芸大美術館 「HANGA 東西交流の波」展

東京藝術大学大学美術館(台東区上野公園)
「HANGA 東西交流の波」
2004/11/13~2005/1/16

こんにちは。

会期末の版画展を見てきました。あちこちの美術展で、版画の作品はよく見かけますが、これだけまとまった形のを鑑賞したのは初めてです。

地下の展示室には、日本の伝統的な版画と、それと関係する西洋の作品が並んでいました。かつて教科書か何かで見たような葛飾北斎や歌川広重の作品も多くあって、それだけでも「おおっ!」という感じなのですが、さらに、ゴッホとその元になった浮世絵を同時に見ることが出来たりして、まさに目から鱗と言った状態でした。私自身が、この辺りの事情に疎いこともあったせいか、これだけ見ても、この展覧会へ行って良かったと思えるぐらいです。また、クレーやバーサ・ラムの作品も素晴らしかったです。

三階の展示室の版画は実に多彩でした。展示の仕方が、「どうぞお好きなものを探して下さい!」と言わんばかりの内容だったので、会場をぐるぐる回りながら、波長の合う素晴らしい作品はないかと、あちこちを見ながら鑑賞してきました。

まず、入り口すぐにある棟方志功が良かったです。木版画の「二菩釈迦十大弟子」という作品ですが、屏風からはみ出んばかりの力感豊かな釈迦の弟子(?)が素晴らしい!解説によると、当時の海外の美術展で極めて評判の高かった作品だったそうですが、それも十分に納得できます。堅牢でありながら自由な構成感の極致がありました。
駒井哲郎の「束の間の幻影」は、私の連れが一生懸命に魅入っていました。確かに、エッチングでは少し考えられないような立体感が感じられて、ふんわりと空間上に浮いているような幻影(?)が素敵でした。ぐっと惹き込まれる要素があることにも頷けます。
李禹煥の作品は二つありました。私が特に良いと思ったのは「関係項B」です。木版の削った跡がそのまま残ったような模様で、ふくらみと温かみの感じられる作品でした。もちろん動きも穏やかに主張してきました。やはりいつ見ても飽きないです。また、もう一つの「遺跡地にて」は、「関係項B」よりももっと大胆な構成で、ズバッと切り込んでくるような筆の跡が鮮烈な印象を残しました。
李の作品と並んでいた、アラン・グリーンの「中心から縁へ-黒-緑」もとても気に入りました。暴論を吐かせて頂きますが、何でしょうか、ロバート・ライマンと共通する要素があった気もします。タイトルにあるように、中心から縁へ見ていっても良いのですが、逆に眺めても、また別の印象を与えてくれます。パッと見た目はシンプルですが、色の奥底に何かが眠っているような、そんな感じもしました。
他にもいくつか心に残った作品がありましたが、どんどん長くなりそうなのでこの辺にしておきます…。

ところで、今回初めて芸大美術館へ行きましたが、ちょっと使いにくそうな美術館ですね…。HANGA展の間に、別の展覧会(これはこれで面白かったですが。)を挟む構成も理解できませんが、地下の次の展示室が三階にあるとは…。エレベーターの前で、「次はこちらです。」と係の方がいちいち説明されていましたし、動線というか、見通しのあまり良くない美術館だという印象を受けました。また出口も二階にあって、わざわざミュージアムショップ(ショップは外からすぐに入れるのが一番です!)の前を通らされるのもちょっと…。細かくてどうもすみません…。

ただ、展示の方はなかなかでした。一口に版画と言っても、あんなに多彩な表現があるとは思いもつきませんでした。好きな作品もたくさんありましたし、行って正解な展覧会だったと思います。
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