「吉祥のかたち」 泉屋博古館分館

泉屋博古館分館港区六本木1-5-1
「新春展 吉祥のかたち」
1/5-2/17



会期初日に行ってきました。同館の所蔵品より、吉祥主題に因んだ文物が展示されています。泉屋博古館分館の新春展です。



定評のある住友コレクションを持ってすれば当然かもしれません。スペースの都合からか、出品数こそ多くありませんが、例えば工芸品一つをとっても、古くは前漢より唐時代の鏡から清の印材、または日本の江戸時代の金具から香山の陶器、五代清水六兵衛の置物など、ともかく一言では言い表せないほどの多様な品々が揃っています。中でも特に目立っているのは印章の数々です。住友の印の記された「鶏血石印材 住友友純」(清時代)からして珍しい品ではありますが、石にそのまま梅の木が彫られている「名士風流入研香」(清時代)は非常に美しい作品でした。小さな岩山に梅の木が添えられているとも言えるような、山水画ならぬ光景が示されています。



とは言え、やはり見入るのはいくつかの絵画作品です。蝶がまるで鳥のように花を猛々しくも啄む、王楚珍の「草花群蝶図」(清時代。1896)の色鮮やかな表現には目を奪われますが、吉祥ではお馴染みの寿浪人をよくぞここまで不気味な様で描いたと感心さえする狩野芳崖の「寿老人」(明治時代。1877-1886)の光景には度肝を抜かれました。ちょうどこの時期の日本画には、元来、日本絵画の持っていた要素と、怒涛のように流入してきた西洋のそれが奇妙に交じり合ったとも言える、半ばエキゾチックで表現主義的な烈しい絵も散見されますが、本作にもそういった要素が見出せるのではないでしょうか。鶴も鹿も、まるでロボットのような滑稽な出で立ちをして描かれてもいます。夢にでも化けで出てきそうな寿老人でした。



まさかこの吉祥展で抱一が紹介されているとは思いもよりません。それが軸三点の「蓬莱山・雪松・竹梅図」(江戸時代)です。中心は海面上に昇る陽を蓬莱山の上で望む鶴が、またその左右には瑞々しい白梅と粉雪の輝かしく舞う雪松図が構えています。そしてこの三点で特に印象深いのは、それぞれに見て取れるたらしこみの効果的な描写です。十二ヶ月花鳥図を思わせる竹梅図では、幹のたらしこみが緑も交じえて瑞々しく配され、また雪松図でも散らした粉雪と対比的なまでのそれが透明感のある幹や枝を象っています。また蓬莱島といえば亀も良く出てくる主題かと思いますが、これは一見しただけでは分かりにくいほど控えめに描かれていました。海上から陸地を偶然に見つけて、とぼとぼと登って来たような海亀です。

2月17日まで開催されています。
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