森山大道さんの未発表作品?! 雑誌「Pen」の特集より

今まで立ち読みすらしたことがないどころか、その存在も初めて知った雑誌「Pen」(阪急コミュニケーションズ発行)ですが、先日、電車内に掲げられていた「Pen」の吊り広告を見て、少し手に取ってみることにしました。もちろんその理由は、黒地に白抜きの文字にて大きく書いてあった、「社会をクリエイトする、写真家の仕事。」が気になったからです。

この「写真家」特集では、今、世界で活躍する写真家が、約15名ほど紹介されています。もちろん、その中の一人に、我ら(?)の森山大道さんもいらっしゃるわけですが、他にも、丁度、先日から竹橋の近代美術館にて個展を開催しているアウグスト・サンダーや、昨年オペラシティにて大規模な個展を見せたヴォルフガング・ティルマンス(その時の拙い感想もありますが。)、それにいつも興味深い作品を見せてくれる米田知子などが紹介されていて、さほど「読ませる」記事ではないものの、写真も贅沢にいくつか使って、それなりに見応えのある紙面作りとなっています。

ただ、おそらくそれだけの内容であったら、いくらこの雑誌が500円というリーズナブルな価格であるにしろ、手に取ったまま棚へと戻す、要は「立ち読みにして終了。」(書店の方ゴメンナサイ…。)ということになっていたかもしれません。しかしそこで、私にこの雑誌をレジへと持っていくことにさせたのが、この「森山大道さんの未発表作品」です。

「森山大道、渇いたエロティズム」と題された5枚のモノクロ写真。もちろん、雑誌のページに印刷されたものなので、質感十分というわけにはいきませんが、それでも、光と影の交錯する白昼夢のような場所で、不気味に美しく照りだす女性の艶やかな姿が、幾分メタリックな気配で写されています。長くさらけ出した素足にだけを捉えた、まるで石像を写したかのような重厚感を与える作品や、鈍く照るアスファルトの上で、壊れたヒールがポツンと一足転がっている様子を写したものまで、どこか刹那的でもあり、非現実のような幻想性を帯びた写真が並びます。また、光の粒子を巻いたのか、はたまた被写体一つ一つの細胞が光源となっているのか、各々の表面が細かい粒状になってザラッと光り出すような、森山さんのモノクロ写真に独特の味わいも絶品です。そして、三枚目にある見開きサイズにて掲載された、半裸の女性が写された作品は、首筋から背中にかけてのラインが実に美しく、艶と肉を両方で捉えながらも、やはりどこか硬質感も漂わせるという、大変に奥深い写真に仕上がっています。さすがです。

そして最後に、その森山さんを評して述べた、かの荒木経惟さんの一言、「みんな、森山さんの写真の白と黒のコントラストのことばかりを語るけれど、本当は、白と黒の間にある『灰色』にこそ、森山さんの写真の凄さがあるんだ。」も、さり気ない表現ながら本質をついています。納得です。

というわけで、この5枚のために、柄にもあわない雑誌を購入することになりました。森山ファンの方、いらっしゃいましたら是非一度ご覧になってみては如何でしょうか。
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