ニュー・ジャズ・シンジケイトは、1974年、初夏、十数名の想像をめざす個人と法政大学学生連盟・事業委員会のメンバーによって設立された。ニュー・ジャズ・シンジケイトの目的は、それら総ての個性間における限定されない相互交流を通して、創造的な音楽の発展のための「場」を提供し、維持することである。
ライナーノーツにそう書かれたLPを購入したのは今から32年前、大学の生協で開催された中古レコード市であった。「ニュー・ジャズ・シンジケイト/三枚組・自主制作レコード」と書いてあり、3枚セットのうちの1枚でしかないことに、何となく胸に風穴が空いたような虚しい気分がした。当時良くライヴを観に行っていた法政大学学生会館大ホールで1977年に行われた4回のコンサートの実況録音。総勢21人からなるフリージャズ・オーケストラの演奏は、調子ハズレのアンサンブルとブチ切れた管楽器のソロに満ちており、同時に購入したESPの60年代フリージャズ諸作に聴き劣りしない自由な感性にに酔ったものだ。
メンバーのリストに鎌田雄一の名を見つけて、時々参加していた即興道場を開催していた荻窪グッドマンの店長その人であることを知った。いや、前から鎌田がニュージャズ・シンジケート(以下NJS)のメンバーであることは知っていたのかもしれない。ある日の即興道場で鎌田が「井上先生」と紹介した初老のサックス奏者、井上敬三の名もリストにある。前年法政学館大ホールでペーター・ブロッツマン、近藤等則とのトリオで観たドラマー、豊住芳三郎もゲスト参加している。
●『ニュー・ジャズ・シンジケイト3/フォワード・サスペンス』
\500/1983.6.21/東京大学駒場生協
New Jazz Syndicate - Forward Suspense
Label:Not On Label (New Jazz Syndicate Self-released) - New Jazz Syndicate 3
Format:Vinyl, LP, Album
Country:Japan
Released:1978
Genre:Jazz
Style:Contemporary Jazz, Free Improvisation
A I. 男の二つの影
a) ハードでなかったら生きていられない
b) やさしくなかったら生きる資格がない
II. 東京'77
B I. フォワード・サスペンス
II. 戦士廟に捧げる円舞曲
Recorded at Hosei University Student Hall, Tokyo; November 29, December 10 and 13, 1977
それ以来しばらくNJSの名前を聴くことはなかったが、数年前、庄田次郎のライヴを観る機会があり、顔にペイントし腰簑でポケット・トランペットを吹き捲くる姿に興味を覚えて調べたところ、庄田を中心に若いプレイヤーを集めて21世紀もNJS名義で活動していることを知った。惜しくも見逃したが、昨年12月にはNJS40周年ライヴも開催された。
3週間前に老舗の中古レコ屋の日本のジャズ・コーナーでNJSのLPを発見。しかも上記三枚組とは別の4作目だから驚いた。店員の話では「ニュージャズなど聴きそうにない普通のモダン・ジャズ・ファンから買い取った中に何故か1枚混ざっていた」とのこと。32年ぶりのNJSとの遭遇に気分がアガる。
●『ニュー・ジャズ・シンジケイト4/エターナル・リカーレンス(永遠回帰)』
\2000/2015.9.20/神保町・富士レコード社
New Jazz Syndicate - The Eternal Recurrence
Label:Not On Label (New Jazz Syndicate Self-released) - New Jazz Syndicate 4
Format:Vinyl, LP, Album
Country:Japan
Released:1980
Genre:Jazz
Style:Free Improvisation
A1 The Eternal Recurrence Part I
B1 The Eternal Recurrence Part II
Live At Hosei University Student Hall; January 11, 1980. Volume One
残る2枚に果たして命あるうちに出会えるのかどうか?そんなことは分からないし別にどうでもいい。
強調したいのは、80年代以降、パンク/ニューウェイヴ/アングラロック/実験映画の拠点となり伝説的に語られる法政大学学生会館が、70年代の一時期は新たなジャズの実験と創造の場でもあったという事実である。
永劫に
創造の場所
再起せよ