
明天音乐节 TOMORROW FESTIVALの主催者は会場となったライヴハウス「OTC-LOFT」を経営するとともに、中国各地で音楽フェスやコンサートを企画している。OTC-LOFTでは2011年から毎年10月に約20日間のジャズフェス<THE OCT-LOFT JAZZ FESTIVAL>を開催している。毎年ヨーロッパ各地を訪れ自らの目で観て出演ミュージシャンを選ぶという。

ラインナップは中国はもちろん、ロシアを含むヨーロッパ中心。いわゆるメインストリーム・ジャズではなく、主催者が「観せたい」「紹介したい」と思うアーティストをブッキングし続けて、5年経った現在はヨーロッパでも良く知られる名物フェスになった。日本からは2015年にペーター・ブロッツマン・トリオのドラマーとして豊住芳三郎が、イタリアのミュージシャンとのデュオで秋山徹次が出演している。

その姿勢をより幅広い音楽に拡大したTOMORROW FESTIVAL2016の最終日。夕方突然のスコールに襲われた深センの日曜日の夜は、灰野敬二のソロ演奏と、複数の出演者によるジャムセッションが行われた。会場ロビーには出演アーティストのCDに加えて、フェスティバルの公式Tシャツやポスター/パンフレット、関連書籍やデザイングッズが並んでいる。前日同様に若い客層が多く、賑やかな活気に満ちている。

演出 Concert
●灰野敬二 Keiji Haino

灰野敬二は昨年12月に広州の美術館でパーカッションソロライヴを行ったが、エレクトリックのソロ公演は中国本土では初めて。深いリバーヴに包まれたヴォーカルに始まり、エレクリックギター、エアシンセ、発振器、ドラムマシーンなど様々な機材を駆使して展開される灰野ワールドに、最初は歓声を挙げていた観客も徐々に静まり息を潜めて聴き入っている。スプリングコイルとヴォイスパフォーマンスの爆音に続き慈しむような静謐なギターフレーズで幕を閉じる。ため息をつくような間が数秒あって、突如わき上がる拍手。前夜のファウストのロックコンサート風の歓声とは明らかに異なる反応は、表現の世界観の違いが中国のオーディエンスに確かに伝わったことの証であった。
●明天即兴 Tomorrow Improvisation Unit

faUSt:Jean Hervé Péron (b,vo), Werner "Zappi" Diermaier (ds), Maxime Manac'h (key, Hardy-gurdy, electronics)/Oliver Ackermann (g)/Keiji Haino (g, vo, electronics)/Mamer (b)/Zhang Dong (perc)/Li Jianhong (g)
フェスの最後を飾るのは、ファウストのジャン・エルヴェ・ペロン、ヴェルナー・ザッピ・ディーマイヤー、マキシム・マナック、エフェクターのレクチャーの講師としてフェスに参加したアメリカのオリヴァー・アッカーマン、中国の実験演奏家、马木尔(マーマー),张东(ツァン・ドン),李剑鸿(リ・ジョンフン)、そして灰野の総勢8名による即興セッション。灰野の指揮で繰り広げられる即興演奏は、集団即興にありがちなカオスではなく、場面ごとに表情が変化し、意外性に満ちた創造的な音楽劇となった。個人的には初めて観る中国のミュージシャンの独特の演奏スタイルが興味深かった。

世界各地のエクストリームな音楽が中国の地で交歓するTOMORROW FESTIVALに相応しいフィナーレだった。
明日には
自分の音が
響くはず

Tomorrow Improvisation Unit:
(L to R) Mamer, Maxime Manac'h, Oliver Ackermann, Li Jianhong, Werner "Zappi" Diermaier, Jean Hervé Péron, Keiji Haino