浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

知らなかった!

2013-07-08 15:37:28 | 日記
 今日は『世界』8月号の発売日だ。現在発売されている雑誌の中で、『世界』はその内容で卓越していると思う。ボクたちが知らなければならないこと、考えなければならないことが、学問的な背景をもってきちんと知的に論じられている。

 まず最初にボクが読むのは、「メディア批評」である。今月号の二つの話しのひとつは、大阪での母子遺体発見事件である。
 
 実はボクはこの事件をまったく知らなかった。新聞やテレビで報道はされたのだろう(といっても、筆者の神保太郎氏に依ればきわめて小さき記事、テレビでも詳しくはとりあげなかったようだ)が、まったくボクの目に入らなかった。うかつであった。

 大阪・天満のマンションで、「おなかいっぱい食べさせられなくてごめんね」というメモが残されていたというのだ。餓死なのか。神保氏のこの文を読んでも詳細はわからない。
 
 とにかく母子が亡くなった、そして三ヶ月後に発見されたという事実だ。なぜ母子が死ななければならなかったのかは、いまもって闇の中だ。

 神保氏は次のように指摘している。

 自己責任のルール化が強まる社会のなかでは、貧困、差別、失意、自信喪失、恐怖などで対人関係の回避が習慣化したものはいつも、他人に迷惑はかけられないという自己規制に、強く縛られている。だれもが平等に受け入れてもらえ、その窮地からの解放や支援が相談できる仕組みが、よほど明白なものとして存在し、機能していない限り、自己規制の高い壁を乗り越えることはできない。現代社会がそのような隘路に突っ込んでしまっていることを、二人の死は教えている。

 人間は、決して一人では生きていけない動物だ。この世に誕生してから長い間、人間は母親をはじめとした人々に支えながら人間として成長していく。その間、多くの人に迷惑をかけながら、助け合いながら生きていく。迷惑をかけて生きていくのが人間である。

 しかし、今「自己責任」ということばにあわせていくことが求められる世の中になってしまっている。「自己責任」ー冷たいことばだ。

 カネを自分で稼げない奴は死ね!というような声が聞こえてくる。人は様々な状況の中で、自らカネを稼げなくなることもある。それは他人かもしれないし、自分かもしれない。

 「お互い様」ということばがある。暖かいことばだ。

 新自由主義という経済学が世界を覆う中で、勝者だけにスポットライトがあてられるようになっている。勝者が生まれる過程で、たくさんの敗者が生まれているはずだ。敗者だから見捨てられて良いということにはならない。

 今日『世界』とともに『アエラ』(朝日新聞社)も買った。そこには大企業の役員報酬の一覧がでている。日産自動車のカルロス・ゴーンは9億8800万円だ。昨年は9億8700万円だったそうだ。こんなにたくさんのカネを得て何につかうのだろうか。

 その一覧からはみでているようだが、スズキの鈴木修は1億5100万円だそうだ。スズキの夜勤のない従業員が、生活のためにコンビニや代行運転でアルバイトをしていることを、ボクは知っている。スズキは夜勤があってはじめてフツーの生活ができるそうだ。

 何という格差。

 こうした途方もない格差があっても、人々は「自己責任」だから仕方がないというのだろうか。

 豊かだといわれる日本社会。「自己責任」を合唱する人々から見えないところで、いや彼らに見られないようにひっそりと生き、そしてこの世から去るしかないと思っている人々がいる。

 悲しい社会だ。


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貧困

2013-07-08 11:58:16 | 日記
 「母子家庭」ということばをきくと、実はボクはあまり良い気持ちがしない。ボクは「母子家庭」で育ってきたからで、自分でいうぶんにはどうってことはないが、他人からいわれるとあまりよい気がしなかった。

 「欠損家庭」ともいわれる場合もある。

 何か不正常な生活をしているような錯覚に陥るのだ。

 今「母子家庭」は、いっぱいある。多くは離婚によるものだが、現在の日本社会で女性が生活できる収入を獲得するのは容易なことではない。

 ずっと前は、女性の深夜業は禁止されていたが、男女の平等という建前の中で、今は深夜業は可能になっている。また今、正社員の労働で、1日8時間労働制を守っているところは圧倒的に少ない。だから、正社員で働こうと思っても、子育てと仕事の両立はとても難しい。

 子育てと両立させるためには、賃金の低い派遣やパートの労働となる。しかしそれでは、責任をもった子育てができない。子どもへの虐待は、こうしたことも背景として存在している。

 さて「母子家庭」の貧困については、新聞でも報道されている。政府も、当然その実態を知っているだろう。知っているはずだ。

 下記のサイトにアクセスして欲しい。内閣男女共同参画局のサイトである。

http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/gaiyou/html/honpen/b1_s05.html

 「母子家庭」の実状を見ていただきたい。



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