グンジョーガクレヨン「グンジョーガクレヨン」リリースライブ
開場 19:00 / 開演 19:30
料金 予約3000円 / 当日3500円 (ドリンク別)
ポスト・パンク、インダストリアル、エレクトロ、ノイズ、ジャズ……。すべての言辞を置き去りにして疾走する、硬質な音群……。
今、最も創造的な場として、静かに浸透しつつあるエクスペリメンタル・ミュージック・シーン。そのシーンの中に異形のアイコンとして君臨する、組原正(g)の即興の強度。結成37年にして強力に甦る、グンジョーガクレヨンの新たな次元。
日本のフリー・フォームなノイズ・ミュージックの嚆矢グンジョーガクレヨン、22年ぶりのニュー・アルバム『グンジョーガクレヨン』の発売記念ライヴ。
出演:
Gunjogacrayon:宮川篤(ds)、組原正(g)、前田隆(b)、中尾勘二(sax, etc.)
INCAPACITANTS:T.美川 (electronics, vo), コサカイフミオ (electronics, vo)
.es:橋本孝之(alto sax, guitar)+ sara(piano, others)
六本木SuperDeluxeにて筆者の地下音楽四天王のうち三組がそろい踏みの神イベ。とは言っても当然ながら筆者を喜ばす為に集められた訳ではなく、日本大衆芸能の末裔たる軽音楽に分類されながらも、音も精神も存在も耐えられない重さを持つ闇音響の地下水流が、何の気紛れか六本木の地下に存する<超絶豪華>倶楽部に流れ込み、冠水したトリプル極端音楽の人工災害に対しては、トリプル台風の自然災害と違って注意を促す警戒警報は発令されなかった。
この三者の交歓日記をを筆者のブログより紐解くと、
① 2012年7月21日に南池袋ミュージック・オルグで開催された組原正『inkuf』レコ発ライヴで、組原+T.美川+前田隆、組原+宮川篤志+中尾勘二の二つのセッション。
⇒組原正 レコ発@南池袋 ミュージック・オルグ 2012.7.21 (sat)
② 2012年9月1日大坂ギャラリーノマル、9月2日難波ベアーズで.esとT.美川の共演ライヴが開催(その音源は香港のRe-RecordsからCDリリースされた)。
⇒【特集 .es(ドットエス)】Part 1~T. Mikawa & .es 『September 2012』ディスク・レビュー
③ 2013年7月7日八丁堀七針で組原とT.美川がデュオ共演。
⇒FUMICS PYOSHIFUMIX 展:組原正+美川俊治/三浦モトム+小川直人@八丁堀 七針 2013.7.7(sun)
④ 2013年12月14日新大久保Earthdomに於ける.es [dotes] LIVE IN TOKYO 2013東京ツアーで.esとインキャパシタンツが対バン。
⇒.es(ドットエス)/インキャパシタンツ/魔術の庭@新大久保Earthdom 2013.12.14(sat)
⑤ 翌日12月15日池ノ上GARI GARIではT.美川 & .esで出演、コサカイフミオのTangerine Dream Syndicateも対バンで出演。
⇒T.美川+.es(ドットエス)/Tangerine Dream Syndicate/浦邊雅祥/冷泉@池ノ上GARI GARI 2013.12.15(sun)
⑥ 2014年7月23日阿佐ヶ谷Yellow Visionにてグンジョーガクレヨン(組原、前田)+橋本孝之の共演。
⇒グンジョーガクレヨン+橋本孝之(.es)@阿佐ヶ谷Yellow Vision 2014.7.23(wed)
⑦ 2015年9月3日西麻布BULLET'Sにて橋本+コサカイがデュオ共演。
⇒橋本孝之/コサカイフミオ/ふぅちくぅち/KO.DO.NA&人魂@西麻布BULLET'S 2015.9.3(thu)
こうした野合の如き蜜月期間を経て産み落とされたのがグンジョーガクレヨン22年ぶりの新作『Gunjogacrayon』であったが、蓋を開けてみれば橋本孝之唯一人が羊の皮を被った野獣三匹の責め苦に恍惚と喘ぐ結果となったのである。長らく不適切なほど親密な関係にあったにも拘らず、証拠となる音盤を残せなかったセフレ(Session Friends)を懐柔する慰みものとして今宵の六本木の緊縛の夜が企画されたわけではなかろうが、体液のように生暖かい湿り気を帯びた地下音楽の深みに嵌まり込むには絶好の真夏の夜の夢であった。
⇒【DISC REVIEW】"脱ロック37年"グンジョーガクレヨンの新作『Gunjogacrayon』
⇒JazzTokyo CD/DVD Disks #1311 『グンジョーガクレヨン / Gunjogacrayon』
●.es:橋本孝之(alto sax, harmonica)+ sara(piano)
(ライヴ写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
.esのパフォーマンスは昨年あたりから東京でも年に何度か観られるようになった。そのたびに印象が異なるが、演奏する場に応じて変幻するのではなく、場をも演奏に取り込んでしまう食虫植物並みの能力を持つことに気がつく。これまで観た会場の中では最も広いSuperDeluxeでは、No Mic/No PAの完全アコースティック生演奏。ハーモニカのリップノイズ、掌で撫で回す鍵盤のスクラッチ、楽器を持ち変える直前の躊躇にも似た間隙、途切れた音を置き去りに飛び去る時間の風速。聴こえない音も聴こえる筈の無い音も聴いてはいけない音も聴こえさせられてしまう。背後で鈴をつけた猫が徘徊しているのか、と思ったらsaraが仕込んだ弦の振動の仕業だった。
●INCAPACITANTS:T.美川 (electronics, vo), コサカイフミオ (electronics, vo)
ピアノを片付けた空間がぽっかり空いたフロアの奥に、巨人と小人の二人の男子が最初は慎ましやかに、徐々に昂奮して野蛮に、さらに持ち場を離れて暴れ太鼓を叩くが如し。その間音量を上げたり、不協和音も協和音もない二重唱を高めたり、電圧を浪費する電子機器を追加したりといった素振りはない。最初の5分で機能することを諦めた聴覚を視覚が支配して、脳内シナプスを在り得ないほど刺激し続ける。人間の知覚容量の限界を極める音響版ロールシャッハ・テスト。客席前のスペースをフル活用して狼藉を見せつけた挙句の機材テーブル破壊は、星一徹のちゃぶ台返し以来のローテクノロジースーサイドのエクスタシーだった。
●Gunjogacrayon:宮川篤(ds)、組原正(g)、前田隆(b)、中尾勘二(tb)+橋本孝之(sax)
RIO五輪のシンクロナイズドスイミングや新体操とシンクロした組原のメイキャップは、奇を衒ったものではなく、65年の月日を重ねた年輪から滲み出る樹液の馨しさ。ソロギターが電気系統の断線で中断された真空地帯に生じた聴き手の飢餓状態を、ラズウェル・ラッド五重奏団を彷彿させるクインテットは、如何様な前衛ジャズや現代音楽とも断絶した白熱時代の集団投射を提示するように思われた。しかし此処にあるのは唯只管音を出すことでしかお互いの存在を知覚し得ない片輪者の鳩首協議ではない。中でも宮川の60年代山下洋輔トリオの森山威男を思わせる容赦のないドラミングは、ポストパンク世代に分類されて居心地悪そうな面持ちのグンジョーガクレヨンの本質を垣間見せる。アルバムに続きゲスト参加の橋本のサックスと新加入の中尾勘二のトロンボーンの非楽器感が際立つ。両脇から駆け込もうと触手を伸ばす前田のベースと組原のギターも迂闊に手を出さない。そんなやり取りは勿論のこと筆者の後付け妄想に過ぎない。
グンジョーガクレヨンレコ発ライブ “Gunjogacrayon” Release Live[2016.8.28 9:52追加]
三者三様
録らぬ音楽
皮算用
(Facebook Sara Dotesさんの投稿より転載)