東京都写真美術館 1/15 その3 「クレア・ランガン フィルム・トリロジー」

東京都写真美術館(目黒区三田)
「クレア・ランガン フィルム・トリロジー」
2004/12/18~2005/1/30

こんにちは。

15日に観た写真美術館の「その3」です。クレア・ランガンのビデオアートを観ました。

「フィルム・トリロジー」(三部作。各十分ほど。)
 「Forty below」(1999)-水・青 
 「Too dark for night」(2001)-砂・黄金
 「Glass hour」(2002)-火・赤

*「水」や「赤」というのは、それぞれの作品のテーマです。

これだけの情報ですと、「水や砂がテーマのビデオアート??」などと言われてしまいそうですが、実際に観ると、テーマから随分と離れた印象を受けると思います。もしかしたら、あまりテーマを頭に入れないで鑑賞した方が、作品の自由な世界に入り込めるかもしれません。美しい映像と幻想的な音楽に浸りながら、ぼーっと観るのも良いですし、色々と自分なりの解釈を施してみるのも良いと思います。

私が一番感銘したのは、二番目の「Too dark for night」です。作品は、一人の女性が、砂漠の中をこちらへ向かって歩いてくるところから始まります。彼女は、その後、現実か非現実かわからないのような曖昧な世界の中を遍歴しながら、何かを求めるようにひたすら歩き続けます。やがて、どこかの人気のない寂しい家へたどり着くのですが、そこは砂に埋もれた廃墟となっています。最後には、一番初めに歩いていた砂漠を、こちらに背を向けて、まるで帰る場所があるかのようにして歩いて行きます…。

女性が、何かを求めるかのようにして歩く様子は、三部作全てに共通して登場します。また、その背景には、大自然の驚異を目の当たりにするような、砂漠や灼熱の火山などが現れます。パンフレットには、「自然の無限な力と人間のはかない存在」とも説明されていましたが、むしろ私には、自然は彼女の思う何かのシンボルとして描かれているのであって、決してそれを「自然=無限、人間=はかない存在」などいう図式に当てはめてはならないような気がしました。何かを探しているのかもしれないし、そうでないかもしれない…。観る人によって、その「何か」も変わってきそうですが、私にはそう思えました。

いわゆる癒し系のビデオアートではありません。三番目の作品からは、切羽詰まったような、険しくて激しい感情も感じられました。ところで、一昔前に、「自分探しの旅」などという言葉が流行りました。少々オーバーな言い方ではありますが、自己のルーツや原点を探すこととは、人が人として生きている証でもあると思います。ランガンの作品からは、そんな「旅」を感じました。今を少し立ち止まってみたい方、そんな方にはおすすめの展覧会だと思います。(もちろん、私も楽しめました。)

*これで15日に行った写真美術館の感想は終わりです。初めて行った美術館でしたが、こじんまりとしてなかなか雰囲気の良い所でした。(ガーデンプレイスも何年ぶりでしょうか…。)今まではあまり写真に興味がなかったものでノーチェックでしたが、今後は通いそうです。
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