浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

腐敗がプーチンを「皇帝」にした

2022-04-13 11:05:54 | 国際

 アンナ・ポリトコフスカヤの原題「Putin`S Russia」には、Putinを理解する様々な事例が記されている。

 しかし、ソ連=ロシアには、有能なリーダーはいなかった。アンナはこう記している。

ブレジネフは嫌悪すべき人間だった。アンドロポフは少なくとも見せかけは民主的だったが、残忍だった。チェルネンコは間抜けで、ゴルバチョフはロシア人に毛嫌いされた。エリツィンはやることがでたらめで、往々にして人びとを混乱に陥れた。こうして神様が現れた。(367)

神様とは、もちろんPutinである。

腐りきった社会では人は己の安らぎ、平和、穏やかさを追求し、そのつけを他人の生命で払おうがなんだろうが気にも留めない。「ノルド・オスト」事件の悲劇から逃れようとし、真実より国家の嘘八百を信じる。(326~7)

「ノルド・オスト」事件とは、チェチェンのゲリラが劇場を占拠した事件である。人質として多くの人がいたが、プーチン政権は毒ガスを使用して強行突入し、ゲリラはもちろん、多くの人質を殺した。プーチン政権は、ふつうの人々がそのようにして殺されることを何とも思わない。

 なぜなら「国家の利益は個人の利益より優先されるべきである」というPutinの思想が貫徹しているからだ。「国家の利益」とは、しかし、プーチンとその取り巻き、軍、治安機関、そしてオリガルヒの利益を守ることだ。

 プーチンは偶然のいたずらで絶大な権力を持つに至ったが、それを乱用してロシアにとって破滅的となる傾向もたらすのだ。私がプーチンを嫌いなのは、彼が人びとを嫌っているからだ。彼は私たちを蔑んでいる。私たちは彼の目的のための手段、偉業を成し遂げて権力を維持するための手段であり、それ以外の何ものでもない。だから私たちをどう扱おうと、どう弄ぼうと、必要とあらば破滅に追いやろうと勝手だと思っている。彼にとって私たちは人間ではないが、偶然の成り行きでヒエラルキーの頂点に上り詰めた彼自身は、今日、皇帝であり神様なのだ。(384)

 現在のロシアは、贈収賄にまみれ腐臭を放つ国家であり、その頂点にプーチンがいる。権力維持のためには、なんでもするという「皇帝」である。ロシア国民が、彼を「皇帝」の地位につけたということこそ、現在のウクライナ侵攻の原因である。

 なお、日本の国内事情、贈収賄がまかり通る利権まみれの政治的腐敗と、経団連など経済界の利益擁護のためにのみ政治を行う・・・・まさにロシアの状況と相似的であることを知った。その規模が、ロシアは質的にも量的にも日本を凌駕している。

 ロシアには、住みたくない!

 

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腐敗、腐敗、腐敗・・・

2022-04-13 07:27:02 | 国際

 今までロシアの内状には全く関心はなかった。ロシアによるウクライナ侵攻という事態を前に、いったいロシアとはいかなる国であるか知る為にいろいろな文献にあたりはじめた。

 先日読んでいると紹介したアンナ・ポリトコフスカヤの『プーチニズム』にはすさまじいロシアの腐敗が描かれている。

 第二章は、「わが友の行方」。ソ連が崩壊して、それとともに生活も崩壊した人、いやそのなかでカネを得ることができた人・・・そういう人々の描写があった。激変について行けた人、ついていけなかった人、それぞれの様相は大きく異なる。

 第三章は、「公金横領を政府に黙認させる法」は、犯罪者が不法な手段でカネを儲ける、しかしそのカネの一部を公務員らに賄賂として渡す中で、不法は何ら問われることなくまかり通る。その結果、オリガルヒ(新興財閥)が生まれる。かれらを支えるのは、プーチンら現政権の幹部たち。司法は機能しない。司法はカネ次第である。「法の支配」「法治主義」ということばは、ロシアにはないのが実態である。

 ロシアにおける事業成功の三条件の説明があった(111)。

 「第一に、最初に国家のおこぼれに与った者が成功する。つまり国の資産をわがものにした者が勝つ。だから現代ロシアの大企業の大半の経営者は、かつての共産党の特権官僚(ノーメンクラツーラ)や共産主義青年同盟の構成員、共産党員だ。」

 「第二に、国の資産をまんまと手にした暁には、当局と仲よくする。つまり、常に役人に賄賂をつかませ、餌をやる。これであなたの私営企業の繁栄は請け合いだ。」

 「第三に、治安機関と仲良くする(ここでも袖の下)。」

 第一がない場合は、不法を重ねることしかない。しかし第二と、第三をしっかりとやれば、「不法」は「合法」となる。

 そういうオリガルヒを支えるのが、プーチンの権力なのだ。

 この本はスゴイ。ロシアの内幕が丁寧な取材により明らかにされている。だから彼女は殺された。

 とにかく、ロシア社会は腐りきっている。だからこそのウクライナ侵攻なのだろう。

 

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