サン・ラ・アーケストラの音楽監督マーシャル・アレン Marshall Belford Allen は1924年5月25日に地球に到着した(普通にいえば誕生日だが、アーケストラは宇宙から来た楽団である)。人間歴でいえば92歳になった不偏不党の変態音楽家にインタビューさせていただくまでのちょっと恥ずかしいエピソードを晒すことで、我が音楽歴に師として輝くマーシャル・アレン師の92歳のご到着日(誕生日)のささやかなプレゼントとさせていただきたい。
5月4日新木場STUDIOCOASTで開催された「Worldwide Sessions 2016」に出演するため来日するサン・ラ・アーケストラを率いるマーシャル・アレン師にインタビューをすることになった。筆者が寄稿している音楽サイト「JazzTokyo」に取材依頼が来て筆者に白羽の矢が立った、というより自己アピールで勝ち取ったインタビュー権である。2月頃にインタビューできることになったときは、マイフェイバリットサックスプレイヤーに会えると思っただけでワクワクしたが、日にちが近づくにつれて不安になった。好き好き大好きであることは間違いないが、実はサン・ラや彼のアーケストラのメンバーのバイオグラフィ的なことはあまり知らなかったのである。
2週間前になって慌てて図書館で『サン・ラー伝~土星から来た大音楽家』 ジョン・F・スウェッド (著), 湯浅 恵子 (翻訳) を借りてきたが、403ページの大著である上に、仕事やライヴで忙しい身の上、ほとんど読むことは叶わない。インタビュー相手はサン・ラじゃないから、伝記を読む必要はなかろう、と開き直って、ネットで調べたマーシャル・アレン師の生い立ちをもとに、質問状を書き上げた。しかしなんと言っても相手は92歳の老人、しかも60余年間、自分は宇宙人だと主張し続けてる頑固者である。社会的コミュニケーション能力の欠如した奇人変人の類いではないとの保証はない。
とにかく当たって砕けろと、Jazz Right Nowのパートナー齊藤聡氏にカメラマンとして同行いただき、新木場STUDIOCOASTの楽屋に乗り込んだのである。事前に連絡が来た取材時間は30分間。通訳さんを間に話すと時間が無くなりそうなので、頼りない英語で直接話すことにした。楽屋は広いがメンバー13人とスタッフで騒がしい。楽屋の外の通路にあるスタッフ用の4人掛けのミーティングテーブルでインタビューすることになった。マーシャル師は90歳を超えているとは思えない、しっかりした話し振りで、こちらの質問を適当に無視して独り語りのように饒舌に話してくれた。
Photo by Akira Saito
用意してきた質問の半分以上は聞けなかったが、奇しくも「事前の知識や準備は、本番では役に立たない」とマーシャル師が話してくれたそのままの状況が、筆者の心を震えさせたことは事実である。インタビュー終了後に持参したレコードジャケットにサインをしてもらったが、その文字は地球外生命体が残したナスカの地上絵にも似た不思議なオーラに輝いていた。
インタビュー記事は、6月1日更新のJazzTokyo No.218に掲載予定。
▼103分に亘る最新ライヴ映像公開!
Sun Ra Arkestra Boiler Room London Live Set
マーシャル師
我が人生の
先達に
Marshall Allenインタビュー質問状 2016.5.4 wed 新木場 STUDIOCOAST
1924年5月25日ケンタッキー州ルイスビル生まれ、Marshall Belford Allen
as,fl,piccolo,oboe,EVI(Electric Valve Instrument)
母が歌手で幼い頃から音楽的環境に恵まれていた。10歳のときクラリネットを始める。
1. 幼少期の音楽体験
2. ジャズを好きになったきっかけ、最初のヒーローは?
第二次大戦中18歳のとき「92nd Infantry Division:第92歩兵師団)に所属し、17th Division Special Sevice Bandでクラリネットとアルトサックスを演奏する。フランスのパリに駐在中にArt Simmons pとDon Byas saxと共演。また、40年代後半James Moodyとツアーしレコーディングにも参加。名誉除隊後、パリ音楽院 Paris Conservatory of Music で学ぶ。
3. パリ(Army, Art Simmons, James Moody)時代のレパートリーは?
1951年米国に帰国しシカゴを拠点に自分のバンドを率いてクラブやダンスホールで活動。同時に作曲やアレンジも行う。
4. シカゴ時代には地元のシーン(のちのAACM Association for the Advancement of Creative Musicians, Art Ensemble Of Chicago)との関連はありましたか?
1956年にSun Raと出会い、彼の音楽コスモロジーの熱心な学徒となる。
1958年Sun Ra Arkestraに参加、それ以来サン・ラのリードセクションのリーダーとなる。
5. Sun Ra(ハーマン・プール・ブラント/ソニー・ブラント、1914年5月22日-1993年5月30日、アラバマ州バーミンガム生)との出会い
6. Sun Raのどこに惹かれたのか?
7. John GilmoreやPat Patrick 等他のメンバーについて
●Paul Bley Quintet - Barrage 1965
Paul Bley p, Eddie Gomez b, Milford Graves ds, Dewey Johnson tp, MA as
1964-10-15 NYC
7. Paul Bley 、Milford Gravesなどとの出会い、当時のNYシーンの印象は?
8. Sun Raとは別のソロ活動は他にもしていたのか?
サックスのPyrotechnic effectを習得「"wanted to play on a broader sound basis rather than on chords" (1971 interview with Tam Fiofori cited in). コードに沿うのではなくもっと広いサウンドのプレイをしたかった」
9. 手をキーの上をスライドする独自のプレイを習得したのはいつ頃?きっかけは?
10. E.V.I.をプレイしだしたのはいつ頃?きっかけは?
1960年代 Olatunji and his Drums of Passionと演奏、アフリカの弦楽器KORAを演奏、ワールドミュージックの先駆けとなる
11. KORAをプレイし始めたのは?きっかけは?
12. Art Ensemble Of Chicagoもアフリカの楽器を使っていたが、影響/交流はあったか?
評論家Scott Yanowは「別次元のJohnny Hodges」のようにプレイする、と評した
Sun Ra1993とJohn Gilmore1995の死後、Arkestraを率いて2枚(*要確認)のアルバムをリリース。
2004年5月NY第9回Vision Festivalで80歳記念コンサートを開催
2008年NY Sullivan Hallで生誕記念コンサート開催
Sun Raの200作超のレコーディングに参加するとともに、NRBQ、Phish, Sonic Youth, Medeski, Martin & Wood等の幅広いグループのコンサートやレコーディングに参加。
13. Sun Raの影響は今の若いジャズ、ジャムバンド、クラブミュージックに大きいが、どう思いますか?
14. 50~80年代の活動中にSun Raの音楽がこれほど大きな影響をもたらすとは思っていましたか?
15. Sun Raの何が最も大きな魅力だと思いますか?
●Surrender To The Air - s/t 1998
Trey Anastasio g(Phish)によるフリージャズアンサンブル。20世紀に於けるサン・ラの重要性を問い直す目的で結成された。MA, Damon Choice vib, Michael Ray tp(Sun Ra Arkestra), John Medeski key, Marc Ribot g, 1996-4 1回限りのコンサートのライヴ録音
●Terry Adams (NRBQ p Louisville, Kentucky August 14, 1948) & Marshall Allen - Ten by Two 2005 (Toronto Downtown Jazz Festival, June 27, 1997. /Brooklyn Museum, August 18, 1996).
●Medeski, Martin & Wood - The Dropper 2000
16. 90年代半ば:Surrender To The Air(Phish)、Terry Adams (NRBQ)、Medeski, Martin & Wood、Sonic Youthなどオルタナ系アーティストとコラボをするが、それ以前に異ジャンルのコラボはあったか?
●Lou Grassi's PoBand Joseph Jarman, John Tchicaiとも共演
Lou Grassi(ds Summit, NJ,1947生)のプロジェクト 1999,2000に共演。
●Konstrukt
Variation Of The Day 2011 2010-9-30 Istanbul
Live at San'Anna Arresi Jazz Festival 2014 2013-8-30
●Caribou Vibration Orchestra 2011
All Tomorrow's Parties Minehead England クラブミュージック
●Weasel Walter,Elliot Levin, Denis Beuret, 2012 Philadelphia
●Marshall Allen & The Heliocentrics 2015 Worldwide Awards ジャズファンク
17. 2000年代以降共演している新世代ミュージシャンThe Heliocentrics(2015)、 Konstrukt(2010,13)、Caribou Vibration Orchestra(2011)、Weasel Walter(2012)について
18. Robert Glaspar, Flying Lotus, Kamasi Washingtonなどクラブミュージックの影響を受けたアーティストについて。
●来日歴
1988年8月 Live Under The Sky、新宿ピットイン
2002年9月 よみうりランド True Peoples Celebration
Medeski, Martin & Wood , フアナ・モリナ、こだま和文、Voredoms、レイハラカミ、Little Tempo、山本精一&勝井裕二
2014年7月4、5日ブルーノート東京:Sun Ra生誕100周年
19. 日本の音楽について、関心はありますか?
20. 日本のジャズ、フリージャズについて知っていますか?
21. サン・ラ・アーケストラに影響を受けた生活向上委員会や渋さ知らズを知っていますか?
22. 渋さ知らズと共演してみたいですか?
●Cinema Soloriens - Cult of Saint Margaret 2015
1994年に映像作家/音楽家のJames Harrar tsとMAにより結成されたマルチメディアプロジェクト。Rogier Smal dsを加えたコアトリオによるElectric Jazz, Rock, Classical, Folk, Techno のハイブリッドユニット。Daevid Allen, Arthur Doyle, Chris Cutler & Geoff Leigh (Henary Cow, Artaud Beats), 808 Stateのメンバー 等
24. 1994年に映像作家/音楽家のJames Harrarと結成したCinema Soloriens について
●The Celestrial Communication Orchestra - H.Con.Res.57 / Treasure Box 2003
Alan Silva bが1969年から率いる即興オーケストラ。Alan Silva 指揮,Syn, William Parker b, Bobby Few p, Joseph Bowie tb, Baikida Carrol tp, 沖至 tp etc. 2001-5-24,27 Poschiavo, Switzerland録音
●Milford Graves / Marshall Allen / Henry Grimes at a Benefit Concert for The Under_Line 2012-12-4
●The Magic Science Quartet (MA, Henry Grimes, Avreeayl Ra, Cornelia Muller) 2015-9-19 Poschiavo, Switzerland
25. Arkestra 以外の現在の活動は? Henry Grimes, Milford Graves, Alan Silvaなど?
●Sun Ra All Stars
Sun Ra, Archie Shepp, Don Cherry, Lester Bowie, John Gilmore, Don Moye, Richard Davis, Clliford Jarvis etc1983-10-27~11-1 ヨーロッパツアー
●The Sensational Guitars Of Dan & Dale
Sun RaとBlues Projectのメンバーによる匿名(Pseudonym)バンド。廉価版レーベルDiplomat Recordsより60年代にヒット曲のインストカヴァーLPを数枚リリース。Andy Kulberg, Danny Kalb, Steve Katz, Sun Ra, John Gilmore, Pat Patrick etc.
26. 最後の質問:長生きの秘訣は?