いろいろなことを学んだ。私は、近代天皇制、そしてそれにつながる現代の天皇制は、近代初期に「伝統」が捏造されたことを、何度か話したことがある。
ただ儒教についての勉強はしていなかったので、この本を読んでみた。書かれている内容は以下の通り。
お田植えとご養蚕/山陵/祭祀/皇統/暦/元号
天皇、皇后が行う田植えと養蚕についてはまったく知見をもっていなかったが、これもあたかも古来から行われているかのようにみなされているがそうではない。
天皇の墓地たる「皇陵」とて、近世末期から近代初期に「これではないか」と比定されたもので、根拠不明が多い。神武天皇陵がその典型である。
祭祀も近代初期につくられた。皇統も、現天皇家は北朝の系統なのに、戦前の歴史教育では南朝正統論。
本書でふむと思ったのは、和暦の意義である。日本だけが伝統的な和暦を捨て去った。韓国や中国はいまだ日常生活で保持している。それは正しい姿勢であると思い、和暦のカレンダーを購入して、今私の背後にある。これからは、和暦でみていこうと思う。
学問的知見の基づいた主張は納得できるものがたくさんあり、読む価値はある。私は図書館で借りた。
読んでいて 面白かったことを2点紹介する。一つは「馬鹿」のルーツ。 紀元前3世紀、秦の2世皇帝に仕えたおべっか使いの男がいた。 自分に逆らうものを見分けるために鹿を馬と称して皇帝に献上した。不思議に思った皇帝が近臣たちに質問した。これは何だ、と。その男は、それは鹿ですと答えた者たちを自分に逆らう可能性があるとして粛清したそうだ。「莫迦」が古い表記で、 バカはサンスクリット語で「愚か者」を意味し、その音訳が本来の語源であるそうだ。その後秦は、皇帝に直言できるまともな政府高官がいなくなり、民心に背く政策をごり押しで行ったため、圧政に苦しむ人々が各地で決起してあえなく滅亡したという。
現在の日本の政府高官は「馬鹿」ばかり。いずれ日本も滅びることになるだろう。
もう1つは仏壇である。日本で家の中に仏壇を設けて祖先の位牌をおく風習は江戸時代に始まるとされている。寺請制度のもと、仏教信者であってキリシタンではないことを証明するために仏像を家庭内に安置し、その仏壇に位牌を置くようになったのだそうだ。しかしこの位牌、仏教にルーツがあるのではなく、儒教からだそうだ。
日本の風習にある儒教的なものを知らなければならないと思った。