
Photo by Peter Gannushkin
パスカル・ニゲンケンペル
Pascal Niggenkemper
ルック・ウィズ・ザイン・イアーズ(汝の耳で見よ)
Look With Thine Ears』
Clean Feed CF324CD
Pascal Niggenkemper (b)
1 Look With Thine Ears
2 This Shall Not Be Revoked
3 If You Will Marry, Make Your Love To Me
4 Men Of Stone
5 At Fortune's Alms
6 Let Me Kiss Your Hand
7 Let Me Wipe It First, It Smells Of Mortality
8 Unpublished Virtues Of The Earth
9 Sharper Than A Serpent's Tooth
10 Be This Perpetual
11 Blow Wind And Crack Your Cheeks
12 Let The Fork Invade The Region Of My Heart
13 Let Me Still Remain The True Blank Of Thine Eye
Music By Pascal Niggenkemper
Recorded & Mixed at 6D Studio, Brooklyn, NY in 2014.
Mastered at Park West Studios, Brooklyn, NY.
Produced By Pascal Niggenkemper
Executive Production By Pedro Costa
Liner Notes - Stuart Broomer
Mastered By Jim Clouse
Photography By Natasha Lébedeva

21世紀のフューチャリストによるウッドベースの騒音芸術
ドイツに生まれ、ケルンでクラシックとジャズとダブルベースを学んだパスカル・ニゲンケンペルは、フィンランドのミッコ・イナーネン(sax)アイルランドのパク・ハンアル(g)と同様に、創造性の磁力に惹かれ、2005年に奨学金でニューヨークに移り、それ以来ブルックリンで活動してきた。
NYでは3つのトリオ、PNTrio、Wanderlust、upcoming hurricane、ヨーロッパではセプテットのVision7、ダブル・トリオの'le 7eme continent'を率い、コ・リーダー、サイドメンとして幾つものグループに参加する彼は、現在の即興音楽シーンで特に高い信頼を集めるベーシストのひとりである。
彼は2013年11月仏ストラスブールのJazzdor Festivalで、ベースとプリパレーションのための独奏曲『ルック・ウィズ・ザイン・イアーズ』を初演した。その後ベルリン、チューリッヒ、ニューヨーク、フィラデルフィアで演奏されたこの曲を、2014年にブルックリンでスタジオ録音したのが、初のソロ・アルバムの本作である。
全編を通じて演奏されるのは、ニゲンケンペルが5年前から試みてきた"プリペアード"・ベースである。ウッドベースの木製のボディと金属の弦の共振に、異質なオブジェを加えて変容させて得られる物音的音響は、べースという大地に、未知の物体の種を蒔いて、ニゲンケンペルの卓越したテクニックで耕した結果、たわわに実った芳醇な果実に他ならない。実際にどのように演奏されたのかは資料が無くて分からないが、楽器全体が音響発生機に生まれ変わり、一聴してベースとは信じられない不思議なサウンドを発している。
100年前にイタリアの未来派が提唱した『騒音芸術』を思わせる有機的なノイズ。ルイジ・ルッソロが設計した騒音楽器「イントナルモーリ」が、ウッドベースと同じ木と金属で出来ていたことを想起してみよう。アルバム・タイトルをはじめ、すべての楽曲タイトルが、シェークスピアの『リア王』のセリフから採られている事実を考えあわせると、ウッドベースを担いだ21世紀のフューチャリストは、実は古風なロマンティストなのかもしれない。(剛田武)
未来主義
低音主義
騒音主義
▼三人の低音主義者とひとりの最大主義者
Chris Pitsiokos, Pascal Niggenkemper, Nicolas Letman-Burtinovic, Sean Ali 1+2+3 Series #27 12/13/14