都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
ユーロスペース 「オランダの光」 1/23
2005-01-27 / 映画

「オランダの光」
(2003年/オランダ/ピーター-リム・デ・クローン監督)
1/22~1/28
*レイトショウ(21:00から)は1/29~2/11
こんにちは。
数年ぶりに映画館へ…。lysanderさんのブログで紹介されていた渋谷のユーロスペースです。ビルの中の小さな小さな映画館でした。観たのはもちろん「オランダの光」。前もってTakさんのレビューも拝見させていただいて、じっくりと鑑賞してきました。
17世紀のオランダ絵画-フェルメールやレンブラント-の源とは、オランダだけが独自に持ちうる光の陰影、つまり「オランダの光」にある。しかし、現代にはもはやその「光」は存在しない。なぜなら、20世紀前半に行われたエイセル湖の干拓が、光の反射を抑制したからだ…。そんな感じで映画は始まります。
光はどこでも同じように降り注いでいるはず…。でも、もしかしたら「オランダの光」のような、それぞれの地域独自の光があるかもしれない…。映画では、南フランスの、全てを暖かい色で染めるような明るい光や、アメリカのアリゾナ州の砂漠地帯を煌煌と照らす、無機質で直線的な光が紹介されます。確かにその映像を見ると、それぞれの場所には、それぞれに異なった光があるように感じます。私も、日本には、万物がくっきりと、そして繊細に輝いてくる光があるような気もしますが、どうでしょうか。(これぞまさに「日本の光」?!)
映画は、現代アーティストや美術史家、それに気象学者などの主張を軸に進みます。「オランダの光は確かにある。」と訴えるアーティスト、「いや、湖の干拓が光を変化させることなどない。」とする気象学者。それぞれのコメントは、なかなか含蓄があって、それなりの説得力を持っていました。また、光の定点観測として、オランダのとある場所に置いたカメラは、一年、四季折々のオランダの光景、そして光を映し出します。さらに、水槽を使った簡単な実験では、光の反射の強弱(つまり湖の存在の有無。)が、空気とその光にどんな影響を及ぼすかを調べていきます。(ちなみに、この実験そのものはかなり陳腐です…。)そして、もちろん、フェルメールやレンブラントの作品も登場します。
光の存在を科学的に論証するドキュメンタリーではありません。光そのものが異なっているのか、それとも地形や天候が光を変化させるのか…。論証の前提となるような明確な条件付けもありません。ほとんどの話が印象論で終始しています。ですから、当然、確実な結論は出ませんでした。「光とは?」という疑問のボールを、観る者それぞれがどうキャッチするのか、そこが問われそうです。
広大な地平線と、柔らかな雲を浮かべる大きな空。「オランダの景色は単調だ。」などという意見も登場していましたが、私にはとても魅力的にうつります。映画そのものの完成度は、展開が少々散漫なのと、無理に論証をしようとする点が拙く、お世辞でも高いとは言えません。(と、数年ぶりに映画を観たくせに、偉そうに語ってます…。)ですが、光を求めようとする、そのロマン溢れる切り口や、オランダの美しい映像には、ぐっと惹き付けられました。そして何よりも、この映画を観ると、実際にオランダへ行きたくなります…。現地の光のシャワーを浴びた者だけが、より一層オランダ絵画の美しい光を感じとれるかもしれない…。そんな期待を胸に抱きながら、いつかはオランダの地に立ってみたいものです。
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