これまで何度か採り上げてきたトルコのオーガニックジャズコンボ『KONSTRUKT(コンストラクト)』が益々精力的に活動している。2016年頭にドラムとベースがメンバーチェンジし、今まで以上にサイケデリックで拡張的な世界を志向するようになった。エレクトロニクスやドラムマシンを使ったダークなサウンドも研究し始めた。サーストン・ムーアにアプローチしたところ、サーストンはコンストラクトのレコードをコレクションしていたらしく意気投合し、今年6月にイスタンブールでコラボレーションした。これまで共演したペーター・ブロッツマン、エヴァン・パーカー、ジョー・マクフィー、坂田明、ウィリアム・パーカー等とは明らかに異質の非ジャズ実験音楽家が、トルコ有機共同体とどんな交歓模様を描き出したのか興味深い。
秋にはUKツアー、ヨーロッパツアーも予定され、活動の幅を広げるコンストラクトの新作が同時リリースされた。録音時期・形態はそれぞれ異なるが、即興音楽をベースに活動する彼らの現在進行形のオーガニックミュージックの奥深さを味わうことが出来る。
●Konstrukt feat. Peter Brötzmann, Hüseyin Ertunç, Doğan Doğusel, Barlas Tan Özemek – Eklisia Sunday
(Holidays Records – HOL-095 2016)
トルコの海辺の街グムスルクの教会で2011年5月15日に行われたセッションを収めたライヴ盤。2013年にポーランドのレーベルからリリースされたCDのアナログ化。サックスのヘラクレス、ペーター・ブロッツマン、コンストラクトの4人、トルコの音楽家3人総勢8人による集団即興は、エーゲ海の風光明媚な環境の中で、リラックスし互いの生命感を讃え合う色彩溢れるポジティブワールドを展開している。
●Konstrukt feat. Graham Massey & David Andrew McLean – Live At Islington Mill
(Astral Spirits – AS031, Monofonus Press – MF124 2016)
2015年8月13日イギリス、マンチェスターのイズリントン・ミルズでのライヴ録音、カセットのみのリリース。コラボしたのは808STATEのグラハム・マッシーとマンチェスターのサックス奏者デイヴッド・マクリーン。宇宙的な包容力のあるコンストラクトのサウンドに乗って、グラハムのギターやベースが歪みを癒す。人力テクノのグルーヴ感が、ノイズに頼らずフレーズを奏でるベースとサックスの対位法により、無視できないほど膨れ上がった。カセットの再生音域の限界が、逆に怒濤のインプロを拡張して拡散して拡大する拡声器の役割を果たす。
●Hüseyin Ertunç / Doğan Doğusel / Cem Tan / Umut Çağlar – Gümüşlük Sessions: At Lon's
(Holidays Records – HOL-100 2016)
2015年9月29,30日、コンストラクトのUmut Çağlarを含むトルコの即興音楽実力派4人がグムスルクに集って二日間開催されたコンサートのライヴ盤4枚組ボックス。基本はサックス、ピアノ、ベース、ドラムのカルテット編成だが、様々な楽器を使い、自由な空気の流れを塞き止めることを警戒している。自由度の高いまったり感は、スピードを目指す昭和の即興ともダンス主導の90年代DJカルチャーとも異質な統制ルールの適用に依る。4枚を通しで聴くのは試練かもしれないが、朝昼晩に各1面頭空っぽにして聴き流せれば、至福のフライングエナジーに触れることが出来るかもしれない。
Konstrukt & Friends (feat. McPhee & Brötzmann)
オーガニック
イスタンブール
ウナセラディ