友人が「終活」を始めたという。その一環として、本を捨てている。それを聞いた私も、本の整理を始めた。
何らかのテーマを調べたりして書く場合、それに関する文献を渉猟し、それらをふまえて書く、ということをしてきた。そのために購入した書籍や、図書館から借りてコピーした論文などがたくさんある。
おそらく私亡き後、これらは無用の長物となるであろう。そう思うと、生きているうちに整理しておいたほうがよいと思い、友人の真似をして、本の整理を始めた。
今日は雨、農作業をしないので、書庫に入り込み捨てる本を紙袋に次々と放り込んだ。今日選んだ本は、時事的なものや雑誌が多い。あるいは批判の対象とした人びとが書いた本。時事的な本は、当該時期が過ぎると、その時代について何か書く場合は必要となるだろうが、もうその予定はないし、依頼されることもないだろう。
勢いよく紙袋に投げ入れるのだが、ふと手に取る本がある。今日手に取ったのは、戦後短編小説再発見『故郷と異郷の幻影』(講談社文芸文庫、2001年刊)である。最初から読みはじめて三つ目、小林勝「フォード・1927年」は、小林が朝鮮半島で生まれ、幼いながらも植民者として朝鮮の人びとに差別的な目線で接していたことを赤裸々に表現している。そうなるだろうなと思える筆致である。
時事的な本よりも、文学作品の方が寿命は長いということである。
買ったけれども読んでいない本が、たくさんある。処分しながら、目についてものを読んでいこう。