浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

腐敗とロシア軍

2022-04-12 19:56:23 | 国際

 暗殺されたロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤが書いた『プーチニズム 報道されないロシアの真実』(NHK出版)を読んでいる。原題は、"プーチンのロシア"である。

 図書館から借りて読んでいるのだが、最初から唖然としている。第1章は、「ロシア軍兵士とその母たち」である。その書き出しー

 ロシアの軍隊は閉ざされた世界であり、その意味では刑務所となんら変わるところはない。当局が望まなければ誰ひとり軍隊にも刑務所にも入ることはできない。ところが、いったん入ってしまえば、そこには奴隷のような生活が待っている。

・・・・・・

 しかしロシア軍には、この軍隊にしかない特殊な側面がある。いや、ロシア軍とロシア国民のあいだにはと言ったほうがいいだろうか。つまりこの国では、軍隊がしでかしたことに民間人は口を挟むことができない。兵卒はヒエラルキーの最下層にいる。人間ではない。物以下の存在なのだ。兵舎のコンクリート壁の蔭に入れば、将校は兵士をどうしようと思うままだ。上官なら部下に対していかなる暴挙に及ぼうとも許される。

 読んでいて、かつての大日本帝国の軍隊とよく似ていると思わざるを得なかった。日本軍は「上官の命令は天皇の命令」だとして、兵士は奴隷のように扱われた。

 ロシア軍の兵士が、ウクライナで略奪を働いていると報じられていたが、ロシア軍兵士は奴隷であるが故に、満足な食事も与えられていないようだ。

 ・・・・2002年の一年間だけで、大隊に匹敵する500人を超す兵士が戦闘ではなく暴行によって死亡した軍隊ならどうだろう。両親から送られてくる10ルーブル札から、果ては戦車の隊列まるごと将校が盗み取る軍隊なら?上級将校は下級将校にやりたい放題のことをし、下級将校はその憎しみを兵士に向けている軍隊は?将校という将校が例外なく兵士の親を憎んでいる軍隊は?そして、この憎しみの理由というのが、将校のひどすぎる行状に息子を殺された母親が憤り、懲罰を求めることも珍しくないからだとしたらどうだろう。(26頁)

 腐敗する軍隊の民主化をエリツィンは試みたが、プーチンはその腐敗を押しとどめようとしなかった。将軍や将校は、腐敗し腐臭を放ちながら現在に至っているという。

 そうした軍隊が、ウクライナに来ている。

 なぜロシア軍がひどいか。その答えは、おそらく日本軍の兵士はなぜひどかったかを探るなかで出されてくるはずだ。大日本帝国の軍隊とロシアの軍隊は、よく似ている。共通しているのは、軍隊に民主主義がないこと、どんなにおかしなことであっても下の兵士は従わなければならないという徹底した「上意下達」、日本軍の場合はトップに天皇がいた、そしてロシア軍のトップには、プーチンがいる。

 

コメント
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