『無知の涙』という本がある。連続殺人事件を起こした永山則夫が書いたものだ。貧しさの故に満足に学校も行かず、したがって普通の家庭生活もなく、大切な他者のいのちを奪い去った。すでに彼は死刑に処せられているが、捕らえられてからひたすら読書し、みずからの犯行の背景に「無知」があることを見出した。▲永山は、「無知」を否定すべきこととして捉えた。自分が「無知」でなかったら、こういう事件は起こさなかっただろうと思いながらも、しかしみずからが起こした事件を「無知」のせいにはしていない。事件の責任を負うことをみずからに課していた。▲「無知」は肯定されるべきことではない。永山だけではなく、少し前までは「無知」を自覚する者たちは、それに廉恥心を抱いていた。おのれの「無知」を自覚する者たちは、その「無知」から脱するために学び、みずからが「知」を有しないことについては沈黙を守っていた。▲しかし近年は、「無知」のうえにあぐらをかき、「無知」をあたかも誇るかのような人びとが増えてきた。いつ頃からかを振り返ると、安倍晋三という人間が政治の表舞台に出て来た頃ではないか。▲安倍が字を知らないことは公然化している。「云々」を「でんでん」と読むような人である。「願って已みません」を「ねがっていません」と読んだのは、つい最近のことだ。しかし彼はそれを恥ずかしいとも思わない。その安倍が今は首相である。政治のトップがこういう人物で、堂々と「無知」の上に居直ると、それを見ておのれも「無知」でもよいのだと錯覚する人びとが増えていく。▲「無知」に居直ると、思考も衰弱していく。元号による時期区分を私はしたくはないが、「平成」は「無知」が跋扈してきた時代と言えるのではないか。元号が変わっても、相変わらず「無知」の上にあぐらをかく者たちが躍っている。私はそういう事態を嘆かわしいと思っているが、世間はそうではないらしい。「無知」が跋扈する時代は、「令和」になっても続いている。
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