いつか読むつもりで買ってあった本。その一冊である。読みはじめたら、なかなかよい本であると気付かされ、一気に読んでしまった。
これを読むと、ヨーロッパーアフリカー新大陸間で行われた奴隷貿易の全貌を見渡すことができる。またイギリスから始められた奴隷貿易廃止運動、奴隷制廃止運動の流れもわかる。その運動を主に担ったのはキリスト者であった。といっても西欧世界はクリスチャンがほとんどであり、奴隷貿易を行ったのも、奴隷を酷使したのもクリスチャンである。しかしその中にも少数ではあるが良心的なキリスト者がいたのである。おもにクエーカー教徒。
そして奴隷制が廃止されたはずなのに、奴隷制度は今も世界各地で存続していることもきちんと触れている。
私は、奴隷制度を公認した国家、奴隷貿易を国家的事業でおこなった国々は、過去の罪業を明らかにしてその責任を果たすべきであると思う。何故か。罪業の多くは公的機関の公認により大々的に展開される。したがって、それを公認した国家が自らの責任を自覚して謝罪し、当然ではあるが賠償することにより、はじめて過去の奴隷貿易・奴隷制度を「過去」のものとすることができる。さらに現存する奴隷制度への厳しい批判ともなる。
そのために、奴隷制度の全体を俯瞰できる本書は、読まれなければならない。