浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】篠原資明『空海と日本思想』(岩波新書)

2013-01-07 21:44:25 | 日記
 実を言うと、まだ全てを読み終えたわけではない。日本史のレベルで興味があったので購入したのだが、私の趣味にはあわないようだ。

 ただし、国文学のレベルでは参考になろう。というのも、空海の書いたものには、当然かも知れないが無常がきちんと記されていることを発見したからだ。ボクは空海が書いた本の名は知っているが、しかし読んだことは一度もない。

 そのなかに、

 一身独り生没す
 電影是れ無常なり


 または、

 貴き人も賤しき人も惣べて死して去る
 死して去っては灰燼となる
 歌堂舞閣は野狐の里
 夢の如く泡の如し、電影の賓

 があり、それが紹介されていただけでも読んでよかった。

 だけど、この著者は哲学の研究者のようだが、学問の方法論としてこれでよいのか疑問を持った。哲学というのは、こういう方法でも可なのだろうか。

 時空を超え、空海だけではなく、プラトン、西行、トマス・アクイナス、クローチェ、慈円、九鬼周造などを繰り出してくるのだ。空海を論じるのに、こういう時空を超えた様々な人びとを取り上げるのだ。方法として「イメージ動力学」というものも動員する。

 これでは空海という人物の思想、空海が日本の思想にしめる位置についての記述も、どうも説得力がないし、客観性もないのではないか。

 この本全体で浮かび上がるものにはどうも近付けないし、部分的にだけ納得できるような本ではないかと思う。

 もちろん私は門外漢であるから、理解できないのは当たり前だと言われるかも知れないが、しかし岩波新書は専門書ではない。専門書でないこの本に書かれている内容は、きわめて不親切である。門外漢には理解できない箇所がたくさんある。

 国文学や無常について関心のある者は読めばよい。ただし買う必要はない。

  

 
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