11月2日、
日本筆跡心理学協会の「第9回筆跡アドバイザーマスターズ研究会」に参加してきました。全国からマスター資格を持つ皆さんが集い、日ごろの活動から得られた知見や疑問点を共有できる、1年に1回の貴重な機会です。
【過去のマスターズ研究会】
2018年11月3日:第8回筆跡アドバイザーマスターズ研究会
2017年11月4日:第7回筆跡アドバイザーマスターズ研究会
2012年11月3日:第5回筆跡アドバイザーマスターズ研究会
今年も北は北海道から西は岡山と大勢のマスターが東京・品川に集まりました。一人一人、バッググラウンドが全く異なりますし、筆跡診断経験も新たにマスターとなられた方から、既に数千人を診断されている大ベテランの方まで実に様々です。また、筆跡診断をどのように活かされているかも実に多様ですので、毎年初めの自己紹介を伺うだけでも感心しきり。早くも「今日来てよかったな」と思わされました。
一つ印象に残ったお話を挙げれば、最近短期間のうちに500名もの筆跡診断をすることになったというマスターの方がいらっしゃいました。筆跡診断は一人診断するだけでもかなり時間をかけますので、500名ともなるとどれほど大変なことか、本当に頭が下がります。その方がおっしゃっていたのは、「診断をするというよりは、文字をきっかけとした対話を通じて、500名の方から人生を学ばせていただくことの連続だった」というものでした。筆跡診断は診断だけでも自分を知るきっかけとなりますが、そこに対話が加わることで何倍にも豊かになるのだと感じました。僕もそういう機会を増やしていきたいと思います。
さて、第一部はマスターによる事例発表。今年は何と僕が担当でしたので、「私のマスター活動について」と題し、日ごろ講演会等で初めて筆跡診断に触れる方にどのようなことをお伝えしているのか、実際に使用しているスライドを交えながらお話しさせていただきました。
Ⅰ.筆跡心理学(Graphology)とは
1.筆跡心理学とは
2.筆跡診断活用事例
3.台湾人の診断事例
4.筆跡診断の実際
Ⅱ.筆跡診断入門
5.自分の筆跡特徴を知ろう
6.筆跡から職業を当てよう
Ⅲ.筆跡心理の科学
7.筆跡心理学の実証研究について
8.筆跡で性格は変えられるか?
9.「手書き」の効用
お集まりの皆さんがプロの方ばかりですので、診断の詳細については釈迦に説法ではあるのですが、筆跡診断に興味を持っていただくため、どのような意図を以てお話しさせていただいているかを中心にお話ししました。また「筆跡心理の科学」の部分では、新たにヘブライ大学の論文から得られた知見を追加しました。筆跡診断は占いと心理学を両極とすれば、その中間に位置するものだと捉えています。つまり、そのどちらにも寄ることができる柔軟さを持っているのですが、一方でそれがために曖昧な印象、ともすれば胡散臭さを伴ってしまうというのも事実だと思います。したがって、マスターとしては占いとどこが違い、科学としての限界(境界)は現時点でどこにあるのかを弁えておく必要があるのではないかと思っています。その意味で、いつもよりは後半部を少し厚めにお話しさせていただきました。
第二部は、グループに分かれて日頃の知見や疑問を共有しました。一つ例を挙げれば、手書きをすること自体が少なくなった昨今、スマホ世代の筆跡傾向にある共通した特徴の見られる報告が複数ありました。これは今後の検証を待たなければなりませんが、「手書きをしない」ということが人にどのような影響を与えるのか、非常に興味深いところです。また、基本的な筆跡特徴からの解釈の展開は語彙と同じだようだと思いました。言葉も語源からある基本となる意味があり、そこから派生して様々な意味を持つようになります。だとすると、やはり言葉と同じく、その派生的解釈はある程度その国の文化を反映したものになるかもしれないということは頭に入れておく必要がありそうです。
全国各地からそれぞれの経験が持ち寄られ、共有できるというのは実に興味深く貴重な機会です。自分では思いもよらなかった視点も、お会いして直接話を伺ってこそ分かるものがありますし、実際に字を書いてみて意見交換できる点も良いですね。皆様ありがとうございました、今から来年が楽しみです!
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした