延長10回裏、二死走者なし。一塁側ベンチ前では三上投手が2イニング目に備えての肩慣らしを終え、ベンチに下がっていました。既に田中、須田、山崎、三上と勝ちパターンでの投手を使い切り、持久戦には持ち込みたくない横浜。恐らく最後の打席となるであろう主砲筒香選手の打棒に横浜ファン全ての期待が集まっていました。
ロッテの投手は昨季まで二年連続で30S以上を挙げ、抜群の安定感を誇った守護神西野投手。カウント2-1からの4球目、その時は来ました。真ん中に甘く入ったカーブを一閃。打った瞬間にそれと分かる高々と放物線を描いた打球は、一杯に詰め掛けた横浜ファンの夢を乗せ、ライトスタンド上段に飛び込んでいきました。5vs6、投手戦だった前日の試合とは対照的に点の取り合いとなったこの試合は、横浜の連勝で幕を閉じました。
薄曇でやや冷たい強風の舞う、6月4日の横浜スタジアム。昨年貯金11の首位で交流戦に突入しながら、3勝14敗と大失速した横浜。今年は逆に5月2日まで借金11。しかし、5月は全カード勝ち越しという驚異の快進撃を見せ、一時は5割に復帰、借金1で交流戦に突入しました。ここまでの成績は、埼玉西武に1勝2敗で負け越し。前日ロッテに1vs2で辛勝し、通算2勝2敗です。
横浜の先発は新人ながら5月に入り4戦4勝、快進撃の立役者となった今永投手。一方、ロッテの先発はかつて横浜に在籍していた台湾出身のチェン投手。チェン投手は怪我の高野投手に替わってこの日一軍登録され、今季2度目の登板です。現時点での実績と勢いから考えれば、今永投手優位の展開になるかと思われました。
しかし、この日の今永投手は立ち上がりからピンチを迎えます。まず先頭の加藤選手にセンター前ヒットを許すと、続く三木選手の犠打で一死二塁。
ここで今季好調の三番角中選手に、二球目をいとも簡単にレフト前に運ばれてしまいます。あっという間にロッテが先制。
一方のロッテ先発チェン投手ですが、こちらも制球が定まりません。先頭の梶谷選手にフルカウントから四球を与えます。しかし、二番桑原選手は併殺打に討ち取り、二死走者なし。横浜にとっては嫌なムードでしたが、続く宮崎選手がカウント2-0からライトへホームランを放ちます。ややこすった当たりではありましたが、センター方向への強い風にも助けられ、ギリギリでスタンドに飛び込みました。横浜がすかさず同点、この先の荒れる試合展開を予感させました。
2回は田村選手にヒットを許しながらも無失点で切り抜けた今永投手。しかし、3回に捕まります。先頭の加藤選手、二番の三木選手を討ち取り二死としたのですが、初回にタイムリーを打たれた角中選手、続くナバーロ選手に連続四球を与え、二死二塁・一塁。相手を警戒しすぎたのかもしれませんが、全く無駄な四球でした。
そしてここからロッテ打線が怒涛の四連打。まず、清田選手がレフトへのタイムリーヒット。
鈴木選手、ライトに抜けるタイムリーヒット。
細谷選手、センター前に落ちるタイムリーヒット。
田村選手も、センター前に落ちるタイムリーヒット。あっという間に5vs1、二死からの、余りに勿体ない失点でした。
わずか3イニングで70球、被安打7、5失点。今永投手は3回裏に代打を送られ降板。今季、横浜の先発投手が5回持たずに降板するのは、57試合目にして初めてのことです。
横浜の二番手は、こちらも新人の熊原投手。ヒット二本を許し、一死三塁・二塁のピンチを迎えますが、何とか無失点で切り抜け、味方の反撃を待ちます。
癖のあるリリースに横浜打線が戸惑ったのか、荒れた投球ながらも3回まで1安打1四球に抑えてきたチェン投手。しかし4回裏、先頭の桑原選手がフルカウントから四球で出塁します。
すると、初回に本塁打を放った宮崎選手がレフト方向へ今度は二塁打。無死三塁・二塁として、四番の筒香選手を迎えます。この回で少しでも点を返しておかないと、今季安定しているロッテの中継ぎ陣に継投で逃げられる可能性が高くなる、横浜にとっては非常に重要な場面でした。
こういうところで期待に応えてくれるのが千両役者というものでしょうか。カウント1-2から内角高めのボール球だったかと思います。思い切り振りぬいた打球は、打った瞬間にそれと分かる、ライトスタンド上段へと飛び込む豪快な3ランホームラン。これで瞬く間に1点差となります。
ロッテはチェン投手を諦め、南投手に交代。
しかし、その南投手が続くロペス選手にカウント1-1からレフトスタンドに弾丸ライナーで飛び込む痛烈な連続ホームランを浴びてしまいます。何と序盤にして4点あった点差はあっという間に5vs5の同点。さらに横浜は、倉本選手のヒット、エリアン選手の四球で攻め立てますが、後続が倒れ勝ち越しには至らず。
5回裏。ロッテは三番手として、早稲田大学時代エースとして活躍した大谷投手が登板。横浜は内野安打と死球で無死二塁・一塁のチャンスを作りますが、得点ならず。
6回表、横浜も勝ちパターンでの継投に入ります。まず三番手は田中投手が登板。
強気のピッチングが持ち味の田中投手ですが、三木選手にセンター前にポトリと落ちるアンラッキーなヒットを許すと、二死から連続四球を与え満塁のピンチを招きます。しかし、鈴木選手をファーストゴロに討ち取り、無失点。
7回表。横浜の四番手は今季非常に安定している須田投手。7番からの下位打線でしたが、三人できっちりと抑え、反撃へのリズムを作ります。
一方ロッテも、四番手に内投手が登板。こちらは須田投手をさらに上回る好投。1番からの打順を三人で切って取り、横浜に反撃の流れを作らせません。横浜は7回という終盤での好打順を活かすことができませんでした。
8回表。ロッテは二塁打と二つの四球で再び一死満塁のチャンスを作ります。しかし、ここも須田投手が踏ん張り無得点。ロッテも5回、6回、8回と、二度の満塁を含め再三得点圏に走者を進めながら、勝ち越すことができませんでした。
8回裏。ロッテ五番手は益田投手。
9回表。横浜は昨年新人の最多セーブ記録を塗り替えた、守護神山崎投手が登板。すっかりお馴染みとなった入場のテーマに、この日満員札止めの横浜スタジアムは、まるで優勝を争っているかのような大盛り上がり(この雰囲気を少しでも感じていただきたかったので、下に昨年の最多セーブ記録更新時の動画をリンクしてみました)。
山崎選手はこの日スタメンを外れていた、代打デスパイネ選手にヒットを許しますが、打者4人を2三振で締めます。
9回裏、ロッテも守護神西野投手が登板。8番からの下位打線を簡単に三人で抑えます。試合はついに延長戦へ。
10回表。横浜は六番手三上投手が登板。ロッテは二番からの好打順でしたが、ナバーロ選手の四球による出塁のみ。3日前の広島戦で推定飛距離150mとも160mとも言われる、とてつもなく大きなホームランを放った印象がまだ強烈に残っていたのか、この日の横浜投手陣はナバーロ選手を非常に警戒していたようでした。この日のナバーロ選手は6打席で何と4四球でした。
そして10回裏。試合の膠着状態を遂に破った筒香選手の一発。僕も実は、この後の都合から10回終了時点で帰る予定でいたのです。既に二死、試合の結末を目撃するためには、筒香選手の一振りに賭けるしかない状況でした。
結果的に、筒香選手の打棒が、横浜にカード勝ち越しと勝率5割復帰を、そして僕のブログには記事の結びをもたらしてくれました。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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