者が編集長なら、次号は現代日本文化の陰の顔(アーバンギャルド&キノコホテル)をフィーチャーするところだが、広告収入と発行部数に左右される大手出版社では夢のまた夢。最後の望みは金や権力と無関係なミニメディア、たとえばこのブログに掛っている。気を引き締めてばびゅんと行くしかなあーーーっい!!!といってもキノコ&水玉世界革命戦争論については昨日書き連ねたから、ちょっと一休みして、某音楽レビューサイトの過去記事再録でお茶を濁すことにしたい(死体・姿態・肢体)。付録として執筆を途中で断念し掲載に至らなかった幻のレビューを可能な限り再現してみた。
●Drop's『DAWN SIGNALS』
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まずはYouTubeで「赤のブルース」と検索してDrop'sのPVをご覧頂きたい。どっしりしたギターのリフにドスの効いた女性ヴォーカル。人生の酸いも甘いも知り尽くしたような姉御肌のハスキーヴォイスは、カルメンマキや金子マリといった70年代日本のロックの伝説的女性シンガーの香りがある。しかしこれが女子高生の演奏だと判る人はおるまい。
Drop'sは2009年に札幌で同じ高校に通う女子高生5人で結成された、俗にいう「けいおんガールズ」だが、当時コピーしたのはSuperflyだった。高校2年生の夏休みに作った初のオリジナル曲で挑んだ高校生バンドコンテストでグランプリを獲得し、一躍注目を集めた。うるさがたのロック薀蓄オヤジを驚愕させ、The Birthdayが所属するRockin' Bluesのレーベルから2011年、高校3年生の7月に、ミニアルバム『Drop's』でデビュー。リードトラック「赤のブルース」をはじめ、7曲全てがハイティーン女子とは信じがたい硬派のブルースロックだった。徐々に彼女たちの評判は北海道を超えて全国に知れ渡り、高校を卒業した2012年に北海道の夏フェス「Join Alive」に出演を果たし、東阪名ツアーを敢行。今年3月の2ndミニアルバム『LOOKING FOR』に続き、満を持してフルアルバム『DAWN SIGNALS』でメジャー・デビューを果たした。
いぶし銀のヴォーカルと泥臭くブルージーなサウンドは、ミッシェルガン・エレファントやThe Birthdayといった本格派R&Rのファンを唸らせる説得力に満ちている。花柄のワンピースが似合う小柄な中野ミホの書く歌詞の赤裸々な状況描写の中には、テン年代を生きる若者の焦燥と希望が溢れている。時代に流されない真の代弁者として、同世代から大きな支持を集めるに違いない。オヤジ世代は「イマドキの若者にも気骨のある連中がいるな」、と頼もしさに笑みを浮かべながら娘たちのブルースに身を任せるのが吉。(2013.9.9)
●スピッツ『小さな生き物』
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スピッツの3年ぶりの14thアルバム『小さな生き物』がリリースされた。今までジャケットには女性を起用してきたが、珍しく男性モデルのアートワークである。『空の飛び方』よろしくハンググライダーで飛び立とうとする少年像は、引退を表明した宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』へのオマージュか?スピッツにとっての新たな旅立ちを示唆するのかもしれない。
先行シングルの「さらさら」でも明らかな通り、アルバム全体には特に新機軸への挑戦はない。昔ながらのマサムネ節が貫かれている。デビュー作『ヒバリのこころ』以来スピッツの歌には「空」「宇宙」「鳥」など「ハネモノ」が溢れている。夢占いでは「空を飛ぶ夢」のキーワードは、永遠の少年/自由な冒険心/性的欲求である。スピッツのシンボル・カラーは間違いなく「青」であり、人生で最も青い季節は「思春期=青春」に他ならない。すなわち、スピッツとは青春を生きる少年の自由な空想力と欲求不満の苦悩を描き続けるバンドと言える。草野マサムネのナイーヴな感性は永遠の少年そのものであり、それは45歳の中年になった今も変わることは無い。
描かれた13篇のショート・ストーリーは旅立ちの予感に満ちている。刹那的な逃避行ではなく、自由で未知の世界でのあなたとの出会いを信じて最果てを目指す旅路。「けものたちは故郷をめざす」(安部公房)、「青年は荒野をめざす」(五木寛之)と人はいつも何かを求めて旅に出た。さてスピッツの4人がめざす先はいずこ? その答えを永遠に探す旅なのかもしれない。(2013.10.8)
●ハナエ『十戒クイズ』
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21世紀初頭の日本のポップの流れは相対性理論以前/以降に区分できる。無表情なヴォーカル、ポップ過ぎて毒のないサウンド、無意味な言葉が韻を踏む歌詞、匿名性を武器にしたメディア戦略がテン年代のJ-POPに与えた影響は大きい。特に彼らのあとに登場した女性メインのロック・バンドは少なからず影響を受けている筈だ。ただし、模倣するのは簡単だが、個性をアピールするのは逆に困難を伴うことも確かである。
昨年6月に相対性理論を離脱した真部脩一がプロデュースを手掛ける19歳の美少女シンガーがハナエ。相対性理論の音楽面の要だった真部だけに、明らかにポスト相対性理論的なサウンドをクリエイトしているが、『十戒クイズ』とタイトルされたデビュー・アルバムには、それだけに収まらないハナエ本人の謎めいた魅力が横溢している。福岡出身のハナエは、12歳で宅録をはじめ、13歳の時にレコード会社に送ったデモテープが認められ、デビューに至った若き才能。可愛いだけじゃなく退廃的なものを好み、レトロな少女文化に憧れるという。全曲真部の作詞作曲だが、クールなエレクトロ・ビートに乗せて少女特有のふわふわした不安定さを歌うハナエのウィスパーヴォイスは、例えばきゃりーぱみゅぱみゅのように、曲の魅力を過剰に増幅するオリジナリティに満ちている。聖書に因むアルバムタイトルや神様、UFO、神聖ローマ、ジーザスが飛び交う不可思議ワールドが心地よい。(2013.12.4)
●ふぇのたす『胸キュン’14』
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テン年代という括りも古臭くなるほど、現在進行形の日本のポップスの変遷は激しい。見逃せないのはやはりアイドル・シーンの活況だろう。ロック、テクノ、クラブ・ミュージック、パンク、メタル、ラップ等あらゆるジャンルを呑みこむアイドル音楽には、90年代のバンド・ブームや渋谷系、アングラ音楽出身のベテラン・ミュージシャンに加え、ユニークな若手音楽家が多数参画し、音楽的才能を発揮している。
東京大学哲学科卒のヤマモトショウも寺嶋由芙や南波志帆、タルトタタンなど、アイドルを含む作詞・作曲・プロデュースで頭角を現す新進音楽家である。彼が率いる3人組音楽グループがふぇのたす(Phenotas)。ロリータ・ヴォイスの女性シンガーのミコ、デジタルドラムの澤"sweets"ミキヒコとヤマモトショウ(g,syn)が鳴らすサウンドは、スウィートでブライトなエレクトロポップ。軽快なダンスビートと「すし」や「ケーキ」をテーマにしたキュートな歌には、悩みなんて忘れてしまうほど、圧倒的にポジティヴなエナジーが溢れている。(2014.5.22)
前進とは
過去を遡ることで
未来を直すこと
【特別付録】本邦初公開!幻のレビュー!
●八代亜紀『夢の夜 八代亜紀 ライヴ・イン・ニューヨーク』
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演歌の女王がジャズを歌う!と聞くと如何にもやらせっぽい、テレビの歌番組の定番ネタのようだが、女王が歌手を志したきっかけがジュリー・ロンドンだったと知れば、妙に納得してしまうのである。
カリフォルニアの田舎町で育ち、15歳でロサンゼルスに移り、エレベーター・ガールをしながら女優・歌手としてキャリアをスタートさせたジュリー。熊本県八代市に育ちバスガイドになったが、15歳で父親の反対を押し切り上京、銀座のクラブ歌手としてプロ・シンガーを目指した八代。ジュリーの「スモーキーボイス」と八代のハスキーボイス。驚くほど共通点の多い二人の接点は「ジャズ」であった。2012年、小西康陽のプロデュースでリリースした「夜のアルバム」で、自らのルーツであるスタンダードや流行歌をジャズ・アレンジで披露。憂いのある少女風のジャケット写真も印象的な好企画だった。このアルバムは世界75か国で配信され、八代は歌手活動42年目にして世界デビューを果たすこととなった。
その評判がアメリカに届き実現したニューヨークの名門ジャズクラブ、バードランドでのワンマン公演のフル・ステージを収録したのが本作である。その模様はテレビでも報じられたので、観た方もいるだろう。NYの凄腕ジャズコンボとのリハーサルでは中々(ここで断筆)(2013.9.5)
*断筆の理由:寝落ち