浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

すごい人だ!

2017-02-19 22:34:27 | その他
 ブレイディみかこの『ヨーロッパコーリング』(岩波書店)を読んでいるが、いったいこの人はどういう人なのだろうかと思う。文章はうまいし、そこに記されていることは現実を踏まえ、現実を批判するなかで、なにがしかの教訓めいたものを引き出したり、その現実を短い言葉ですっと描いたり、読みながら感動してしまう。

 この本は図書館から借りたものなので、線を引いたり書き込みをすることができないのがつらい。先に本の内容を詳しく紹介するつもりであった『崩壊するアメリカの公教育』は大変参考になるので、その本を買うこととして図書館に返した。この本も同様になりそうだ。

 今、「風刺とデモクラシー」を読んでいるのだが、イギリスにはPrivate eyeという政治風刺の雑誌があるそうで、政治関係ではこの雑誌が一番売れているとのこと。

 その文章の中で、人形劇コメディ「スピッティング・イメージ」というテレビ番組が紹介されている。

 サッチャーが鏡に向かって「私も歳をとったわ」という。すると

 鏡のなかのサッチャーが「この世には二人のあなたが存在するの。一人は邪悪なあなた。そしてもう一人はもっと邪悪なあなたよ!」といって、サッチャーのクビを締めはじめる。

 この番組の趣向は日本でも真似されたそうだが、こういう風刺番組や風刺雑誌がないのが日本という国なのだろう。

 後半部で、英国の左派の論客のことばを引用している。いいことばだ。


 良質な風刺は、政治なんて退屈だと思っている人びとの目を政治に向かわせることができる。政治というのはそれで笑いをとることも可能なほど、けっこう乱暴で面白いものなんだと気づかせることができるのだ。

 日本には、鋭い風刺を書いたり話したりする人が多くない。もうずっと前になくなったが、飯沢匡という作家が昔はいた。

 ブレンディみかこは、この引用された文の後にこう続ける。

 だが、現代の英国では、笑われる対象となっているのは生活保護受給者や移民といった下層の人間ばかりだ。貧困賃金しか払わない企業の大ボスとか、脱税富裕者とか、それらを容認している政治家をおちょくって大笑いしてやろうという下からの突き上げが少なすぎる。

 この文で、彼女は安倍首相を皮肉る。安倍首相がサッチャーを高く評価しているとし、しかし、と続ける。サッチャーは「スピッティング・イメージ」のような番組を妨害しなかったことを指摘する。このように、安倍政権によるメディア統制をちくりと刺す。そてさらにリベラル・デモクラットを名乗る政党が、「公平な番組づくりをお願いしたい」なんていうはずがないと、またちくりと刺す。

 風刺が重要であることを、さらっと記しているが、なかなか教えられる本である。

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こういう意見がある!

2017-02-19 19:53:41 | その他
 「バノンは大戦争を起こす?」という意見である。

http://blogos.com/article/210855/
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株価が上昇している、戦争に関連する会社の・・・・

2017-02-19 19:04:51 | その他
 『日刊ゲンダイ』の記事(一部)。

金正男暗殺は株式市場にも衝撃を与えた。

「マーケットはトランプ氏が大統領選に勝った昨年11月以降、『気分はもう戦争』でしたが、正男暗殺により、もっと現実的な『戦争前夜』へとモードが切り替わりました。関連銘柄の上昇が顕著になっています」(市場関係者)

 トランプ当選直前の2016年11月8日と、17日の株価を比較(以下同)すると、日経平均は12%上昇した。一方、市場が“戦争銘柄”と呼ぶ企業群は平均株価を上回る上昇率を記録している。

 有事には欠かせないレーダーに強みを持つ東京計器は39%上がった。救難飛行艇の新明和工業は38.5%上昇、航空機整備のジャムコは37.7%アップだ。

「これまで市場は、あくまで“計画的な戦争”を想定していました。米国が北朝鮮の核実験などを容認していたのも、日本や韓国に具体的な敵国を想像させるためだったでしょう。ところが、トランプ政権は移民の入国禁止で明らかになったように、何をしでかすか分からない。そんな時に正男氏の暗殺が重なり、市場は、偶発的な軍事衝突が本当に起こり得るのではないかと危惧し始めたのです。それが“戦争銘柄”の上昇につながっています」(株式アナリストの黒岩泰氏)


http://www.nikkan-gendai.com/articles/image/news/199864/61678
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POOR DOOR

2017-02-19 18:28:41 | その他
イギリスでは、大きなマンションを建設する際に、安い家賃で借りられる一定数の部屋を用意しなければならないという。大きなマンションというと、エントランスがなかなか立派なものが多いが、しかしその一定数の人びとはそのエントランスを使用できず、彼らだけが出入りするドアが用意されている。
 そのドアのことを、poor doorというのだそうだ。

 またイギリスでホームレスが出始めたのは1980年代。サッチャーの新自由主義改革が華々しく展開されはじめた頃だ。今ではまちのあちらこちらにホームレスがいるのだが、ホームレスが使用できないように、バス停のベンチは奥行きがなく、傾斜をつけたり、あるいは肘掛けをベンチの中央に作ったりしているという。日本も同じようなことをしている。

 政府の経済政策でホームレスをつくりだしておいて、人びとの目に見えないようにしたり、排斥したりする。

 アングロサクソンの国家と日本では、自己責任ということばが流布している。

 イギリスでも、「ホームレスとして生きることは、個人的なライフスタイルの選択」、「貧困は個人的失敗の結果だから、自己責任」ということが言われるそうだ。日本と同じ。

 私が好きなイギリスの映画監督、ケン・ローチが左派政党を創設したという。left unityという。そのHPを探したところ、すぐに行き着いた。そのマニフェスト、いいねえ。

http://leftunity.org/

 以上は、今日読み始めた、ブレンディみかこの『ヨーロッパコーリング』(岩波書店)から。

 しかし、poor door、なかなか含蓄のあることばだ。日本で生きている私たちには、どこにでもpoor doorがある。それは、貧困生活に入るドアである。そのドアは、いつも開いている。

 
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学力テストのこと

2017-02-19 09:11:14 | その他
 今日の『中日新聞』の「ニュースを問う」は、「学力テスト」である。あくまでも「調査」のためとしてはじめられた「学力テスト」が、現在では都道府県、各学校、教員で、点数獲得競争が行われ、それが評価に結びついている実態が報告されている。その背景にある「政治の介入」を、今日は追及している。

たとえば、二〇一二年二月の滋賀県議会の議事録(抜粋)を見ると、こんな具合だ。

 議員 全国規模のテストがあって、順位を教えないというのは、本当にせっかくの機会が台無しな気がいたします。

 議員 点数主義を生むんだという危惧は、それはあくまでも教師や学校側の心配ですから。

 学テの市町別・学校別の結果公表を巡り、県議が県教委をただしていた。公表に慎重な県側に対し、一三年九月の定例会議でも議員が激しく突っ込んでいる。

 議員 全国平均とのポイント差が広がり、悪くなっているという状況にもかかわらず、知事からはあまり危機感が伝わってきません。

 議員 すべての教科で全国最下位に近い成績結果と聞きますと、保護者をはじめとする県民の皆さまが、本県の教育水準について懸念されることも当然だと考えます。


 浜松市議会議員の面々をみていると、多くは知性とは無関係な人びとであり、見識ある行動をするとはとても考えられないが、そうした議員という肩書きをもつ人びとが無責任な行動をとっているのだ。

 今日の記事を読み、先に読み終えた『崩壊するアメリカの公教育』(鈴木大裕、岩波書店)を思い出した。この本の紹介はいずれおこなうが、今読み進めているロバート・ライシュの『最後の資本主義』(東洋経済新報社)とあわせて考えると、要するに「公」が行っているあらゆる事業を民間企業がカネもうけの手段とするために、ありとあらゆる政策を財・政・官がまさに一体となって推進している姿である。

 「学力テスト」にひきつけて言えば、アメリカでは「学力テスト」を実施することにより、学校や教員を「評価」し、その点数が低いと学校を廃校にしたり、教員のクビを切ったりしている。点数が低いところは、あまり裕福ではない地域の公立学校である。
 日本での学力テストでも、経済的に豊かな家庭が多いところの学校の点数が高いということはすでに判明している。
 アメリカの公立学校の場合、学校の諸費用にその地域の固定資産税が投入されるために、固定資産税の評価が高いところは裕福な公立学校が生まれ、貧しい地域では学校の諸費用が足りずトイレットペーパーすら家庭から持参してもらうという状況だ。そういう地域の公立学校は、「学力テスト」の点数が低いために廃校となり、教員たちも首切りとなる。

 そしてその後に、チャータースクールができる。生徒数により公費が支給されるが、民営である。そこでは経営主体はできるだけ
安上がりにするために、資格を持った教員や雇用せず、短期間の研修のみで教壇に立つことができる人びとを教師にする。ひどい場合は、フィリピンなど外国から教員を「輸入」する。

 つまり公立学校をなくして、民間企業に学校経営をやらせてカネもうけの場とするのである。もちろんチャータースクールも評価されるのだが、評価を高めるために、「学力テスト」の点数が低い者はやめてもらうのだ。

 何とメリーランド州では「予算不足を理由にボルチモア学校区への11億円の追加予算を却下する代わりに、30億円を超える少年院の建築を決めた」(79頁)そうだ。学ぶ権利を行使できずに「落ちこぼれ」となった子どもを学校教育から追放して「少年院」に閉じ込めようとしているのだ。

 日本の学力テストも、アメリカの「現在」を目指しているように思える。民間企業にカネもうけの場を提供し、すでに存在する格差をさらに拡大させる政策。格差社会のなかで落ちていった人びとを収容する刑務所や少年院に収容する。ちなみに、アメリカでは刑務所すら民間企業の経営である。そこには州などから公金が支給されるが、カネもうけを経営の主目的とする民間企業であるから、できる限り経費は切り詰めて経営者や株主に儲けを集中している。

 日本の国や自治体の財政も、その支出をみれば、学校へのそれは減らし、企業への補助金や土木建設には多額の金をつかう構造だ。新自由主義とは、民間企業に税金までもプレゼントする体制である。

 新自由主義の先進事例は、日本人が大好きなアメリカにある。アメリカがどういう社会であるかを認識することが必要だ。こういう社会にしてよいかを、日本国民に問うことが求められていると思う。

 
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