7月13日、早稲田ビジネスネット横浜稲門会(WBN)の総会があり、その中で、三木佑二郎先輩のご講演を拝聴する機会がありました。三木さんは、早稲田大学応援歌「コンバットマーチ」の作曲者であり、WBNの発起人でもあります。僕は以前も中華料理屋でご一緒し、お話を伺う機会があったのですが、何しろ破天荒なエピソードの連続とテンポの良い話し方に、引き込まれっぱなしだった記憶があります。
今回は小豆島国際ホテル再建のお話でした。小豆島は1954年(昭和29年)の映画「二十四の瞳」の舞台となったことで、一時ブームとなるも、その後は衰退。三木さんが1998年(平成10年)に買取った小豆島国際ホテルも昭和40年代に造られた老朽化したホテルだったそうです。
7年連続で赤字という同ホテルの再建にあたり、三木さんが最初に取り組んだのが従業員の意識改革。①笑顔、②窓を拭く、③3回以内に受話器を取る、この三つを徹底と聞けば、当時どんな経営状況にあり、前途多難な船出であったか察しがつきます。
次に施設の改装。老朽化した施設ではお客が呼べないのは当然ですが、多額の負債を抱え、赤字が続くホテルには改装費がありません。しかし、三木さんはこの「金がない」ということを逆手に取り、驚くような発想の連続で露天風呂の新設、床や壁紙などの改装を成し遂げます。そればかりか、改装後のランニングコスト削減まで同時に達成してしまうという徹底振り。詳しい内容はここで書くことができませんが、「金がないからでいない」ではなく「金がないからどうする」という発想で貫かれているように思います。
第三にお客さんをどう呼ぶかという営業改革。以前、旅行会社の方から伺ったことがありますが、日本の地方にある旅館やホテルは、今日の旅行のニーズが個人主体であるにも関わらず、昭和40年代までの団体旅行者向けに造られたものがほとんどだそうです。これを個人旅行者向けに変えられれば簡単なのですが、多くの旅館やホテルはそんな資金的余裕がありません。こうしたことが観光産業の問題の一つとなっているそうなのですが、小豆島国際ホテルもその例に漏れない状況でした。
ここで三木さんの面白いところは「本当に団体旅行客がいないのか?」という視点で市場を調査し、さらにターゲットを絞ったら、彼らが同ホテルに来る仕組みやサービスを整えたという点です。多額の投資をすることなく、想像力で補っていく。この柔軟性には驚くばかりです。
しかし、実は、一見型破りに見える行動にも、三木さんはその背後にある会計的視点を非常に重視しておられます。これは以前お話を伺ったときもそうでした。今回の例で言えば、季節性が激しいホテル業にあって、損益分岐点分析を細分化することによって、価格設定を変えていく手法などがそれに当たると思います。
冒頭で三木さんのことを「破天荒」と形容させていただきました。「破天荒」というと、現在では「豪快で大胆」というような意味に誤用されがちです。確かにその意味でも三木さんは「破天荒」であるのですが、それだけではありません。三木さんの場合は、目的達成のため、「常山の蛇」の如く自在に変化する豊かな発想力と、それを裏付ける緻密な会計的視点が車の両輪となって常に補完しあっているのでした。このようであってこそ、本当の意味で「天荒を破る」経営が可能になるのではないかと思いました。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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