『週刊金曜日』に、「裁判官が国を訴える異例の裁判 リベラル派弾圧への「倍返し」だ」という記事があった。
弁護士から中部弁護士連合会の推薦を受けて裁判官になった竹内浩史裁判官、従順でないことから様々な差別的待遇を受け続ける。
竹内裁判官は、地域手当の格差是正を訴えて国を訴えた。公務員には、給与に上乗せする地域手当というのがある。東京都に勤務すると20%、大阪市は16%・・・などと、地方に行くほど低くなる。竹内裁判官は、名古屋市の16%から津市の6%へと移り、司法修習同期の裁判官が判事一号の給与(月額117万5千円)を得ているのに、竹内裁判官は判事3号(月額96万5千円)の等級に留まっている。
わたしからみれば、3号でもなかなかの高額の給与だと思うが、しかし同じ資格を持ち、同じだけ法曹で働いてきたのに、なぜこのような格差がつくられたのかと疑問を持つのも当然だろう。
竹内裁判官は、格差の原因をこう分析している。まず竹内裁判官が青年法律家協会(青法協)会員であること。
ちょうどわたしが法学部生の頃、司法反動の嵐が吹き荒れ、青法協に入っている裁判官に猛烈な圧力がかけられた。裁判官で青法協会員であった者たちは、ほとんどが青法協を脱退させられた。竹内裁判官がいまだに青法協会員として残っていることに、わたしは驚いた。こういう裁判官がいたのだ!という感動である。司法反動の嵐の中で、良心的な裁判官は一掃されたと思っていた。
そして青法協会員としての裁判官は、竹内裁判官のみであるという。また竹内裁判官は「日本裁判官ネットワーク」にも属している。
おそらくもうそれだけで、最高裁の事務局は、竹内裁判官を「危険分子」としてみているのだろう。
さらに竹内裁判官はブログもやっている。そこでは裁判官の人事に対して果敢に批判している。
判決文を書かない裁判官が「出世」していく現実がそこには記されている。しかしそのような傾向は、教員世界にもある。最初は教員だが、途中から教育委員会に行き、長年そこで働いたのちに管理職として学校に戻る、という人事が明確にある。
日本の公務員世界はどこでも同じである。従順な者は「出世」する。従順な者は、せっせと付け届けもするし、有力者のコネをも使う。そういう姿を、わたしも見てきた。またこの人こそ管理職に相応しいと思っていた人が、もし付け届けもせず、コネも使わないと、「出世」しない。
そういう世界に、竹内裁判官は果敢に立ち向かう。
司法が、行政の隷属下にあることは、種々の裁判報道でも明らかである。政府の方針に逆らうような判決は、書かない。とりわけ、沖縄の辺野古問題に関しては、100%国が勝利する。そのような判決を書く裁判官を派遣しているからだろうが、多くの裁判官は従順であるから、逆らわない。
三権分立は、日本はすでに崩壊しているといってよいだろう。しかしそれでも、竹内裁判官は闘い続ける。