1894年の日清戦争の発端となった東学党の乱、甲午農民戦争ともいう事件の詳細がこの本に書かれている。
日清戦争の死者数で、日本と清との戦争にもかかわらず、朝鮮の人々の死がもっとも多いという記述に驚いた。その原因は、今まで考えられていた「東学農民戦争」の規模が、きわめて大規模なものであることがわかってきたからだ。
中塚明氏の研究により、日清戦争は朝鮮王宮占領から始められたことが明らかになっている。
甲午農民戦争は、日本や清の介入により、一旦は停止されるが、日本軍の王宮占領に抗して、全国各地の東学を学ぶ農民等が抗日闘争に決起、それに対して日本軍は徹底的な殲滅戦を行った。その結果、朝鮮の人々の死がもっとも多いこととなったのである。
この農民戦争については、ボクも教科書レベルの知識しかもっていなかった。しかしこの本を読み、その全体像を掴むことができた。
特に井上勝生氏の「日本軍最初のジェノサイド作戦」は、きちんとした史料に基づく研究でとても精緻なものである。
ただ残念ながら本書掲載の文は、研究論文のような書き方ではない。高文研の本は、いかなる内容でも、一般啓蒙的な文体にするので、後追いができない記述となっている。それぞれの記述に注記や参考文献の記載がない、史料をよみやすく(わかりやすく)書き換えている。したがってこの文を手がかりとしてさらに認識を深めていくということができない。その意味で井上氏には研究論文としてどこかに書いていただきたいと切に思う。
王宮占領後に立ちあがった東学農民らの戦いは、日本軍の兵站に対する効果的なゲリラ戦であったが故に、日本政府・軍は山口県出身の南小四郎少佐を大隊長とした後備第十九大隊を派遣し、農民達の抗日の戦いを徹底的に殲滅したのであるが、その行為はまさに「皆殺し」という凄惨なものであった。
後の日中戦争でみられた、捕虜を一列に並ばせて銃剣で刺殺するという行為が、ここから始まっていることにも驚いた。日本軍の野蛮な本性は、ここからだったのかと思わせる事実の記載である。
近代日本を悪くしたのは薩摩長州であるとボクは思っているが、この東学農民の殲滅を命令したのが、井上馨や伊藤博文らであることは、さらにその認識を強める。
この本は、町田の住人の推薦(本人は著者から恵贈されたとのこと)により購入して読んだのだが、町田の住人は山口県出身、悪いのは長門であって周防は悪くはないとしばしば語る。長州は長州である。
いずれにしても、近代日本史は、この本の研究成果を取り入れなければならないほど衝撃的な事実である。
なお東学の「十二箇条」の軍律(行動綱領)を評価したのが、「いのちの思想家」である田中正造であったこと、東学の思想には「いのち」を重視するという、現在にこそ評価されるべきものがあったということから、今研究が進められているという。
近代史を学ぶ者は、必ず読むべきである。
日清戦争の死者数で、日本と清との戦争にもかかわらず、朝鮮の人々の死がもっとも多いという記述に驚いた。その原因は、今まで考えられていた「東学農民戦争」の規模が、きわめて大規模なものであることがわかってきたからだ。
中塚明氏の研究により、日清戦争は朝鮮王宮占領から始められたことが明らかになっている。
甲午農民戦争は、日本や清の介入により、一旦は停止されるが、日本軍の王宮占領に抗して、全国各地の東学を学ぶ農民等が抗日闘争に決起、それに対して日本軍は徹底的な殲滅戦を行った。その結果、朝鮮の人々の死がもっとも多いこととなったのである。
この農民戦争については、ボクも教科書レベルの知識しかもっていなかった。しかしこの本を読み、その全体像を掴むことができた。
特に井上勝生氏の「日本軍最初のジェノサイド作戦」は、きちんとした史料に基づく研究でとても精緻なものである。
ただ残念ながら本書掲載の文は、研究論文のような書き方ではない。高文研の本は、いかなる内容でも、一般啓蒙的な文体にするので、後追いができない記述となっている。それぞれの記述に注記や参考文献の記載がない、史料をよみやすく(わかりやすく)書き換えている。したがってこの文を手がかりとしてさらに認識を深めていくということができない。その意味で井上氏には研究論文としてどこかに書いていただきたいと切に思う。
王宮占領後に立ちあがった東学農民らの戦いは、日本軍の兵站に対する効果的なゲリラ戦であったが故に、日本政府・軍は山口県出身の南小四郎少佐を大隊長とした後備第十九大隊を派遣し、農民達の抗日の戦いを徹底的に殲滅したのであるが、その行為はまさに「皆殺し」という凄惨なものであった。
後の日中戦争でみられた、捕虜を一列に並ばせて銃剣で刺殺するという行為が、ここから始まっていることにも驚いた。日本軍の野蛮な本性は、ここからだったのかと思わせる事実の記載である。
近代日本を悪くしたのは薩摩長州であるとボクは思っているが、この東学農民の殲滅を命令したのが、井上馨や伊藤博文らであることは、さらにその認識を強める。
この本は、町田の住人の推薦(本人は著者から恵贈されたとのこと)により購入して読んだのだが、町田の住人は山口県出身、悪いのは長門であって周防は悪くはないとしばしば語る。長州は長州である。
いずれにしても、近代日本史は、この本の研究成果を取り入れなければならないほど衝撃的な事実である。
なお東学の「十二箇条」の軍律(行動綱領)を評価したのが、「いのちの思想家」である田中正造であったこと、東学の思想には「いのち」を重視するという、現在にこそ評価されるべきものがあったということから、今研究が進められているという。
近代史を学ぶ者は、必ず読むべきである。