「現代絵画の展望」 鉄道歴史展示室/Breakステーションギャラリー

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室港区東新橋1-5-3
JR上野駅Breakステーションギャラリー台東区上野7 上野駅正面玄関口ガレリア2階)
「現代絵画の展望 - それぞれの地平線 - 」
2007/12/8-2008/2/11



新橋と上野と二会場を用いて、「現代絵画界を牽引してきた中堅実力作家より若手作家」(ちらしより引用。)の作品が紹介されています。現在、長期休館中の東京ステーションギャラリー(東日本鉄道文化財団)プロデュースの展覧会です。

出品作家は以下の通りです。

堀浩哉、辰野登恵子、小林孝亘、山口啓介、丸山直文、山本麻友香、大岩オスカール、曽谷朝絵(以上、新橋、上野両会場出品。)
池田龍雄、篠原有司男、加納光於、李禹煥(新橋会場のみ出品。)



メイン、第一会場の鉄道歴史展示室(新橋)では、入口すぐにある篠原有司男の二点の大作、「バクハツならまかしとけ」(2007年)と「バミューダ島の乗合バスの天井にトカゲが」(2003年)が圧倒的です。それこそハチャメチャとも言える、この色遣いと構図感は私の好みではありませんが、例えば後者では、その混沌としたタッチの中に渦巻くギラギラとした欲望が、眩しいまでに直裁的に表現されていました。また歪んだ、閉塞感も漂う空間(=車内)には、怪物のような人間たちが押し込められるかのようにして群がっています。南国の熱気の伝わってくる作品です。

篠原とはまるで異なった作風を見せる李は、新作の「Dialogue」(2007年)と近作の「照応」が展示されています。ともにかのスクロールが仄かなグラデーションを描きながら余白へ静かに沈み込む作品ですが、そこより立ち上がる重みは他の絵画に決して引けを取りません。李はこのようなグループ展で見てもあまり印象に残らないことが多いのですが、今回は色鮮やかな絵画の並ぶ中での対照的な存在感を見ることが出来ました。



第二会場、Breakステーションギャラリー(上野)では、小林孝亘の「Pillow」(2007年)がとりわけ魅力的です。純白のシーツに包まれたベットと枕が正面を向く姿が描かれていますが、手を差し伸べればまさにフワリとした感覚が伝わってくるかのような豊かな質感を見せています。また、枕とシーツという具象的なものが示されているにも関わらず、その構図にもよるのか、どこか抽象を思わせるような怜悧な美感を漂わせているのも印象に残りました。思わずぎゅっと握りしめたくなる枕です。



最後に挙げたいのは、鉄道関連の施設での企画にもピッタリな、駅舎や汽車をモチーフとした作品です。木立を汽車が軽やかに進む丸山直文の「汽車1、2」(2000年。上野会場に展示。)では、アクリルを用いているにも関わらず、「現代風たらしこみ」とも言えるような瑞々しい色彩感が見事に表現されています。そしてもう一点、大岩オスカールのズバリ「新橋」(2007年。新橋会場に展示。)が何やら意味深です。ここにあるのはもちろん架空の新橋駅ですが、その周囲は、建設重機によって解体されつつあるかのような、一種の廃墟の風景が広がっています。また、薄暗いグレーを基調として描かれた2両編成の電車や人気のないホームも非常に寂し気です。高層ビルの林立する現在の新橋とはまるで異次元の空間が描かれています。これはその未来なのでしょうか。

オープンスペースの上野駅Breakはもちろんのこと、第一会場の新橋の展示室も入場は無料です。2月11日までの開催です。
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