ブレイディみかこの『ヨーロッパコーリング』(岩波書店)を読んでいるが、いったいこの人はどういう人なのだろうかと思う。文章はうまいし、そこに記されていることは現実を踏まえ、現実を批判するなかで、なにがしかの教訓めいたものを引き出したり、その現実を短い言葉ですっと描いたり、読みながら感動してしまう。
この本は図書館から借りたものなので、線を引いたり書き込みをすることができないのがつらい。先に本の内容を詳しく紹介するつもりであった『崩壊するアメリカの公教育』は大変参考になるので、その本を買うこととして図書館に返した。この本も同様になりそうだ。
今、「風刺とデモクラシー」を読んでいるのだが、イギリスにはPrivate eyeという政治風刺の雑誌があるそうで、政治関係ではこの雑誌が一番売れているとのこと。
その文章の中で、人形劇コメディ「スピッティング・イメージ」というテレビ番組が紹介されている。
サッチャーが鏡に向かって「私も歳をとったわ」という。すると
鏡のなかのサッチャーが「この世には二人のあなたが存在するの。一人は邪悪なあなた。そしてもう一人はもっと邪悪なあなたよ!」といって、サッチャーのクビを締めはじめる。
この番組の趣向は日本でも真似されたそうだが、こういう風刺番組や風刺雑誌がないのが日本という国なのだろう。
後半部で、英国の左派の論客のことばを引用している。いいことばだ。
良質な風刺は、政治なんて退屈だと思っている人びとの目を政治に向かわせることができる。政治というのはそれで笑いをとることも可能なほど、けっこう乱暴で面白いものなんだと気づかせることができるのだ。
日本には、鋭い風刺を書いたり話したりする人が多くない。もうずっと前になくなったが、飯沢匡という作家が昔はいた。
ブレンディみかこは、この引用された文の後にこう続ける。
だが、現代の英国では、笑われる対象となっているのは生活保護受給者や移民といった下層の人間ばかりだ。貧困賃金しか払わない企業の大ボスとか、脱税富裕者とか、それらを容認している政治家をおちょくって大笑いしてやろうという下からの突き上げが少なすぎる。
この文で、彼女は安倍首相を皮肉る。安倍首相がサッチャーを高く評価しているとし、しかし、と続ける。サッチャーは「スピッティング・イメージ」のような番組を妨害しなかったことを指摘する。このように、安倍政権によるメディア統制をちくりと刺す。そてさらにリベラル・デモクラットを名乗る政党が、「公平な番組づくりをお願いしたい」なんていうはずがないと、またちくりと刺す。
風刺が重要であることを、さらっと記しているが、なかなか教えられる本である。
この本は図書館から借りたものなので、線を引いたり書き込みをすることができないのがつらい。先に本の内容を詳しく紹介するつもりであった『崩壊するアメリカの公教育』は大変参考になるので、その本を買うこととして図書館に返した。この本も同様になりそうだ。
今、「風刺とデモクラシー」を読んでいるのだが、イギリスにはPrivate eyeという政治風刺の雑誌があるそうで、政治関係ではこの雑誌が一番売れているとのこと。
その文章の中で、人形劇コメディ「スピッティング・イメージ」というテレビ番組が紹介されている。
サッチャーが鏡に向かって「私も歳をとったわ」という。すると
鏡のなかのサッチャーが「この世には二人のあなたが存在するの。一人は邪悪なあなた。そしてもう一人はもっと邪悪なあなたよ!」といって、サッチャーのクビを締めはじめる。
この番組の趣向は日本でも真似されたそうだが、こういう風刺番組や風刺雑誌がないのが日本という国なのだろう。
後半部で、英国の左派の論客のことばを引用している。いいことばだ。
良質な風刺は、政治なんて退屈だと思っている人びとの目を政治に向かわせることができる。政治というのはそれで笑いをとることも可能なほど、けっこう乱暴で面白いものなんだと気づかせることができるのだ。
日本には、鋭い風刺を書いたり話したりする人が多くない。もうずっと前になくなったが、飯沢匡という作家が昔はいた。
ブレンディみかこは、この引用された文の後にこう続ける。
だが、現代の英国では、笑われる対象となっているのは生活保護受給者や移民といった下層の人間ばかりだ。貧困賃金しか払わない企業の大ボスとか、脱税富裕者とか、それらを容認している政治家をおちょくって大笑いしてやろうという下からの突き上げが少なすぎる。
この文で、彼女は安倍首相を皮肉る。安倍首相がサッチャーを高く評価しているとし、しかし、と続ける。サッチャーは「スピッティング・イメージ」のような番組を妨害しなかったことを指摘する。このように、安倍政権によるメディア統制をちくりと刺す。そてさらにリベラル・デモクラットを名乗る政党が、「公平な番組づくりをお願いしたい」なんていうはずがないと、またちくりと刺す。
風刺が重要であることを、さらっと記しているが、なかなか教えられる本である。