「BankART Life 24時間のホスピタリティー」 BankART 1929

BankART 1929(横浜市中区本町)
「BankART Life 24時間のホスピタリティー」
10/28~12/18

横浜トリエンナーレ2005の連動企画として、横浜市中心部の歴史的な建物を利用して開催されている展覧会です。会場は二カ所。一つ目は、1929年建造で、馬車道駅の近くにある旧横浜銀行本店別館の「BankART 1929」。もう一つは、そこから五分ほど海の方へ歩いた所にある「旧日本郵船倉庫」の「BankART Studio NYK」です。

展覧会のテーマは「ホスピタリティー」。会場時間は何と24時間で、トリエンナーレ関係者及びボランティアは、宿泊も可能とのことです。ちなみに、私のような一般の客は、11時半から19時半(金曜は22時)までの入場となりますが、ともかく会場には、集う、寝る、憩う、と言ったような「くつろぎの場」が現代アートにて展開されています。なかなか面白い企画でした。

「BankART1929」の会場で、最も心地よくくつろげたのは、3階の開発好明の作品です。真白いフカフカのカーペットが敷かれた円形のスペース。もちろん私も靴を脱いであがり、少し寝そべってみました。中央部にはTVがあり、そこでは何らかのインスタレーションの模様が放映されています。また、スペースの周縁部には白い小さな棚が配されていましたが、そこにはカバーを裏返して、表の全てが真白になったマンガや文庫本などがズラリと並んでいます。まさかアートを見に来てマンガを寝転びながら読もうとは…。嬉しい仕掛けでした。

3階のスペースでは、他にも、みかんぐみや岡崎乾二郎らが、巧みな居住空間を作り上げています。特に岡崎の作品は、もはや純和風のリビングとしか言い様のない空間で、これでお茶や和菓子などが出てくればと、思わず余計なことまで考えてしまうほどです。また、2階の「Electronical Fantasista」のコーナーにあった、動くテーブルは、くだらなさ満点で笑えます。さらに、地下一階の「映画の部屋」は、ズバリそのまま映画が延々と流されている部屋なのですが、その暗がりもなかなか心地良い空間に仕上がっています。

海に面した倉庫をそのまま使った、もう一つの会場「BankART Studio NYK」でも、同じテーマに沿った作品が展示されています。こちらは「BankART1929」に比べると、くつろぎの空間というよりも、面白みや非日常の空間を創造しているような作品が目立ちました。

ここでは、何と言っても3階の牛島達治のインスタレーションが圧巻です。丁度、私がこの場に着いた時は、既に日没後だったのですが、これからお出向きの方、暗くなってからのご観覧を是非おすすめします。かなり広くまた古い倉庫の三階。照明は最低限に押さえられて、殆ど暗闇の中に立たされます。老朽化したコンクリートが剥き出しなった壁や柱。この3階だけは、手が殆ど加えられていません。何かが化けて出そうなくらい、気味の悪い、カビ臭さすら漂う場所。そこに、牛島の作品が忽然と現れるのです。

特に存在感があるのは、一番奥の空間にて構成された作品です。床一面に張り巡らされた一本のロープ。それは、幾つかの滑車を経由しながら、床のあちこちへと移動します。そして空間の中央には、そのロープにて吊るされた二つのバケツです。ロープの動きに合わせて上下に小刻みに動きます。ギコギコと不気味な音をたてながら、ひたすら床を這いつくばるロープとバケツの連動。シーンと静まり返った暗闇とコンクリートの匂い。なかなか尋常ならぬ空間が体験出来ます。また、もう一点、手前の部屋にて展示されていた、器械仕掛けにて、延々と床に模様を書き続ける作品も、面白く見ることができました。

ところで、「くつろぎ」と言えば、私はやはりバスルームを思い出してしまうのですが、西田 司+志伯健太郎の作品には、バスルームとベットルームが一体となった空間が作り出されていました。またその部屋には、天井からゆっくりと仄かな光も心地よく差し込みます。まるでゴミの家のような昭和40年会の作品や、いくつか会場に転がる、寝袋を巨大化させたような作品などと合わせて、実にインパクトのある作品です。

古い建物や、もしくは美術館ではない場にアートを持ち込むこと。トリエンナーレや以前見たCET2005も同じかもしれませんが、非日常を何気ない角度で面白く見せてくれます。廃墟の再利用。アート自体の面白さもさることながら、その場の雰囲気をも楽しむことが出来ます。トリエンナーレの混雑に疲れた際にでも、是非おすすめしたい展覧会です。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )