4月18日、川根本町の茶農家で郷土史研究者のSさんが亡くなられた。95歳であった。その連絡をうけ、関係者が集まってお悔やみに、大井川を遡上した。▲Sさんとの会話の中で、もっとも記憶に残っているのは、「キツネの嫁入り」を見たことがある、という話しであった。Sさんの家は大井川に沿ったところにある。夜、対岸に「キツネの嫁入り」が進んでいるのを見た、というのだ。Sさんが言うと、真実かも知れないと思えるから不思議である。▲私は仲間たちと一緒に、「徳嶋若太郎」という村長を務めた人物の明治期の日記を復刻したのだが、その記述の中には不明なことがたくさんあった。私はこのSさん、そしてTさんから不明な点を聞いていった。お二人とも、地域の歴史や風習その他にとても詳しく、おかげで何とかまとめることができた。▲Sさんは、柔和で笑顔を絶やさない方であった。みずから調べたいことがあればどこにでも足を運び、それをいくつかの冊子にしてまとめた。活字として出版しただけではなく、みずからパソコンを駆使しても冊子にしていった。こういう人が地域にいることで、地域の歴史は伝えられていくのである。▲いただいた香典返しの中に「追悼のしおり」があった。おそらく息子さんが書かれたものだろう。その表題は、「冷静で誠実であれと教えてくれた父でした」。まさにその通りの人であった。またそのなかに「二番茶の茶部屋で全身汗して茶揉みをする父」という文言もあった。川根は茶所である。私もこの地域の茶業の歴史を調べたことがある。この地域での、好い茶を生産しようという努力は特筆に値する。今も「川根茶」はブランド茶である。Sさんは、そのなかでも高品質の茶の生産者であった。茶生産でも地域史の研究でも、冷静かつ誠実であった。Sさんの死を、この地域の「巨星」が一つ失われたという人があったという。同感である。
あらゆることを利用して企業に金もうけをさせる、というのが新自由主義経済の原理である。ナオミ・クラインが『ショック・ドクトリン』(岩波書店)で、そのことは論じられている。
原発事故に関しても、それを利用して、国家や自治体が、湯水の如く、カネを民間企業、この場合は電通に流している。こういうカネが、ほんとうに被害をうけた人びとに流されれば、と思う。
原発事故後の復興PRに240億円〜電通1社で
資本主義の腐朽は、これに象徴されている。
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