人事評価制度。会社組織の中で評価する側にとってもされる側にとっても高い関心事でありながら、実際の運用となると上手くなされていると言い切れる組織は意外と少ないのではないかと思われる制度。豊富な教育ブログラムの開発、トレーニングの経験をお持ちでいらっしゃる、今回の講師、交渉アナリスト1級会員の尾塚秀夫さんと事前にお打合せさせていただいた際、なかでも皆さんの興味を惹くのではないかと思われたのが、今回のテーマ「組織での人の評価は難しい?!―コンピテンシーを用いた評価と実践―」でした。
尾塚さんは長い営業経験の他、コンピテンシー評価制度の開発と導入にも携わってこられ、今回は理論というより実体験に基づいたより具体的なお話を伺うことができました。
「コンピテンシー評価制度」というのは、1990年代に流行した人事評価システムで、簡単に言えば、それまでの結果の査定を重視した目標管理制度に対して、組織構成員の「成長」を重視したシステムです。業績は大事ですが、あくまで過去の結果。過去に視点を置くのではなく、「技能・能力が高まれば、業績・成果も高めることができる」という将来に視点を置いた制度であるとも言えます。
コンピテンシーを日本語化することはなかなか難しいですが、ここでは「成果を生む望ましい行動特性」と定義します。このコンピテンシーを低次のものから高次のものへと細分化し、各個人がどのステージ(段階)にいるかによって、次のステージに進むために必要なことを各人の課題とします。コンピテンシーには全社共通のリーダーシップ・コンピテンシーと部門特性を反映したファンクショナル・コンピテンシーの二種類があり、それぞれにステージが設定されます。設定したステージは評価のみならず、採用にも適用することができます。
一見シンプルで納得のいくシステムのようですが、現実には様々な問題点や限界も表れています。例えば、制度のフレームワークが見えるようにするため膨大なガイドブックが必要になる、頻繁なアップデートが必要、評価者と被評価者との間で合意を形成するのに負荷がかかるなどです。逆にその欠点を克服しようとしてコンピテンシーが単なる資格取得になってしまっている所もあるようです。
いかなるシステムにも必ず短所や限界はあるものですが、尾塚さんの経験では組織特性によるところはあるにせよ、総じて従来の目標管理制度よりは望ましいものであったということでした。
燮会は、日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした