若い頃、アメリカ軍がベトナムに襲いかかり、無辜の民を虐殺していた事実は、いつも私の心に重くのしかかっていた。それを振り払うように、ベトナム戦争反対の運動に参加した。
今、同じような、いやもっとひどい状況がガザで繰り広げられている。
『地平』に掲載された岡真理の「ガザ 存在の耐えられない軽さ」を読み、まさにパレスチナの人びとを根こそぎ一掃するという、イスラエル国家の野望をみる。しかしそのイスラエル国家の野望、すなわちガザの人びとへのジェノサイドが、止まらない。日々、ガザで〇〇人が殺された、というニュースが流れる。
どうしたらイスラエルの蛮行を止めることができるのか。いやイスラエルの蛮行は、おそらく止まらない。建国前から、イスラエル国家を建国しようとした集団、シオニストは、当初からパレスチナに住む人びとをいずれは一掃して、ユダヤ人だけの国家をつくろうとしていたからだ。ジェノサイドは、イスラエル国家の既定方針であった。
何度も書くが、ユダヤ人迫害の当事者は、キリスト教徒である。パレスチナの地では、ユダヤ教徒とムスリムとは共存してきたのだ。キリスト教徒がユダヤ人を迫害し、その迫害の後始末をパレスチナに押しつけたのだ。それの流れに乗って、シオニストたちはパレスチナに住む人びとを虐殺し、追放し、難民化させる中でイスラエル国家をつくりだした。
『週刊金曜日』6月21日号の「真の狙いはパレスチナ難民の帰還権抹消だ」は、国連の動きをあとづけ、国連の動きを無視していたイスラエルと、それを支えるアメリカ合州国の醜い姿を示す。
そもそも、国連が勝手に、ユダヤ人国家の建設をパレスチナに設定したところからパレスチナ問題は発生した。1947年のことだ。シオニストは、そこにもともと住んでいたパレスチナ人を襲撃し、殺し、そして追放した。あまりにひどい!!
そこで、1948年12月、国連は「可能な時期での難民の帰還とそれを望まない場合の財産の補償」を認める国連総会決議194号が可決された。それに基づき、国連パレスチナ和解委員会(UNCCP)がつくられた。しかし、イスラエルは交渉を拒否、「和解」はイスラエルによって葬り去られた。UNCCPは機能不全となった。
そのため、1949年、「パレスチナ難民への人道援助・仕事の提供のための暫定機関」がつくられた(UNRWA)。パレスチナ難民救済事業機関である。UNRWAは、「人道援助に加え、帰還権が実施されるまで難民の生活を国連機関として支える」というものだ。
国連による、1947年の「パレスチナ分割決議」が、多くの難民を生みだしたのであるから、当然国連には責任がある。
ところで、難民に関しては、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)があるが、パレスチナ難民には、UNHCRは手を出さない。パレスチナ難民は、国籍を持つ国で迫害を受けて難民となるというふつうの難民とは異なり、国連が生みだした人びとであるからだ。
UNHCRの難民保護は、物理的保護(難民・国内避難民の安全の確保)、物質的保護(基本的ニーズを満たすための救援)、法的保護(権利保障と永久的解決の保障)の三つの働きをする。ところがUNRWAは、物質的保護、「医療・教育・食料や労働の提供」だけである。安全の確保は、任務外なのである。
イスラエルのジェノサイド政策により、ガザでは「医療・教育・食料や労働の提供」でさえできない状態だ。
イスラエルの国連無視、そしてジェノサイド、それができるのは、あのアメリカ帝国が支持しているからだ。
日本は、アメリカ帝国に隷属した国家である。であるがゆえに、日本政府も、日本政府と仲よくしている日本メディアも、イスラエルを批判しない。ロシアのウクライナ侵攻を強く批判するのに、イスラエルのガザでのジェノサイドにはほとんど関心を示さない。
先にあげた、岡真理の論文が、それを厳しく指摘する。「イスラエル政府の発表をそのまま検証もせず報道する姿勢ともあいまって、いまだに主流メディアの報道に信をおき、これらを唯一の情報源にしている市民が、イスラエルのありようを批判的に問題にし、政治的に批判をあげることを抑制する結果にもつながる。」と。
だからこそ、事実を知るためには、今や新聞やテレビではなく、『地平』『世界』『週刊金曜日』という雑誌に目を通さなければならないのである。
何とかしたい、ジェノサイドを止めなければ・・・・