都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「SPACE FOR YOUR FUTURE」 東京都現代美術館
東京都現代美術館(江東区三好4-1-1)
「Space for your future -アートとデザインの遺伝子を組み替える」
2007/10/27-2008/1/20
この展示を楽しまれた方には大変申し訳ありません。いくら個々の作品に楽しめるものがあるとは言え、私としてはこれほど散漫な印象を受けた展覧会も久しぶりでした。MOTで開催中の「SPACE FOR YOUR FUTURE」展です。
そもそもアート、デザイン、そして建築の垣根などを越えた部分に何らかの意味を見出そうとする展覧会です。常々、凝り固まった頭で、アート一辺倒の方角からモノを見ている私にはそこからして難しかったのかもしれません。遺伝子を「組み替える」というどころか、だだ作品を適当にシャッフルして「ばらまいた」だけではなかったでしょうか。まるで陽の当たらない場所にて狭苦しく展示された2分の1の「フラワーハウス」や、「見る人の視点や立ち位置によって~中略~光の色や強さ等の見え方が変化」するとあるのに、一方向からしか見られないエリアソンの「四連のサンクッカー・ランプ」などは、展示方法の在り方自体に疑念を感じてしまいます。また動線も、少なくとも私が過去MOTで見た展示の中では最悪です。もちろん回遊性があれば良いというわけではありませんが、それをなくしてまで示されるものがあったとは到底思えませんでした。もちろん石上純也の「四角いふうせん」は、かのアトリウムでなくては出来ない、空間を巧く用いた展示でしたが、それ以外は総じて、それこそMOTという建物の重み自体に押しつぶされてしまうような、言わば行き止まりの多い順路同様に、奇妙な手詰まり感すら漂う展示であったとさえ感じます。これで未来を見る力は私にはありません。
ということで、従来的な展示形態ということでも安心して見られたのは、その他とまるで隔離しているかのようなブースで紹介されていた、蜷川実花の「my room」です。そもそもその内向きなタイトルからしてこの展覧会に背を向けているような印象さえ受けますが、そこに展開されている金魚と造花の写真によるインスタレーションは、まさに彼女でなくては表現し得ない色彩感を見事に伝えるものであったと思います。実際のところ、これまで蜷川の作品にはかなり苦手な印象がありましたが、金魚をここまで華美でかつ快活に、そして可愛らしく撮れてしまうとは脱帽するしかありません。ネオンサインのように瞬く金魚が顔を寄せ合い、また大きな口をぼんやり開けている様子を見ると、鮮やかな色や動きのあるカメラワーク云々を通り越した対象への愛情や友情のようなものも感じてしまいます。見事です。
会期末が近づいているせいもあるのか、チケットブースに行列が出来るほど賑わっていました。この拙い感想などあてになりません。評判は上々のようです。
ちなみに常設展の「MOTコレクション:ポップ道」は充実していました。そちらならおすすめできます。
今月20日までの開催です。
「Space for your future -アートとデザインの遺伝子を組み替える」
2007/10/27-2008/1/20
この展示を楽しまれた方には大変申し訳ありません。いくら個々の作品に楽しめるものがあるとは言え、私としてはこれほど散漫な印象を受けた展覧会も久しぶりでした。MOTで開催中の「SPACE FOR YOUR FUTURE」展です。
そもそもアート、デザイン、そして建築の垣根などを越えた部分に何らかの意味を見出そうとする展覧会です。常々、凝り固まった頭で、アート一辺倒の方角からモノを見ている私にはそこからして難しかったのかもしれません。遺伝子を「組み替える」というどころか、だだ作品を適当にシャッフルして「ばらまいた」だけではなかったでしょうか。まるで陽の当たらない場所にて狭苦しく展示された2分の1の「フラワーハウス」や、「見る人の視点や立ち位置によって~中略~光の色や強さ等の見え方が変化」するとあるのに、一方向からしか見られないエリアソンの「四連のサンクッカー・ランプ」などは、展示方法の在り方自体に疑念を感じてしまいます。また動線も、少なくとも私が過去MOTで見た展示の中では最悪です。もちろん回遊性があれば良いというわけではありませんが、それをなくしてまで示されるものがあったとは到底思えませんでした。もちろん石上純也の「四角いふうせん」は、かのアトリウムでなくては出来ない、空間を巧く用いた展示でしたが、それ以外は総じて、それこそMOTという建物の重み自体に押しつぶされてしまうような、言わば行き止まりの多い順路同様に、奇妙な手詰まり感すら漂う展示であったとさえ感じます。これで未来を見る力は私にはありません。
ということで、従来的な展示形態ということでも安心して見られたのは、その他とまるで隔離しているかのようなブースで紹介されていた、蜷川実花の「my room」です。そもそもその内向きなタイトルからしてこの展覧会に背を向けているような印象さえ受けますが、そこに展開されている金魚と造花の写真によるインスタレーションは、まさに彼女でなくては表現し得ない色彩感を見事に伝えるものであったと思います。実際のところ、これまで蜷川の作品にはかなり苦手な印象がありましたが、金魚をここまで華美でかつ快活に、そして可愛らしく撮れてしまうとは脱帽するしかありません。ネオンサインのように瞬く金魚が顔を寄せ合い、また大きな口をぼんやり開けている様子を見ると、鮮やかな色や動きのあるカメラワーク云々を通り越した対象への愛情や友情のようなものも感じてしまいます。見事です。
会期末が近づいているせいもあるのか、チケットブースに行列が出来るほど賑わっていました。この拙い感想などあてになりません。評判は上々のようです。
ちなみに常設展の「MOTコレクション:ポップ道」は充実していました。そちらならおすすめできます。
今月20日までの開催です。
コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )